聖母、どちらかが彼女を殺した、罪とか罰とか

『聖母』仙川環、
代理母の話です。代理母程度の話で、はたして医療ミステリーになるのか、と思って読んだんですが、ドンデン返しあり、きっちしミステリーありで、面白かったです。
内容。主人公の沢井美沙子は子供がない。それを不憫に思った母が、代理母を申し出る。もう50すぎなんだけど、主人公夫婦の受精卵を着床させてもらう。ここまでにも色んな病院を探したり、紆余曲折があるんだけど、それはカットして。で、数ヶ月後、軽い脳こうそくになり、転んだのが原因んで流産してしまう。しかし母は、娘が不憫で不憫で、主人公の兄嫁に無言で強要し、代理母を引受させる。兄嫁は、家族全員の無言の圧力で引き受けるが、医者に、無理はダメですと説得され、理由をつけて断ってもらう。子宮筋腫がみつかったとか言って。
で、主人公夫婦は、次はインドでの代理母を探すのだけど、あまりの貧困さをみて、嫌気がさしてしまう。(この辺ちょっと強引)。でもって、そこで視点がかわって、ここに、主人公夫婦の相談に乗ってきた女医がいる。彼女は、院長に別れ話を持ち出されたので、人生をあきらめかけている。そんな時、主人公夫婦の話を聞き、自分で代理母になると決心する。
しかし、着床から数ヶ月後、インドでくらしていて、交通事故で死んでしまう。で、赤ちゃんは双生児だったが、一人は無事に生まれたと聞かされる。で、さっそく籍に入れる。しかし、院長が、その子を見て、自分に似ているから、自分の子だと主張する。なぜなら、女医は自分との受精卵も作っていたので、それも一緒に着床させて、そっちが生き残ったのだと。で、DNA鑑定を、ということになる。話はここで終っている。
感想。重いですねえ。特に兄嫁が、家族の無言の圧力で引き受けざるを得なくなるところなんか、重いですねえ。でも、出産て、死と隣り合わせなんだよね。脳梗塞になる危険性も高いし。私は一千万でも代理母はいやだな。(月の生活費を40万として、10ヶ月、それと成功報酬600万という計算ですが)。それに、一番の問題は奇形児。奇形児やダウン症などの子供が生まれたら、どっちも引き取らなくなるだろうし。そうなったら、成功報酬はなくなるだろうし。やっぱり厭だな。でも、インドなんかなら、引き受ける人は多いかも。これからの少子化対策を考えたら、インドでの代理母は結構真剣に考えてもいいかも。


どちらかが彼女を殺した東野圭吾
名作復活シリーズとして取り上げてみました。

1、康正が妹の電話に不審を覚えて練馬のアパートに行くと、妹が死んでいた。胸と背中に電気の電極。先が削られていて絆創膏で貼り付けてあった。机の上にナイフがあって、導線を削ったカスがナイフの右側についていた。右手で削った。犯人は右利き。妹は左利き。睡眠薬の袋が二つ空いていた。ワインのビンは空で、ゴミ箱の中。グラスが二つあったが、一つは洗って伏せてあった。自殺にみせかけて、自分が復讐するために、康正はドアチェーンを切った。密室だったと主張するため。郵便受けには鍵があったので、ポケットに入れた。これも自殺にみせかけるため。冷蔵庫には二人の名前のメモがあった。佳世子は知っていた。高校時代からの親友だった。床から髪の毛を採取した。

2、警察に通報した。土曜から電話が繋がらなかったから金曜の夜に死んだらしい。最後の電話は、「裏切られたから死にたい」だった。冷蔵庫の電話番号のどちらかが犯人に違いない。練馬署の加賀刑事がきた。「妹さんは電気毛布を使っていたのに、そのコードでタイマーをセットした。つまり自分が寝たときは布団は冷たい。いくら睡眠薬を使ったからといって、少々変」。刑事は殺人を疑っている。

3、佳世子に電話した。佳世子は驚いていた。葬式にはきた。美人。つきあっている人はいましたかと聞くと、「吉岡さんとは別れたといった」と応える。吉岡の電話番号はJとは違う。なぜ、Jのことを隠したか?別れ際にそっと髪の毛を採取。妹の部屋の髪と一致。でも、話では半年は会ってないといった。なぜ嘘をいう?警察から電話がきた。『計画美術』というバッグがあった。そこに電話したら、佃潤一という人がいた。Jだ。妹の部屋を調べた。絆創膏はたんすの上にあった。妹は170もあったから、不思議ではないが、佳世子は150。だとすると、犯人は潤一か。


4、潤一に会いに行く。「妹・園子と付き合っていましたね」と詰め寄ると、「半年前に別れた」という。そっと髪の毛を採取。帰って調べると、妹の部屋のと一致。潤一は嘘を言っている。最近妹の部屋にきた。おまけに、潤一の部屋には佳世子の髪もあった。つまり、潤一と佳世子はつきあっている。佳世子は昔からの親友だった。ならば、裏切ったのは佳世子か潤一か?それに、殺した動機は?園子の同期の笹本に話を聞くと、鍵はまだ二つあるといった。

5.佳世子を呼び出した。「君は、嘘をついた。潤一のことを秘密にした。おまけに最近園子の部屋に行っている。髪があった。園子は綺麗好きだから、毎日掃除する。なのに、君と潤一の髪があった。つまり、犯行のあった日、君と潤一は部屋にいた。さあ、殺したのだろう。吐け」とつめよった。すると佳世子は、「私は園子とは言いあいをした。でも殺してない」と主張。そこへ加賀刑事がきた。佳世子は帰った。加賀刑事も、ラケットのグリップテープの巻き方から園子が左利きだと察知。さらに殺人だと疑っているから、部屋に残った指紋などから、右利きの犯人ががいると推理。ところで、園子はビデオを借りたようだ。それが何なのかは不明。さらに、隣の女性の証言から、死亡推定時刻は金曜の12時過ぎだが、金曜日の深夜12時ころ、男女の声がしたと判明。犯人は園子か潤一のどちらかだ。どちらかが先に帰って、残ったほうがやった?

