『昭和残侠伝・死んで貰います』・マキノ雅弘作品・紹介

『昭和残侠伝・死んで貰います』・マキノ雅弘作品・紹介

≪読者A≫。「唐類はん。先週、マキノ雅弘マキノ雅弘って連呼していながら、先週紹介した映画は山下耕作だったじゃないですか」
唐類。「誰や。それ」
≪読者A≫。「だから、マキノ雅弘の後に健さんの映画を撮った監督はんですよ」
唐類。「そうか。B型は、あんまし調べんから。それは、困ったなあ。テロップこっそり差し替えておくってのはどうや?」
≪読者A≫「もう。三十年も前に公開終わってるし」
唐類。「難儀な話や」
≪読者A≫「もう。ギャグでごまかさないで下さいよ。それより、マキノ監督作品を紹介しないと」
銀幕の名巧 マキノ雅弘監督傑作選
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「血煙高田の馬場」〈決闘高田の馬場〉 (1937/日活)」と「浪人街」(1957/松竹)
丹下左膳」1953/大映) と「続丹下左膳」1953/大映/16mm)
「続清水港」(1940/日活) と「弥次喜多道中記」(1938/日活)
「昨日消えた男」 (1941/東宝)と「待っていた男」1942/東宝
「次郎長遊侠伝 秋葉の火祭り」(1955/日活/16mm)11:00/2:45/6:30

「次郎長遊侠伝 天城鴉」(1955/日活/16mm) 12:55/4:40/8:25 (終映10:00)

「 阿波の踊子〈剣雲鳴門しぶき〉」(1941/東宝) 12:00/3:25/6:50

「 すっ飛び駕」(1952/大映/16mm)10:10/1:35/5:00/8:25 (終映10:05)

「 港まつりに来た男」(1961/東映)11:40/3:15/6:50

「 仇討崇禅寺馬場」(1957/東映) 9:55/1:30/5:05/8:40 (終映10:15)
☆大友柳太郎、千原しのぶ
 ☆゛女心、狂乱の眉に青く燃えて。剣一筋、鐘も哭く暁の対決"(キャッチコピー)
 ☆川本三郎著『時代劇ここにあり』より抜粋――崇禅寺の果たし合いで伝八郎が武士の風上にもおけない卑怯なことをした(伝八郎に惚れていたお勝つが人足と駆けつけ、果し合いの相手を殴り殺してしまう)という噂はたちまち広まり、汚名を着せられた伝八郎は、ひとり苦悩する。殺された相手の亡霊が現れる。(中略)摂り憑かれたように刀を振りまわす伝八郎の姿は、中里介仙『大菩薩峠』の机龍之助の狂気と重なり合う。大友柳太郎、迫真の演技。
       
「 江戸っ子繁昌記」(1961/東映) 9:50/12:55/4:00/7:05

「長谷川・ロッパの 男の花道」(1941/東宝) 11:30/2:35/5:40/8:45 (終映10:00)

任侠編
「日本侠客伝」(1964/東映) 9:55/2:40/6:35
☆最後に、闘い終わった健さんの背中に汗が滴るシーンが絶品。
☆゛任侠、鉄火、やくざの花道を行く。稲妻のような獅子のような、男の中の男"(キャッチコピー)
中村錦之助高倉健松方弘樹津川雅彦、田村高広他 
☆脚本家・笠原和夫の本『昭和の劇』によると、以下の事情があった。最初、主役は中村錦之助の予定だったが、急遽健さんに変更になった。で、健さんが「キン兄」と慕っていた中村錦之助に挨拶に行くと、「お前がやるなら、俺も一枚噛む」といって、途中の流れ物の客人の話をいれた。「キン兄貴」は、途中で敵のやり口を見かねて殴りこみに行くがやられてしまい、最後に健さんがやり返す。この定型がこの作品でできた。

「日本侠客伝 浪花篇」 (1965/東映)12:00/4:45/8:35 (終映10:15)
☆"死ぬのは一緒!今宵限りの首売り渡世、侠徒魂二つ散る!゛(キャッチコピー)
鶴田浩二高倉健、村田秀雄、里見浩太郎長門裕之、大友柳太朗
1:50より、鈴木則文監督・澤井信一郎監督によるトークショーあり

「日本侠客伝 関東篇」 (1965/東映)11:40/3:15/6:50

「昭和残侠伝 血染の唐獅子」(1967/東映)10:00/1:35/5:10/8:45 (終映10:15)
☆高倉 健、池部良、藤 純子(下の二つも同じ配役)

「 昭和残侠伝 唐獅子仁義」(1969/東映) 11:40/3:15/6:50

「昭和残侠伝 死んで貰います」(1970/東映) 9:55/1:30/5:05/8:40 (終映10:10)

