「ほしのこえ」短編アニメ・DVD絵コンテ付き。新海誠監督作品

徳間書店

今回からアニメの感想も追加です。

感想。
良い。メチャメチャ良い。知らずに大量の涙が溢れている(滂沱と言うのかな?)。筆舌に尽くし難いくらい良い。
これじゃあ、内容は伝わらないので、具体的にどこが良いかというと、会話のスピードがまず良い。速射砲的な会話の速さで、ほとんどは亜空間ケータイのメールを読み上げる言葉なんだけど、自然なリズムで極限までスリム化された言葉の一つ一つが胸を打つんだよね。
簡単な内容は、近未来、ガンダムスーツを着用して、地球から数光年離れた辺境地帯でエイリアン撃退に当たる少女と、中学の時の友達で大学受験を目指す男の子のケータイのやりとり。
会話の途中に印象的な思い出が挿入されるんだけど、その光と影の具合がまた、秀逸。
で、女の子はだんだん遠くのエリアでの戦闘に召還されていって、ケータイの電波も数年経たないと届かなくなってくるんだけど、その辺のやるせなさもまた抜群。
全てが圧倒的に斬新で新鮮な感覚。
総合すると、「僕はここにいるよ。(そしていつまでも君をまっているよ)」という言葉に集約されるんだろうね。
次の「雲のむこう約束の場所」も是非買いたいんだけど、今月は「SAW」と「スティーム・ボーイ」のDVDを買ってしまったので、そのうち。

ついでながら、この二つについても言及すると、最初のは、おしっこちびりそうに怖かった。それに、最後の最後まで予測不可能な展開が続き、最後のどんでん返しも度肝をぬかれた。まあ、でも、この展開は江戸川乱歩の時代から王道と言えば王道なんだけど(江戸川乱歩の中では、硫酸をかぶった人間がいれば、99%そいつが犯人なんだけど。ああ、ネタを言いたい――)

それから、後者。これは、アニメのレベルはかなり高かった。映像も綺麗だし、細かい動きもきっちり描き込まれているし、私的には、この色合いは、ジブリよりも好きかも。
では、なぜ、今一ヒットしなかったかというと、ストーリーがちょっと中途半端。なんと言ったら良いかなあ、『天空の城ラピュタ』の中の悪役が、悪役に徹していないで、変に悩んでしまった感じ、かな?
具体的に言うと、主人公の父親がフランケンシュタインみたいに、半サイボーグになっているんだけど、(ここまでは最高に良い)そこから、悪の化身にならないで、人間的な深みを出す方向に向かってしまっている。だから、善と悪の戦いになりきれていない。従って、見終わってカタルシスがないんだよね。
やっぱり、悪役はとことん悪役で、主人公の息子はそんな父親を乗り越えて雄々しく立ち上がってゆかないとね。エンタの場合。まあ、でも、「アキラ」で大ヒットした監督なので、「アキラ」に戻れば、また大ヒットするでしょう。
でも、映像は良いなあ。押井守と同じで、色彩の底辺に闇があるっていうか、冥(くら)い場面の残像がじわじわじわじわと細胞に浸透してきて、一週間に一回は見たくなる映像だね。