6、アリバイについて。金曜の12時ころ、潤一は油絵を描いていた。証人がいる。でも、その後タクシーで行ったのなら、可能。
潤一にも問い詰める。「君は嘘をついた。髪が落ちていたんだ。君が犯人か?」
潤一の証言。「実は、日曜にあの部屋にいった。すでに死んでいた。自殺だと思った。自分の描いた絵があって、それがあると怪しまれるから。回収しただけだ」
そこでとなりの女性に頼む。「佳世子に電話して欲しい。ビデオの件です。大切なものがあるといってくれ」。佳世子はきた。潤一の鍵を使って入った。問い詰めるという。「私は犯人ではない。たしかに彼女を裏切ったけど、殺してはいない。ビデオを取り戻したかったから侵入しただけ。それがどんなビデオかは言えない」。「それから、殺人のしかけは自分がした。でもやめた。その後自殺したと思った」

7、康正は包丁で脅して電気コードをはりつける。手足は縛る。潤一がきたので、潤一も同じように縛る。潤一は、自分がセットをしたと言った。康正は推理を話した。「潤一は右利きだ。部屋にいったときそう思った。犯人は右利きだから、潤一の可能性が高い。決定的な証拠がない。それでも僕は犯人がわかった。動機もわかった。ビデオ屋で調べたら、佳世子は昔AVビデオに出ていた。それを潤一に言うと園子は言った。あるいは、潤一の両親に言うといった。それが園子を殺した動機だ。犯人はXXだ」

ここで終わっている。カラルイの推理。佳世子はどっち利きとも書いてない。だが康正は犯人がどっちか分かったと言った。犯人は右利き。ここで佳世子が右利きなら犯人はわからないはず。よって、佳世子は左利き。犯人は潤一。

罪とか罰とか』(映画)
ええとですねえ。難しいですねえ。時系列が横に流れるんですよ、この映画は。普通はAが主人公なら、Aの動きがメインで縦に時間が流れるじゃないですか。それが、この映画では、Aの場面があって、Aが死ぬと、Bの場面になって、それがC→Dとつながって、最後に、DからAの死ぬ前の場面に繋がるの。つまり、訳わかんなくなるの。
 この監督さんは、天才か奇人変人のどちらか。自分では天才だと思っていて、凡人に分かってたまるかって思いでわざとむずかしく不条理につくっているのね。でも、一般人からすると、奇人変人にしか映らなくて、映画も、あまり入っていなかったですねえ。でも、私はおもしろかったけど。理由はあとから言うわね。
その前にストーリー。
 いろんな人の人生が並行して描かれるから、一言で説明するのは難しいんだけど、主人公は、やっぱりあやめかね。女優なんだけど、今一売れなくて、自分が逆さに印刷された本を万引きするの。で、お詫びに一日警察署長をするの。そこがまた、、拷問道具なんかが一杯さがってて、蜘蛛の巣だらけの部屋。
部下が元の恋人で、8人も殺しているんだけど、まだ逮捕されていないの。証拠を残さないからなのね。動機はないに等しいから、多重人格っぽい。でも、今朝は目撃されたの。目撃した人は、トラックにひかれて死ぬんだけど、直前に、そいつの顔を見事に描いたの。妙にリアルに。それでもって、話は飛ぶけど、警察署には強盗犯人なんかも捕まって連れてこられるの。でも、あやめには、逮捕しろと命令が下せないの。自分に自信がないから。
で、話は戻って、主人公はここへくるまでに、出版社へ行って、すりなおしてくれと叫んだとき、馬鹿にされたりしているの。それから、またまた話は飛んで、コンビニ強盗なんかも起こって、あやめの友達で、今はヌード女優として有名になった耳川モモが人質として拉致されたりもするの。
 最後、その現場に行くんだけど、トイレで刑事の二人が、モモなんかよりあやめの方がずっと魅力的って話をしているのを聞くの。それで、自信をもち、現場で、ペンデイングになっている事件について、全て命令を下すの。それは、自分を馬鹿にした人間などをすべて逮捕しなさいというもの。それから、今の部下で、昔の恋人も逮捕しなさいと命令するの。
感想。
 私的にはおもしろかったわね。この人の頭の中、推理作家の頭に似ているの。推理作家の頭の中も、時系列が横に流れるの。たとえば、Aが殺された時、Bは隣の部屋のシャワールームから裸で抜け出して、Aの部屋に忍びこんで、Aの声色を使って、Cと会話して、アリバイ工作をしていたとか。という感じにね。だから、理解はできたわね。
 でもって、この人の将来に関してだけど、一般人に受け入れられないことが天才の条件だと思っているようだから、この先も、この道を突っ走ればいいんじゃないの。多くの前衛映画監督と同じように、好きな道をゆけばいいと思うのよ。
ところで、ぴあから地図が消えたの。最悪。きっと、携帯で地図検索で行けるから削除したんだろうけど、携帯を持っていない人だっているし、携帯を滅多に使わない人は、使おうと思ったら、大概電源が切れているものなの。もうぴあは買わないわ。どこかの雑誌で、地図を付けて。
来週の名作復活は、「どんどん橋落ちたの予定」