『リプレイ』DVD2003年公開

監督ローランド・ズゾ・リヒター
キャッチコピーは、『アイデンティティ』のスタッフが放つ『メメント』を超える記憶の迷宮。

アイデンティティ』を見た時も、この監督は天才系だと思ったけど、今回は、もっと天才性を全面に押し出していて、かなり衝撃。
アイデンティティ』では、大雨で一軒のモーテルに集まった人たちが次々に殺されていく話で、途中までは非常に解り易い。
でも、途中から急に惨殺死体――乾燥機の中の斬られた頭部など――が出てきて、これは、妄想では?と思い始める。
で、途中で、説明的なシーンが挿入されて、やっぱり……となる(このネタは結構新鮮)。
だが。『リプレイ』は、最初から理解できないシーンの連続。
簡単な内容は、事故に遭った男が、病院で(それも二回入院しているらしい)「あなたは殺人犯だ」と言われたり、何回も脈絡の無い回想が訪れてきて、どれが真実か判明がつかなくて、悩まされる。
でも、最後の方では、自分が事故をおこして、それも、殺人計画があって途中で失敗したのでは?と気がつき始める。
最後は、見てのお楽しみなのだが、各シーンが細切れすぎて、見ていてかなりしんどい。『メメント』程度にはしんどいかな?
そのせいでヒットは今一だったのだと思う。でも、この作品は非常にミステリーのレベルは高い。
 本当に、こういうレベルの高い作品を見ると、他人の作品は蜜の味、だと思うわね。
ところで、この筋書きをどう変えればヒット作になるか?
一つの方法。「妄想」「真実」「妄想」「真実」と観客が思うように並べていって、最後に「真実」の部分に妄想を入れて、え?っと思わせるように並べ直すとか。
第二の方法。歌野晶午「世界の終わり、あるいは始まり」方式。最初から三分のニくらいまでは、真実と思わせる記述で事件を描く。その後、今までの事は妄想では?と思わせるような記述がはいる。そこからは妄想、妄想、のオンパレード。最後まで読んだときは、完全にグロッキー。
第三の方法。舞城王太郎北野勇作(『はぐるま』『どーなつ』)方式。明からに妄想、妄想、妄想と思われる記述の連続なんだけど、ソフトで親しみやすい妄想なので、読んでいて苦痛ではない。『どーなつ』では、脳みそが脱走して、それを追いかけたりするのが超面白い。でも、この方法は、持って生まれたリズムがあるので、かなりむずかしいかな?
第四の方法。『リプレイ』+『リング』方式。呪いのビデオの怖いシーン→現実か妄想か不明な記憶(カラー)→『リング』(白黒)→『リプレイ』過去の殺人のシーンのリアルな記憶(カラー)→リング(白黒)→適当な所で、説明的なシーン(カラー)。例えば、ニュースで、その殺人の概要を述べるとか。
で、そのうちに、呪いのビデオ(白黒)と殺人の記憶(カラー)がシンクロしてくる。→最後は、医者が、意図的に組んだプログラムで、両方のことが本当にあったことだった、とするとか。で、最後に男が自分が犯人だと白状し、凶器の隠し場所をゲロするとか。まあ、そんな感じ。
(この手法はどこかにあったよね。昼と夜に分けて順に語る手法。綾辻の『十角館』かな?)

『永遠の館の殺人』(二階堂黎人黒田研二)もそうかな?
そう言えば、黒田研二の作品にはこういう作風なのが多いような気がする。デビュー作の『ウエディング・ドレス』も私視点と僕視点が交互に語られるし。