『日本やくざ伝 総長への道』『網走番外地。決闘零下30度』

『日本やくざ伝 総長への道』(昭和46年公開)総長の座は一つ。跡目をめぐって真っ二つ!高倉、若山、鶴田が競う大任侠巨篇!
■出演:高倉健若山富三郎鶴田浩二
■監督:マキノ雅弘 ■脚本:高田宏治

筆者。「この中では、♪健の字♪は不動の竜太郎という名前で出演してま。大松(若山富三郎)の弟分ですな。で、大松がまたぶさいくな男で」
ビシ。
読者。「訴えられまっせ」
筆者。「その大松が、お若(野川由美子)という女を金で自分のものにしようとして」
読者。「捻じまげるな。大松は悪者じゃないから」
筆者。「そやった。女に親切をしてもストーカーと思われる哀れな男で。ちなみにわてはデブも好きなんやが」
ビシ。
読者。「先」
筆者。「分かった。そこは飛ばして。こいつが人を殺めてム署に入るんですが、その間のお若はんの世話を♪健の字♪に任せまんのや。じゃが、♪健の字♪が責任を果たさないんで」
ビシ。
読者。「違うやろ」
筆者。「本当や。面倒を見るといったら、体の面倒もみるのが筋なのに、なんもせんのや」
ビシ。
読者。「ありえないだろう。兄貴の好きな女やぞ」
筆者。「そんなの黙っておれば、分からんが」
ビシ。
読者。「だから、自分の願望を混ぜるな」
筆者。「チ。荒れてやがんなあ」
ビシ。
読者。「だから、『唐獅子仁義』の台詞でごまかすな。先、先」
筆者。「分かった。で、野川由美子は一生懸命に好きだと♪健の字♪に訴えるんだけど、これが感受性が鈍くて何もしないから」
ビシ。
読者。「違うやろ。そういう脚本やろ」
筆者。「さあ、どっちか分からんが、男が手を出してくれないから、ついに、野川由美子は怒って、怒りが呪いに変わって、♪健の字♪を石にかえて」
ビシ。
読者。「ホラー映画じゃないから」
筆者。「違った。蟻に変えて」
ビシ。
読者。「ファンタジーでもないから」
筆者。「まあ、とにかく、そんなこんなで、恨んで浜松へ逃げるんじゃ。そして、♪健の字♪も他の用事もあって追いかけるんじゃが、今度は、鶴田浩二が出てきて、余計話がややこしくなって」
ビシ。
読者。「違う。鶴田浩二は浜松の親分だから」
筆者。「そやった。どうも、この映画、登場人物が多すぎて覚えきれまへんのや。この4人の他にも、松方弘樹大木実、小暮美千代、嵐寛寿郎近衛十四郎まで出てますのや。でも、最後は、♪健の字♪の殴りこみで終わるんやけど」
読者。「めでたし、めでたしや、と言いたいが、内容は正確に伝えんと」
筆者。「そうや。また嘘つきと言われるがナ」
読者。「少しは反省せーよ」
筆者。「でもな、広告業界に嘘という言葉はないし」
読者。「それは、『北北西に進路を取れ』の言葉」
筆者。「言いなおすわ。あの時は、夢遊病状態で意識がなくて」
読者。「それは『女王蜂』のネタ」
筆者。「分かった。あやまるわ。わてが潰れるのを心待ちにしている人へ、済まんかったな。わてはやめんから。後、ニ、三回は」
読者。「又バッシングを煽るような」
筆者。「へへ。わてドMやさかい、余計燃えるが。バッシングをされないような小説家なんて、って感じや。まあ、歩いている途中で監視されてるようなされてないような感触が初めてなんで、ちょっと参るが。それより、この映画は任侠映画だから、呪いをかけられて石に変身した♪健さん♪は出てこないから」
読者。「当たり前や」
筆者。「蟻にはなるかもしれんけど」
ビシ。


