Gフォース、光媒の花

『Gフォース』(映画)
面白かったわね。私がアニメ(これはCG)をすきなせいもあるけど、こういうのが映画の未来を拓いてゆくのよね。私も同じコンセプトのを書いたの(動物とインターフェースする話)。松本清張賞にだしたのだけど、落とされるようなら、日本の小説業界の新しい芽を摘むことになるわね。



『光媒の花』(道尾秀介
短編連作です。毎回この人は秀才だと思うけど、今回また驚かされたわ。よくこれだけネタがあるわね。
1、「隠れ鬼」。主人公は中年の男。母親は痴ほう症。昔、20の頃、避暑地で、美しい女性に誘惑されたことがある。しかし、それは、遊ばれただけ。本当は主人公の父親と浮気をしていた。それを知ってつぎの日、父親はそそくさと家に帰ると言いだす。で、家に帰って二日後、その女性が川で死んでいたというニュースを聞く。最初は父親か母親が殺したのだと思ったのだが、そうではないらしい。で、現在、痴ほう症の母が、その女性の死んでいた場所の絵を詳しく描いている。それを見て、主人公は思い出す。自分が殺したのだと。だが、母親がそれを見ていたのまでは知らなかった。もしかしたら、父親も知っていて、そそくさと帰ったのかも。
2、「虫送り」。主人公の少年と妹が、夜、河原で虫取りをしていて、浮浪者に、妹がいたずらをされる。それを知り、兄は石を落して、そいつを殺す。しかし、向かいの河原で見ていた人がいるみたい。向かいの河原にゆくと、知っているそぶりの青年がいる。その青年の独白。実は、少年の落した石では浮浪者は死ななかった。その後、自分が殺した。

3、「冬の蝶」。前章で浮浪者を殺した青年の高校生の頃の話。青年Aは高校生の頃、貧しい家の少女を好きになった。その子にプレゼントを渡そうと、その子の家に行くと、知らない男に抱かれていた。男は、母親の愛人で、母親はアル中で、クレームを言うと、「じゃあ、お前が食わしてくれるのか」と逆切れされる。Aはそれでも、少女が好きだったので、自分が食わせてやるから、あんなことは止めてくれと言う。しかし、その夜、少女は男を刺す。そして言う。「私が袋に入れてくるんでいたものを、あなたが破ったから」と。
(これはいい。超傑作。もうミステリーの域を超えている。文学してる)

4、「春の蝶」。主人公の家の近所で、窃盗事件が起こる。牧川老人が500万盗まれた。牧川老人がちょっと外出し、幼稚園児の娘が留守番をしていた時、空いていたベランダから侵入された。しかし、娘は耳が聞こえないので、それがどんな人間だったのかを教えることはできない。で、牧川老人と親しくなる。老人が言うには、娘の母親が、たまたま娘の言ったことで、夫婦喧嘩をして離婚した。つまり、娘が父親の浮気相手を知っていて、それを母親に教えたことから、両親は離婚した。それを察知した娘が、自分から耳を閉ざしたのだ。
しかし、あるきっかけから、主人公は、娘がすでに耳が聞こえるようになっていることを知る。それを老人に諭して、老人も、自分が窃盗を働いたのだと白状する。それは、母親が金ばかりに執着するので、それを直そうとしたのだと。
(これも、人間心理の内奥に触れていて、切なくて、いい)

5、「風媒花」。主人公は、姉が入院したのでお見舞いに行く。すると、「私がいなくなったら、お母さんと仲良くするのよ」などと、まるで、癌で先が短いみたいな言い方をする。それは本当か?
(これも、じわんと泣ける。いい)


来週は、『ティンカーベルと月の石』と『プリンセスと魔法のキス』の予定。
「シャッター・アイランド」も見てみました。超面白かったわ。なぞ解きはいえないけど、衝撃だった。途中、撮影ミスかと思われるところが幾つもあるの。コップが急に消えたり、着ている服が突然変わったり、それから、密室から急に消えるという謎を追っているのに、それからどんどん離れて、結局、このなぞは解かれなかったり、と。でも、最後には、すべてが、ああ、そうかと納得するの。来週は、もう原稿ができているので、これは再来週紹介するわね。

追伸。オザワ君の出そうとしている法案ーー永住する外国人に地方参政権を与えるーーは、いいと思うわ。こういうのをやらなきゃ、日本は井の中の蛙になるのよ。国際化しなきゃね。

『神秘体験』(弓月城太郎)
遺伝子操作で作ったクローンに死者の魂を転生させるんですって。SFですねえ。大好き。それから、夢枕漠みたいな超人ものでもあります。あと、アマゾンの書評では、「ある意味エヴァ」ってあったんですけど、うーん、言えるかも。
全体としては、SF好きな私としては、面白かったですよ。