三匹の警部2、レントゲンポメ

「三匹の警部2、レントゲンポメ」続き。
この前の部分で欠けていた情報を一つ。
神崎は立派な頬髯を蓄えていた。片岡は髭のない顔だった。

三週間後。観光でまだ仙台のホテルに滞在していたトイとフレンチブルの処へポメがきた。付添人が抱いている。
ポメ「お姉さん、詐欺師の神崎さんが白骨温泉で心臓発作で死んでしまったそうですの」
トイ「まあ、とても素敵」
フレンチブル「それは片岡さんの情報ですか? レッツラゴー」
ポメ「そうなの。一緒に泊まっていて、いきなり死んだから、医者に見せたら、心臓発作だとか」
トイ「まあ、とても素敵」
ポメ「それで、焼き場で焼いて骨を持ってきたの。片岡さんはここにいるわ。入って」
フレンチブル「久しぶりで。レッツラゴー」
ポメ「片岡さんは死に際の神崎さんの写真を持ってきたの。頬髯が立派だったでしょ。どうみても、間違いないわ」頬髭の立派な神崎の写真を見せる。
トイ「それは、とても素敵」
片岡「本当に、突然のことで」髭のない顔で。よよと泣く。
ポメ「それで、これから、神崎さんの奥さんの所へお骨を持っていこうと、片岡さんが言うので、一緒にいかない?」
フレンチブル「絶対に、レッツラゴーでやんす」
ポメたちと付添人たちと片岡は、青森の神崎の奥さんの所へ行った。
当然奥さんも神崎という。フルネームは神崎愛。90にしては若い名前だ。
片岡が知らせてあったとか。自分が神崎愛の息子の子供だということも知らせてあるとか(認知書も持っているとか)。

神崎愛の実家の前。白髪頭の神崎愛と弁護士と医者が待っていた。
神崎愛「あらあら、あいつはついに死んでしまったの。やっぱり悪人は早死にするのね」
ポメ「悪人とはどういう意味ですか?」
神崎愛「ええ。あいつは勝手にうちの印鑑を持ち出して、私名義の山を自分の名義に書き換えて、売ってしまったの。まだ契約だけで金は入っていないけど。ああ、もらった手形は金庫にあるけどね。今は、離婚訴訟と土地返還訴訟の真っ最中なの」
ポメ「その話は家の中で聞きましょう」
トイ「まあ、とても素敵」
家の中で、片岡君が神崎から預かったという携帯を取り出した。
片岡「ここに神崎さんの携帯があります。メールの原稿が書いてあります。読みます。『ああ、心臓が苦しい。もしかしたら、死ぬかも。愛君に誤解されたまま死ぬのは心外だ。本当は、心の底から愛しているのに。土地を勝手に売ったのだって、本当は、君に女王様のような生活をさせたくて、やってしまったこと何だ』」
神崎愛「ふん。どうだか」嘯いてはいるが、少し顔色が変わった。
片岡「『でも、もう遅い。僕は今夜死ぬだろう。だから、半分は君に返す。まだ手をつけてはいない。書類も書いてある。手形は金庫にある。でも、半分は孫にやってくれないだろうか。本当に素直でよい子なんだ。ああ、彼は、最近逢ったのだけど、僕が、離婚訴訟の最中だと言うと、自分が中に入って、説得するから、三人で一緒に暮らしましょう、と言ってくれたんだ。君のことも、本当の祖母のように思っている。きっとこの先、僕がいなくても、おばあさんと大切にしてくれるだろう。いやがらずに世話をしてくれるだろう。天蓋孤独の君には願ってもない、肉親になってくれるだろう。だから、どうか、半分は孫に』」
神崎愛「嘘」今度は本当に、神崎愛の顔色が変わった。
片岡「おばあさーーん。僕は一生、おばあさんを大事にするから。約束するって」
片岡君が悲痛な声を上げた。彼は、文の途中から、すでにワンワン泣いていたが、終わると、立ち上がって、祖母の手を取り、さらに後ろから抱きしめた。
片岡「僕は、5歳で父と別れ、10歳で母を失い、どんなに苦労したか。でも、やっと肉親が見つかったんだ。一生懸命大事にするから。僕が片岡って名前なのは、母方の名前だけど、それが嫌なら神崎にするから」
神崎愛「分ったわ。半分はあなたに上げるわ。訴訟も取り下げるわ」
神崎愛は、さっそく、手形を現金に換える為に、自分の今住んでいるマンションへ帰っていった。弁護士たちも一緒だった。