「ごろつき」(1968/東映) 11:30/3:10/6:50 ☆コメントは下

「日本大侠客」(1966/東映) 9:45/1:25/5:05/8:45 (終映10:20)

「侠客列伝」(1968/東映)11:30/3:15/6:55  ☆コメントは下

「侠骨一代」(1967/東映) 9:45/1:30/5:15/8:50 (終映10:20) ☆コメントは下

「日本やくざ伝 総長への道」(1971/東映) 10:45/2:45/6:45  ☆コメントは下

「 純子引退記念映画 関東緋桜一家」(1972/東映) 12:50/4:50/8:45 (終映10:25) ☆コメントは下


マキノ雅弘高倉健ボックス(DVD)の概略

「侠骨一代」(昭和42年公開)男一代でっかく立つ!その名は龍馬。ドスの雨にも負けない侠骨男!
■出演:高倉 健/藤 純子/志村 喬
■監督:マキノ雅弘 ■脚本:村尾 昭/松本 功/山本英明
■カラー92分
キネマ旬報2月上旬号よりの抜粋「純子が高倉健の母親役を演じる異色作。純子は健さんの亡母と瓜二つの酌婦として現れ、健さんは純子を庇護しようとして逆に助けられる。『昭和残侠伝』一作目(65)の脚本トリオ」

「侠客列伝」(昭和43年公開)任侠3万、大縄張りを狙う!高倉、藤、若山、鶴田とオールスターで描く任侠大作!
■出演:高倉 健/藤 純子/若山富三郎鶴田浩二
■監督:マキノ雅弘/■脚本:棚田吾郎
■カラー106分

「ごろつき」 (昭和43年公開)ドスの返り血、汚れた黄金の腕!キック・ボクシングの花形が暴力団11人惨殺!
■出演:高倉 健/吉村実子/菅原文太
■監督:マキノ雅弘 ■脚本:石松愛弘
■カラー92分

「 日本やくざ伝 総長への道」(昭和46年公開)総長の座は一つ。跡目をめぐって真っ二つ!高倉、若山、鶴田が競う大任侠巨篇!
■出演:高倉健若山富三郎鶴田浩二
■監督:マキノ雅弘 ■脚本:高田宏治
■カラー99分
キネマ旬報2月上旬号よりの抜粋「みこしが練り歩く開巻シーンから、ラストの斬りこみまで、ぞくぞくするような興奮に満ちている。東映京都ならではのどっしり構えた威厳にあふれ、絢爛たる美術が目を奪わずにおかない」

「 関東緋桜一家」(昭和47年公開)純子見納め!ここは深川、意地と我慢の任侠の地にドスの刃揃えたオールスター!
■出演:藤 純子/高倉 健/鶴田浩二片岡千恵蔵
■監督:マキノ雅弘 ■脚本:笠原和夫
■カラー101分
豪華解説書(48P)
<特集> 澤井信一郎監督・山根貞男ビッグ対談
高倉健の魅力を盛り上げるマキノ節とは何か」
<エッセイ>山田宏一/冨田美香/高崎俊夫
<作品解説>磯田 勉

