『新耳袋』劇場版DVD短編小説『60兆×数百の集合体』

新耳袋』劇場版。DVD
1、夜警の報告書。内容*ある廃屋の監視員、幽霊が見えるらしく、次々と辞める。主任が確かめに行く。そこには三ヶ月前から勤務している監視員がいて、彼は「僕も幽霊は見ましたよ。血色の手形が壁に浮かび上がるんです。でも気にしなければ大丈夫です」と言う。その夜、主任は大量の幽霊を見て仕事を止める。一月後、勤続三ヶ月の監視員に会う。手の霊が憑依している。感想*予想を覆された。奇妙に怖い。私は『シックス・センス』ネタ(幽霊が見える少年の目に映る主人公は幽霊)を予想していた。つまり、幽霊を怖がらない監視員自体が幽霊。でもそれでは推理になってしまう。ホラーだと、これが妥当かな?
2、残煙。内容*夜の山でOLたちの車が道に迷う。山の奥から怪しい音が聞える。そして、煙だけ残して体が消える。感想*消化不良。
3、手袋。内容*毎晩、長い手袋の女に首を絞められる夢を見る。別れた男が尋ねてきて言うには、自分も主人公の元へ行く夢を見る。しかし、ある日を境に夢を見なくなる。同時に元恋人の結婚通知が届く。つまり、あの手袋の夢は、元恋人の彼女が嫉妬して生霊となって訪れていたのだ。感想*ちょっと消化不良かな?このネタからは一本掌編ができたので、後程。
4、重い。内容*毎晩、男の幽霊が上に乗ってきて、重い。感想*それだけ?
5、姿見。内容*倉庫の中に姿見があって、その中に引き込まれる。感想*うーーん。
6、視線。内容*文化祭のビデオに映った看護婦らしい影。最初は壁の染みみたいに見えるが、だんだんと実体化していって。感想*はっきり言って怖い。心霊写真みたいで、怖い。
7、約束。内容*叔父さんに部屋の留守番を頼まれる。高級なマンションなんだけど、呼びかけられたら返事をすることを義務付けられる。主人公は最初は返事をしていたのだが、彼女を連れこんだ時、返事をしないことがあった。呼びかけが急に激しくなったので、彼女を追い返したが、巨大な樹女が現出した。感想*文句なく面白い。
8、「ヒサオ」。内容*ある田舎の家。家の中には至る所に水溜りが。母親が、苛めで死んだ息子に話しかける。「お母さんが復讐してあげる」と。しかし、ある日、ニュースでその相手が死んだことを知る。どうやら息子が自らの手で復讐したようだ。生きる目的がなくなった母親は、自分も死のうと。感想*烏丸せつこの演技が切ない。

第二話からの発想。
『60兆×数百の集合体』(アスキー付きで唐沢類人のページへ移動しました。上の画像)

このところ、私は毎晩、女の手に首を絞められる悪夢に魘されていた。色の白い女の手が私の首を絞めて、殺そうとするのだ。三日ほど前から悪夢は始まって、毎晩少しづつ強暴さを増していた。昨晩は怖かったから枕元にナイフを置いて寝て、悪夢が始まると同時にナイフを振り回してやった。首を絞められた時に手が行く位置にナイフを置いたので、すぐに掴むことができた。
めくら滅法でナイフを振りまわすと、ナイフの先が相手の手首を切ったようで、真っ赤な血が飛んだが、二度寝した時には、血だらけの手が首を絞めたのだった。 
絞め方は執拗で、半死半生で起きると、首に真っ黒の跡が残り手首も血に染まっていた。だから、夢の女の手首を切ったのか、自分の手首を切ったのかは不明であった。
処で私にはコックリさんを得意とする友達がいる。霊とも親しく、時には霊媒師の仕事もこなす。そこで彼女(ミチ)に相談してみた。
ミチは言った。「霊魂と闘いなさいな」と。
「霊魂と闘う?」
「そう。向こうが敵意を持って闘いを仕掛けているのだから、闘って追い払うのが礼儀」
「でも、霊魂と闘うなんてできるの?」
「できるわよ。昨日だってナイフで闘いを挑んで、手首を切りつけてやったんでしょ」
「まあね。でも、敵は霊魂なのよ。殺しても死なないのよ。いや、死霊なのか生霊なのかは分からないけど。私の手首が切れたのは事実だけど、あの女の手首が切れたのは、私の妄想かも知れないのよ」
「分かったわ。どうやら、霊魂とは何ぞやという所から教えてあげなければならないわね。では、そちらを解説した上で、対処法を考えましょう。生霊かどうかは私がコックリさんで霊視してあげるわ。生霊ならその女の嫉妬か恨みを解除してやれば悪夢は見なくなると思うし、死霊なら、私が霊媒となって怨念を聞いてあげましょう」
 ミチは軽く受け流したけど、私は一抹の不安を持った。首の絞め方の執拗さからして、この霊は、そうとうに執念深い性質ではないかと感じたのだ。
「まず、霊魂とはフォトン原子の集合体だと考えられるのね。それも極めて緩い結合の集合体ね。でも、水のように緩い集合体でも、切ればそれなりに分断されるし、血管内の血であれば、噴出する訳ね」
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