『遥かなる山の呼び声』『網走番外地・望郷篇』

前回はお休みしたので、4月10日分です。

『遥かなる山の呼び声(略して、遥山)』
■出演:高倉健倍賞千恵子吉岡秀隆武田鉄矢木ノ葉のこハナ肇渥美清畑正憲
■監督:山田洋次
A。「ええと、最初に内容を説明してしまいます。北海道のド田舎で母子家庭で牧場をやっている家があって、そこに嵐の夜に不審な顔の男が泊まらせてくれと来る。普通に警戒した倍賞千恵子は、息子の吉岡秀隆に『へんな小父ちゃんだから、気をつけてね』と釘をさすが、肉体労働をしてもらうには丁度よさそうな体型なので、宿を提供する」
B。「違うだろう。同情したからだろう]
A。「はい。でも、この辺が、監督さんは苦労したところでんな」
B。「そうでしょうなあ。健さん渡世人のイメージが強過ぎて、それを壊さなきゃならないし、でも、影のある役を壊し過ぎてもいけないし」
A。「さいです。なので、『変なオジちゃん』て台詞が生きているんですな。でも、その後の吉岡秀隆の台詞は秀逸でんなあ。アドリブでしょうが、『もし変なことをしたら、僕がぶっとばしてやる』って」
B。「だから、それは、六才の時の台詞だし」
A。「やっぱり子供は大人の俳優を食いますな」
B。「まあな。で、先は?」
A。「ああ、その先は、金八先生とゴッド姉ちゃんの刺客が尋ねてきて、話を複雑にして」
B。「武田鉄矢木ノ葉のこですな」
A。「そうとも言う」
B。「だから、そっちが普通」
A。「で、この映画は最後が泣けま。滅茶苦茶泣けます」
B。「どんな?」
A。「だから、健さんは殺人犯の役で、最後には刑事が来て逮捕されてしまうんだけど、その途中の列車に倍賞千恵子ハナ肇がやってきて、聞えるように話をしますのや。『出所するまでず―――――っと待ってる』って」
B。「なかなかです」

網走番外地・望郷篇』S40年
■出演:高倉健、桜町弘子、杉浦直樹由利徹、砂塚秀夫、田中邦衛中谷一郎待田京介、八代真矢子、団景子、嵐寛寿郎田崎潤、安部徹、林田マーガレット
■監督:石井輝男
A。「前にも言いましたが、この監督さんは子供の使い方がうまいでんな。この作品の中では黒人の混血児の子供(林田マーガレット)が他を圧倒しています」
B。「演技が上手いのかいな?」
A。「いや。素人なんだけど、たどたどしさが逆に新鮮で。どんな名優も子供にはかないまへん。その点以外では、もう完全にチャンバラ映画です」
B。「え?でも、路線としては、『昭和残侠伝』よりも『仁義なき戦い』に近いんでは?」
A。「いんや。トラックやクレーンを使って現代的に港で荷揚げなんぞをしていますが、コンセプトはチャンバラです。まず、旭組の親分さん(嵐寛寿郎)。剣の達人っていう設定です。この人が敵の組に謝りに行き、敵の親分さん(安部徹)が至近距離から刀を振り下ろすんです」
B.「前回も同じようなシーンがありましたなあ」
A.「あい。今回も、斬られても、頬に浅い傷が残るだけ」
B.「今時の映画なら、耳がずるっと落ちるんやけど」
A.「それは『キューブ』。で、斬られた後、『小手先で斬るからだ。全身で斬れ』とか言って焼き物の人形を一刀両断」
B.「すると、ずるっと滑って落ちるとか」
A.「まあ、最終的にはそうなんだけど、その前に小次郎か武蔵のようなシーンがありま」
B.「どんな?」
A.「蝿斬りです。伝説です。飛んでいる蝿を斬ったが、鮮やかすぎて切られた蝿が気がつかないで、三分くらい飛んでから二つに分裂したっていうあれや」
B。「ふむ。すると、数分待って刀でトンと突ついたら落ちたとか」
A.「さいです。他の部分のストーリーはいつもと同じですが、最後に人斬りジョー(杉浦直樹)が登場するんです。が、今までの何人切りとは違って、一閃交えるだけ。でもって、健さんはすぐに倒れ、その後が映画ですな。人斬りジョーが『七針も縫や大丈夫』って言って、事務所の外に出るんです。そしてドアから十メートルも歩いて死ぬんですな」
B.「なるほど。チャンバラ映画ですな」

次回は、『野性の証明』と『冬の華』にしようかな?