網走番外地。決闘零下30度』
■出演:高倉健、梅辰(アンナ・パパ)、田中邦衛大原麗子丹波哲郎嵐寛寿郎田崎潤、安部徹
■監督:石井輝男

筆者。「今回は、゛女は五才の頃より、有名俳優の嫁の座を狙う"っていうコンセプトと、゛万引きは止めよう"というコンセプトで」
読者。「またまた統一性のない」
筆者。「先にゆくで。まず、電車の中で、首から札をかけた女の子が歌っておりますのや。札には『この子を表記の場所までお送り下さい』と書いてあるんでっせ。そこで、♪健の字♪は早速アホなのを暴露しますが」
読者。「どんな?」
筆者。「一口では説明できへんわ。まあ、変な和製英語を使うと言っておきま。それより、ここでは女の子の言葉が面白いでんな」
読者。「どんな?」
筆者。「例えば、♪健の字♪が声をかけても、軽く睨んで言い返すのや。『変な男が話しかけてきても口を利いてはいけないと言われているの』とか『そういう親切そうな男が危ないの』とか。なかなかのマセガキですわ」
ビシ。
読者。「だから、喧嘩を売るな」
筆者。「さいでんな。炭鉱の町で降りて、女の子を両親の元まで運ぶんですが、馬を借りまんのや。それを傷つけたら二十万払う約束するんですが、案の定、馬を傷つけられてしまって、炭鉱で働くことになるんでんな。それで、ようやくその女の子の父親が登場するんですが、これが青大将で」
読者。「それは役の名前。それも加山雄三が主演の゛若大将シリーズ"の中の役」
筆者。「そやった。名前は田中邦衛。その後、♪健の字♪は、兄に遭いにきた大原麗子丹波哲郎の元に送るんじゃが、これがまた霊界の宣伝マンを自認しているだけあって、ひねくれていて、おまけに喧嘩が強いんだよ。唐獅子牡丹より数倍強くて」
ビシ。
読者。「先に飛んで」
筆者。「ところで、この辺でさっきの子供、チー坊が熱を出すんだよ。で、♪健の字♪がつきそってやるんだが、『お世話かけちゃうなあ』とか、マセガキの本領発揮で」
ビシ。
読者。「先」
筆者。「一方、炭鉱の社長、田崎潤が登場。彼は丹波に頼んでダイナマイトで炭鉱を爆破させるんじゃ。わざわざダイナマイトを使わなくても霊界パワーでもできそうなものなのに」
ビシ。
読者。「違うから。霊界の宣伝マンになる前の話だから」
筆者。「そや。で、丹波は、大掛かりな崩落をおこさせるんじゃが、人がいないと騙されてやったらしいんじゃ。ところが中に人がいて、田中邦衛が犠牲になるんじゃ。その時の怒りの言葉が次や――卑怯な男は俺だ。男は皆、勘定を払わなければいけないんだ――。な、万引きをした時の言葉やろ」
読者。「違うやろ。で、丹波はどうなるんや?」
筆者。「俺のやったことは幾つ命があっても足りねえとか言って死ぬのや。でも、大げさやな、万引きくらいで」
ビシ。
読者。「爆破の責任を取ったのや。先」
筆者。「ああ、この当りで、5才の女の子が、すでに有名俳優の嫁の座を狙っているのが見えますのや」
読者。「どこ?」
筆者。「だから、チー坊は、最初は♪健の字♪を゛小父ちゃん"と呼んでいたのに、ここでは゛お兄ちゃん"と呼んでま。一方、大して年の違わない丹波は、゛小父ちゃん"と呼んでいる」
ビシ。
読者。「だから、台詞だ」
筆者。「さよか。そう言えば、最後には結婚を諦めたらしく、♪健の字♪に対しても、お兄ちゃんまじめにやれよって、投げやりな言葉をかけまんのや」
読者。「でも、゛兄"を使っているってことは、まだ完全には諦めてないなあ」
筆者。「さいでんがな」
/