唐類。「時間がなくてあまり調べられなかったんじゃが、できる限りの資料を集めてみやした。丹下左膳大河内傳次郎や水島道太郎などもやっているが、多分、この年だと、大友柳太郎が主演だと思いやす」
≪読者A≫。「そう言えば、この監督はん、次郎長物も沢山撮影しとりますなあ≫
唐類。「そや。上のは資料がみつからなかったが、1963年東映のなら、資料はあるで。こっちは、『次郎長三国志』のリメイクなんやが、鶴田浩二松方弘樹山城新伍津川雅彦長門裕之佐久間良子が出演しとるんや。内容は同じようなもんやろ」
≪読者A≫。「そんな、いい加減な」
唐類。「そうは言うけどなあ、マキノ雅弘は映画の壷を押さえているから、大体は同じ展開になるんや」
≪読者A≫。「映画の壷って?」
唐類。「だから、王道は、健さんと池良だーな。イナセな男が二人、雪の降る中を青の着流し、雪駄で歩いて行くんや。片手には長ドス。バックには唐獅子牡丹が流れる。これで決まりや。でもって、映画は90分だから、30分ごとにこれに似たシーンが繰り返されるのや」
≪読者A≫「そんな、内容もないのに?」
唐類。「内容なんて、後から適当にくっつければ良いんや。それよりも主役の顔や。主役の顔でヒットするかどうか決まるんや。それと、刀やな。時代劇がこれだけ長い間廃れないのは、刀の斬りあいが美しいからなんや」
≪読者A≫「待ってくださいな。主役は誰にするんですかいな?」
唐類。「そうやなあ、今で言ったら、豊悦と佐藤浩市かなあ」
≪読者A≫「佐藤浩市、好きでんなあ」
唐類。「でへ。あの、目一杯グレーゾーンにいながら、最後には徹底的に豊悦を守って斬りまくる姿がたまらんのや」
≪読者≫。「勝手に妄想はいっているし。まあ、佐藤皓市でなくとも、翔、力、なんてのも考えられるけど。豊悦の代わりは、反町、村上なんてのもありかなあ」
唐類。「まあな。そんで、 日本侠客伝で出来あがったように、30分ごとに客人が殴りこみにゆくのや。その時も唐獅子牡丹が目一杯流れて」
≪読者A≫。「客人は誰にしまんのや」
唐類。「そうやなあ、小林稔二でも白竜でも漣(?名前うろ覚え)でも誰でも良いがな。それ以外のシーンは、徹底的に敵に痛めつけられて我慢我慢をすればよいんや。こういう時代だから、我慢の指数が高ければ高いほど、観客は、自分の境遇を重ねあわせて感情移入してくれるのや」
≪読者A≫。「自分の境遇って?」
唐類。「だから、サービス残業とか、自費出張とか、色々あるやろ」
≪読者A≫。「生生しい話でんなあ。そうなると、時代も『昭和残侠伝』の時代でないとあきまへんなあ」
唐類。「そやな。まあ、昭和30年代でも田舎の設定なら悪くないと思うけど。ということで、とってつけたようでありますが、健さん作品の紹介にゆきます」


『昭和残侠伝・死んで貰います』紹介。

 この中では、健さん渡世人を捨てて、板前になるために帰ってくるでやんす。浅草の喜楽って料亭で、池部良がすでに板前になっているんです。
 で、芸者が藤純子で、健さんに惚れるんですが、そこは、くっついてしまうと女性客が離れるんで(失礼。映画の中では色々と理由をくっつけていやすが)、健さんはすげなく振り払うんでやんす。
 で、まあ、色々とあって、悪者に痛めつけられて、さんざん堪忍した末に、最後は池良と一緒に殴りこみに行って、大暴れをするんです。
 なんか、まるっきり内容がないようですが、途中に何度も流れる唐獅子牡丹と最後の二人の雪の中を歩くお姿が、もう目に焼き付いて離れなくなるんです。
 で、なかなか良いなあと思ったシーンは次。

 芸者(藤純子)が細い腕を捕まれて極道もん数名に拉致されそうになるんです。
 チンピラが数名と着流しの脂ぎった男が一人。
「いやーー。助けてーー」
 芸者さんが黄色い声をあげて、抵抗しやす。
 健さん渡世人から足を洗って板さんになってます)が、芸者にかけより、凄んで言いやした。
「ちょいと、ご免なさい。姐(ねえ)さん。オメエさん、辰巳一の芸者かも知れねえけど、ここは料理屋だ。好いた腫れたの痴話げんかは、お茶屋でやっておくんなさい」
(わかっているんですよ。悪いのは相手のほうだと。でも、我慢なんでやんす)
「いえ。私は」
 芸者が品を作りやす。
 悪者ではなくて、芸者に向かって、「帰ってもらおーか」と健さん
 よだれと涙が一緒にでそうなイナセな台詞でござます。
(我慢、我慢、我慢の構図でやんす)
「おーい。この女は俺が買った女だ。余計なことするねい」
 脂ぎった極道が拳を振り上げます。
 が、そこへ池良の兄貴が入りまする。そして、健さんをニ、三発、殴りやした。
「私が悪いんです」と芸者さん。
 ここで迷わずに池良は、健さんに向かって「謝るんだよ」と怒鳴るんです。
 さらには、強引に健さんを床の上に座らせて謝らせます。
(ここでも我慢、我慢、我慢の構図です)
 まずは自分が、「勘弁してやっておくんなさい」
 つられて、健さんも、「すいませんでした」
「ふん。喜楽も落ちたなあ」
 極道ずらのチンピラは去っていきやした。

≪読者A≫。「何か、台詞、できすぎてません? つうか、我慢のしすぎっしょ」
唐類。「そこが良いんじゃないか。男は色々と弁解しちゃあいけないんだよ。10喋りたいところを1に抑えて、後は目で語るんだよ。このやせ我慢の台詞の応酬は、『唐獅子仁義』になると、もう、退け反るほどに凄みをましてくるから」
≪読者A≫。「じゃあ、そっちもそのうち」
唐類。「まあな。それより今週のネタなんだけど」
≪読者A≫。「ない!」