来週は、『昭和探偵伝・絆(親子の絆もあるのでこちらに変更)』一回目にゆけそうなので、予告です。
これから参考にする文献、映画は以下です。
本屋さんに行って、昭和20年代の参考資料を買おうとしたら、『三丁目の夕陽』の影響か、30年代の本ばかりだったので、急遽30年代に設定を変更しました。
『昭和路地裏大博覧会』(河出書房新社
『失われた日本の風景』(同上)
『東京の激変』(ほたるの本・世界文化社
『貧乏だけど幸せ』(コロナ・ブックス)
『昭和30年代パノラマ大画報』(宝島社)
ラジオの製作SPECIAL(電子工作・ハム・BCL入門)』(電波新聞社
『電波がわかる本』(後藤尚久・オーム社
『身近な電子回路』(井上誠一・ナツメ社)
『電気の雑学辞典』(涌井良幸・貞美、日本実業出版社
『日本歴史シリーズ22・現代』(世界文化社
『昭和三十年代・路地裏パラダイス』(長谷美恵著・locomotionPublishing)
『街道を行く』(司馬遼太郎
『東京いつか見た街角』(持田晃・河出出版)
里山の道』(今森光彦・新潮社)
『スパイ・ブック』(H・キース・メルトン、朝日新聞社
『日本列島大地図館』(小学館
他、百科事典
DVD
『天国と地獄』(黒澤明監督)
犬神家の一族』(横溝正史・原作)他、金田一耕介シリーズ
『早春』他、小津安二郎作品
『銀嶺の果て』(黒澤明脚本・谷口千吉監督)
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ネタ関係での参考文献
ゲームの名は誘拐』(映画タイトルは『game』)『どちらかが彼女を殺した』(東野圭吾
『さらわれたい女』(歌野晶午
『99%の誘拐』(岡嶋二人
『光と影の誘拐』『誘拐症候群』(貫井徳郎
『誘拐の長い午後』(服部泰平)
修善寺・紅葉の誘拐ライン』(若桜木虔
映画『誘拐』

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プラス『昭和歌謡大全集』(DVD村上龍原作・篠原哲夫監督)のテンポで。

時代。昭和32年(未定)。その頃のデータ。
大卒の初任給が一万ニ千円程度。映画二番館の料金が20円から30円。東京では路面電車、トローリーバスが主流。ボンネットバス。車では「トヨペットコロナ」(千CCクラス)が発売。スバル360CC(通称てんとう虫)の発売は翌年であるが、オート三輪ダイハツミゼットが主流。テレビ(白黒)は金持ちの家にしかない。スポーツ中継主流。29年2月19日、NHK日本テレビが蔵前国技館で開催された「力道山木村政彦×シャープ兄弟」の世界タッグ選手権を二元中継。都会の街頭テレビには一万人もの人が群がる。32年ソニーから国産初のトランジスター・ラジオ(TR63)発売(一万円以上)。30年公開『力道山物語・怒涛の男』(日活、美空ひばりと競演)。31年公開『太陽の季節』『狂った果実』(日活・石原裕次郎他)。ゲルマニウムダイオード・ラジオ。トランシーバー。アマチュア無線。ニュース映画(当時の映画館数、七千軒超)。ホウロウの看板。渡辺のジュースの素。波型トタン。駄菓子屋。理髪店。


一回目の梗概
1−1。
昭和32年10月4日(未定)。ソ連人工衛星スプートニク1号、打ち上げ成功した日。
(電子工作元年として最適かと思って、この年に設定したのですが、まだ調べきれないので、変更になるかもしれません。変更になるとしたら、S39年くらいか?S39年なら東京オリンピックも開催されているし、そっちのほうが面白いかな? と悩んでおります)

夜。9時。小諸、懐古園脇の叢。
僕(15才。通称、小林少年)が死体を発見して花田兄弟を現場へ連れて行く。

1−2。
僕が駐在所に通報した後。
如月警部が死体のある現場にやってくる。現場に残る遺留品と、近くの住民の目撃情報(8時頃にヒデを見た)から、ヒデが浮かび上がる。ヒデは8時頃に来たのは認めるが、すでに殺された後で、犯人の顔は見ていないと証言。死亡推定時間は七時を挟んで1時間。