その後。青森の駅前のバー。
片岡君が、お礼にと、5万円のステーキコースをおごってくれた。
片岡君は、なぜか体が変化したのか、にんにくをガンガンにかけて食べていた。前ににんにく餃子は駄目だと言っていたのに。
ポメは不審な物を感じたので、じっと集中して片岡君の頭を見ていた。レントゲン状態だ。すると、片岡君の頭にあるべきものがないのに気が付いた。
ポメはトイレでトイに相談した。
ポメ「トイさん。さっき片岡君の頭の中を見たら、クリップが見えなかったの。癲癇の手術をしてるって言ったから、当然あるべきなのに」
トイ「まあ、それは、とても素敵」
フレンチブル「それなら、レッツラゴーはどうでしょう」
ポメ「つまり、黒い箱をかぶせて、レントゲンを撮ったと言って、レントゲンの絵を書いて追及すればどうかって、言いたいの?」
フレンチブル「レッツラゴ―」
トイ「まあ、それは、とても素敵」

ポメは、その通りに実行した。
翌日。片岡君を前に、レントゲンの絵を開示した。
ポメ「これは、最初にバーで会った時の片岡君のレントゲン写真。こっそり撮っておいたの。頭の中にクリップが見えるでしょう」確かにクリップがある。
トイ「まあ、それは、とても素敵」
ポメ「それで、これが、昨日のあなたのレントゲン写真。こっそり撮ったの。これは頭の中にクリップがないわ。ついでに、法令線を取ったかのように、頬に糸があるわ。どういうことかわかる? これは神崎さんの頭だって意味なの」
フレンチブル「はいはい。レッツラゴーですよ」
ポメ「神崎さんは、確かに、立派な頬髯があったわ。死んだときの写真にもあったわ。でも、あれは、片岡君に三週間で髭をはやかして、神崎さんに仕立てたから。それで、神崎さん、あなたは髭を剃って、糸でプチ整形して、法令線を取った。違うかしら」
フレンチブル「いよいよレッツラゴーですよ」
ポメ「だから、死んだのは片岡君。で、どうやって医者をだましたかと言うと、カリを注射したの。これなら、証拠が残らないから、心臓発作に見えるわ。それで神崎さんの死亡診断書を書かせたの」
トイ「まあ、それは、とても素敵」
フレンチブル「いよいよ、佳境。レッツラゴーですな」
片岡君役の神崎さんの顔がひきつった。
神崎「それ以上言うな」
ポメ「いいえ。最後まで言わせてもらうわ。あなたは、自分にそっくりな片岡君を見つけた時から、この作戦を考えていたの。顔が似ているから、骨格も似ている。声も似ている。だから、私たちにばれなかった。いえ、その前に、山は売ったのだから、8憶を持って、逃げてしまうっていう手もあった。でも、それでは、地の果てまで警察に追われる。だから、例え半分になっても、堂々と逃げられる手を考えたの。で、片岡君とすり替わりを演じたの。でも、それでは、騙されて、あなたが片岡君だと証言した私たちの気持ちが収まらないわ。どうせ認知書も嘘でしょうが。神崎愛から息子の名前を聞いて、でっち上げたのよ」
神崎「どうすればいいんだ?」
ポメ「一億でどうかしら?と言いたいけど、今ないだろうから百万でどうかしら」
神崎「分った。近いうち振り込む。そのかわり警察には言わないでくれ」
フレンチブル「レッツラゴーですよ」
という話だったけど、未だに振り込まれていない。さすがに相手は詐欺師よね。どこかに逃げてしまったし。ああ、残念。(了)

感想。小説業界は古いから、レントゲン人間と書いただけで落とされてしまうの。でもネットで発表できて、幸せ。

情報
クロレッツ、ミントタブ。いい。
ECCジュニア、効く。
クリニカ。いい。
アロエステ、効く。
ラウンドワン。いい。
ネットで賃貸。効く。
ソルティライムチキン。美味しい。