いつも彼らはどこかに

「いつも彼らはどこかに」小川洋子
うずたかく積まれていて、今、猫(犬)他の小説に取りつかれているので買ってみたの。
短編集。
よかったわ。皆、どれも涙があふれるくらい良かったわ。
とくに二番目の、ビーバーの牙がよかったわ。書くのに疲れて、止めてしまおうかと思った時、後ろから「もう少し頑張りなよ」と励ましてくれるようで、超よかったわ。
1・帯同馬。
Aは不安症で、モノレールにしか乗れない。それで、モノレール沿線でバイトをしているの。試食販売の仕事。ある時、ブランドの服を着たバーさんとおすしを半分ずつかい、一緒に食べる。で、バーさんは、パリだとか、世界中に行ったと、派手な話をしてくれる。そして、パトロンの墓参りに行こうと言う。しかし、約束の時間に現れない。嘘だった。今までの話すべてが嘘だった。でも、その話を聞いている時間だけ、夢を見れたから、恨んではいないの。おりしも、ディープインパクト凱旋門賞に帯同馬と行った記事が出ている。その帯同馬もディープインパクトと一緒に走る夢を見たのだろうかと、Aは考える。きっと幸せだったのよ。
2・ビーバーの牙の骨を貰う。くれた人の息子の処へ行き、一緒におよぐ。くれた人は、Aの小説をいつも翻訳してくれていた人。よき理解者だった。さらにビーバーは小さな牙で、体の何倍もの枝を倒す。主人公(A)の小説家も、その骨を見るたびに、翻訳家からそっと背中を押される気になる。感涙ものだったわ。
他にも感動作が三篇。
最後のもよかった。主人公は、旅にいけない人に変わって、旅に出て、思いでの物と一緒に写真を撮ってくるのが仕事。主人公は、三月三日に死んだ弟がいる。ある日、弟が現れ、待っていたよという。ほんわか物ね。