1−3。ここからガラッと変わって、狂言誘拐へ。僕は、個人的に勉強をみている細田少年(6才)の母から相談を受ける。『ゲームOR“狂言”誘拐』と書かれた狂言誘拐の指示書が投げ込まれていたというのだ。それによると、四日後に子供を誘拐する予定らしい。だが、身代金を払えば無事に帰すので心配するな、と書いてある。母親は首謀者に心当りがあると言う。夫の愛人で最近、株の失敗でクビにされた赤坂真由美。でも、四日後には子供をどこかに隠せばよいと思っている。身代金は八百万円。使い古しの千円札か5千円札が五百万あれば、不足分は無記名の有価証券でも良い。

1−4。ヒデは、駒次の紹介で一旦は唐松商事にわらじを脱ぐが、留置所に身柄を拘束される。
1−5。2日後。本当に勇気が誘拐されてしまう。



主役。小林星矢(15才)。初回の設定場所が小諸なので、一応”小諸北中学”生徒。探偵小説マニア。両親は死亡したと聞かされている。祖父母に育てられた。ニックネームは“小林少年”。好きな歌手は、祖母の影響で美空ひばり。(両親の設定は考える暇がないので、今のところ情報はなし。そのうち、登場するかも。現時点では『冬の華』{倉本聡脚本・降旗康男監督}のように、親戚で生活費を援助してくれる人がいる)
副主役。花田英次郎(通称ヒデ)。ちょっと危険な香のする渡世人
副主役。明智恭介。(ペンネーム。ヒデの兄なので、本名は花田恭介か?)
副々主役。如月(きさらぎ)警部。他
/
細田勇気(6才)誘拐される少年。
細田博次(45才)細田少年の父。(株)健康増進商事の経営者
細田真紀(35才)細田少年の母。
赤坂真由美。(40才)細田社長の愛人で、(有)生活改善商事の社長。狂言誘拐のストーリーを書いた人?
駒次。(30才)真田幸村の隠し金を探している男。ヒデの友達。(モデルは『無宿』の中の勝新
/
後半に登場するかも知れない人。
慶三。(30才)ヒデの命を狙う刺客。(モデルは『無宿』の中の刺客)
謎の老人(70過ぎ)主役がピンチになると突然現れて主役を救い、自分の推理を述べる推理マニア(『金田一耕介シリーズ』の中の加藤武のようで、すぐに「謎は解けた」と叫ぶ)
/
一回目のさわりだけ、映画風に紹介。

土の上に斬られた人間の頭部と、少し離れて胴体がある。
ヒデの足のアップ。雪駄で着流し。
死体の頭部を軽く蹴って、胴体のほうに周り、コートのポケットなどを探る。最後は周囲の叢から財布を探し出し、中身を抜き取る。
後ろから声がかかる。
恭介。「おい。そこのあんさん。今何をしたい?」(煙草を吸っている。銘柄は゛新生"か゛いこい")
ヒデ。無視。
恭介。「あんさんは浮浪者かい? 殺されなすったお人の金を盗むなんて」
ヒデ。無視して歩き去ろうとする。
恭介。「浮浪者なら、大目にみようって考えも起こるが、あんさんもいっぱしのお兄さんだろうが。恥かしいぜ」(ここは、『昭和残侠伝・唐獅子仁義』の中の健さんのように、巻き舌で)
ヒデ。「その、いっぱしのお兄さんに万引きの罪を被ってもらって、大学校へ進学したのは、一体、どこのりっぱなお兄さんだろうね?」(こっちも巻き舌で)
恭介。「おい。そのことは言うなと言ったろう。もう十年以上も前の話だ」
ヒデ。「過去を簡単に忘れられる男は羨ましいぜ」
恭介。「だから、あの時は、オメーにも責任があるんだぜ。確かに受験のストレスで万引きしたのは俺だが、おメーが勝手に俺の罪を引きうけて、警察に出頭して、取調べ中に大立回りを演じたからいけないんだろうが。俺は、探偵になろうと思っていたから、別に大学に行けなくても良かったのによう。それに、いずれは素直に謝ろうと思っていたのによう」

(これは花田兄弟の過去。兄は無事に大学を卒業し、刑事になり、警部にまでなったが、汚職事件があり、引責退職して、今は探偵稼業にせいをだしている)
(あるドラマのネタを頂きました。脳みその足りない教師の出るドラマです。サンクスです。他にも二人で一人前のデカとか、XX日報の記者探偵とか、食べてるばかりの探偵とか、駄洒落デカのネタもいただきました。そのうち使わせてもらう予定です)

作者注・以上の設定、名称は全てフィクションであり、現実の名称とは何の関係もありません。