筆者。「ところで、次回は、『海へ』と佐伯監督の『昭和残侠伝』の中のどれかをやる予定」
読者。「マキノ監督はやらんのかい?」
筆者。「はいな。佐伯監督のも見たら、マキノ監督の十倍も内容が濃かったんでな。それより、『海へ』は驚いたが」
読者。「サファリ・ラリーの奴やろ?」
筆者。「そや。『南極物語』の監督・蔵原惟繕と『北の国から』の脚本家・倉本聡なので、何かやりおるだろうとは思うたが、脳みそ飛び散るくらい仰天したがな」
読者。「その先は再来週じゃな」
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もう一度よく考えてから発言させてもらいますので、政治的発言は削除しました。(外食産業の労働力不足は深刻な問題なんですが)

筆者。「来週は、最終回の一になる予定なんだけど」
読者。「やっぱね」
筆者。「何が?」
読者。「別に」
筆者。「何か良いアイデアはないか?」
読者。「そんなの自分で探せーや」
筆者。「さよか。ところで、今目の前に『ホテルビーナス』と『幸福の鐘』(監督SABU)と『レザボア・ドッグス』と『セックスと嘘とビデオテープ』のDVDがある」
読者。「ブックオフで買ってきたのを適当に並べただけやが」
筆者。「相談なんだが、どれも良いデキなので、どれかをパクろうと思うが、どれが良い?」
読者。「他人のをパクらんで、独自の路線でゆきーな」
筆者。「阿呆かお前は」
読者。「どこが?」
筆者。「目の前にあるのにパクらんやつは阿呆じゃ。それに、目の前にないものはパクれんじゃろ」
ビシ。
読者。「じゃあ、適当に投げて、一番上に落ちたものから」
筆者。「そうはいかん。最初のは剛が老骨に鞭打って韓国語を覚えて」
ビシ。
読者。「違うやろ」
筆者。「分かった。若い骨に鞭打って新しいジャンルに果敢に挑戦し、韓国進出を果たした奴や。抑えた映像が秀逸や。それから、二番目のは、会社が潰れてやくざが目の前で死んで、それから色々な出来事が走馬灯のように襲ってきてっつう作風で、わてのに一番近いような気がするし。それに、三番目のは、仲間の中の誰かが裏切り者だっつうコンセプトで、やっぱし、わてのに使えるし、それに、最後のは、ビデオで撮影しているだけの傍観者が、ある時、カメラを向けられたことで主役に変身するっつうコンセプトで、これまたわてのにぴったしやし」
読者。「わかった。じゃあ、全部少しづつパクればよいがな。どうせ、後三回くらいはやるつもりなんやろ?」
筆者。「まあな。でも、問題が」
読者。「何や?」
筆者。「三番目の奴以外は、どれも、ミステリーではないから、江戸川乱歩賞とは、真反対の方向なんや。十年も本格推理物を目指して努力してきたのに、『ごくデカ』始めてからは、筆が荒れて、一人称から三人称に平気で飛ぶようになったし、最近では脚本みたいで、ト書きまで登場してきたし」
読者。「別に問題ないがや。もともとすっごく遠いんやから」
ビシ。
筆者。「そうや。こんな方法もあるがな。所かまわず登場してきた≪読者≫をさっさと始末して新しい路線に乗りかえる」
読者。「例えば?」
筆者。「やっぱ、リアリティのあるトラベルミステリーがテレビにはなりやすいから、鷲尾いさ子とか、名取裕子とか、真野梓とかが出てくるような路線で始める。それと、この前、吉永小百合が駄洒落を言っていたのが新鮮だかったからそれも入れる。で、こういう一見頭のよい女優が」
ビシ。
読者。「喧嘩を売るな」
筆者。「仕事中はまじめだけど、プライベートになったら、駄洒落を連発するような設定にするとか」
読者。「どっちにしても、お笑い路線ですがな」
筆者。「ぐ。突然ですが、『スマート・モテリーマン講座』(武田篤典)は面白い」