『47人の刺客』『幸福の黄色いハンカチ』

5月8日分です。

『47人の刺客』
監督・市川昆(パソコンにはないのですが、昆は、上に山のつく字)
出演・高倉健大石内蔵助)、中井貴一(色部又四郎)、西村晃吉良上野介)、石坂浩二柳沢吉保)、宮沢りえ、岩城晃一(晃はさんずい有)、宇崎竜童、松村達雄、井川比佐志、山本学神山繁黒木瞳清水美砂、小手川裕子、石倉三郎石橋蓮司、尾藤イサオ橋爪淳尾上丑之助、佐藤B作、横山道代今井雅之小林稔侍、坂東英二中村敦夫浅丘ルリ子森繁久彌
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内容・12月14日になると必ずテレビでやる有名な討ち入りの話。内容を知らない人のために、簡単に説明。
江戸時代、幕府には毎年公家がやってくるんで、それを接待する役があったんだよ。各藩の持ちまわりでね。
でも、武士はお茶やお花やカルタくらいはやるけど、花札も蹴鞠もグルメ料理を堪能することもやらないから、それらを指導する役がいたんだよね。それが高家といって、公家の子孫で、代々吉良家がやっていたんだよね。
今で言えば、高級ワインやドンペリのロゼを用意させたり、キャビアやフォアグラを取り寄せたりさせて、公家のご機嫌を損ねないように指導するんだよね。
で、この話で登場するのが、吉良の爺さん・吉良上野介(読み方はキラ・コウズケノスケ)。
歌舞伎などの通説によると、賄賂を渡さなかった浅野内匠頭(アサノ・タクミノカミ)に意地悪をしたんで、浅野の兄ちゃんは、殿中で切れて、吉良の爺さんに斬りかかった。
でもって、この後に幕府が喧嘩両成敗をすれば問題はなかったんだけど、浅野家だけが取り潰しで、吉良家はお咎めなしだったんで、一年九月後、浅野家の家老の大石内蔵助オオイシ・クラノスケ)と49人が吉良家に討ち入りをして復讐をはたした。
で、その間、なんで、討ち入りの秘密工作が漏れなかったかというと、大石君が阿呆のマネをして、芸者遊びとかして世間の眼をくらましていたから。
歴史小説好きの人間は、この説でないと駄目なんだよね。
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でも、よーく考えると、これは、あくまでも実際の事件の六十年後、近松門左衛門が勝手に作り出したストーリーなんだよね。
もっと色々な説があってもいいんだよね。
でもって、この監督さんの説なんだけど、刃傷事件を起した二人が原因を言わないから、討ち入りの名目として、勝手に原因を作ってしまえ。それを噂でながしてしまえ、っていう物。
これは、面白かったねえ。現代の情報戦とそっくりで、火のない所に煙を立たせたんだよ。もしこの説が本当なら大石は天才だね。
もうちょっと深くストーリーを説明すると、幕府では、柳沢吉保と上杉家の色部又四郎の派閥が権力をもっていて、浅野の属する一派を妥当しようと企てていた。(この辺の事情があるから、浅野君も吉良の爺さんも原因を言わなかったのではないか?)
そこで、浅野君だけを切腹にして浅野家だけを断絶にした。
しかし、こんな片手落ちの処理をすれば、浅野家の家来から反感を買うのは当然。大石君は、先ほどの噂を流すのに千両の銀を使って、民衆を味方につけ、討ち入りの時の協力をとりつけた。
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この他にも、こんなのがあったら面白いと、私の思い付いたアイデア――浅野君は十数年前に一度接待役をやっているんだよ。だから、吉良ちゃんとは仲が良かった。でも、毎年毎年の行事で吉良の爺さんは少し退屈していた。そこで、浅野と賭をした。殿中で刃傷に及んだら、どうなるか?――。
これはかなり冒険的な説だと思うけど、吉良の爺さんは、老齢で策士だったし、若い浅野君は、高家の爺さんから頼まれたら断れないだろうし。
大体、大奥への扉の前で事がおき、浅野君を取り押さえたのが大奥取締役の梶川ヨソベエっておっさんで、傷が額にチピッとついただけ。
この事実からして、大奥の連中の退屈しのぎに、”狂言刃傷”をしたと考えても良いと思うんだよね。
つまり、大奥の連中にも話して、賭をさせていたんじゃないかと想う。ただし、梶川君には内緒で。
でも、それが予想外の顛末になった。つまり、周りに頭の硬い連中しかいなくて、おまけに柳沢吉保の陰謀に利用されて、お家断絶なんてことになってしまったとも思える。
でも、この説の場合、浅野君は吉良の爺さんとは仲が良いんだから、切腹をしたのは替え玉で、浅野君自身は、上州藩にでもかくまわれて、こっそりと事件の顛末を記録していたとかね。
当然、最後に殺された吉良の爺さんも替え玉で、二人は、事件の後、俳諧師・松雄芭蕉と弟子にでもなって、全国行脚にでたとか(時代が違うか?)。
でも、この説だと、一つだけ説明のつくことがあるんだよね。それは、狙われていると知っていて、吉良の爺さんが三回も茶会を催したことなんだよね。
いいかえると、こういう事。
刃傷事件を起した後、吉良の爺さんと浅野君(生きている)は、事が大きくなりすぎて困った。
何とか収集しなきゃいけない。でも、ヤクザみたいに手打ちに応じる相手ではない。絶対に勝って、爺さんの首を獲らなきゃ、満足しない。世間も許さない。
そこで、爺さんは恥を忍んで、その方向で収集しようと決めた。で、わざとらしく、茶会を持った。
一回目、二回目、まだ襲ってこない。金がかかって困るんだけど、三回目はもっと派手に茶会をやって、警備を薄くして、高額でどこぞの浪人を替え玉として雇って待った。
そしたら、ようやく襲ってくれた。で、爺さんと浅野君は、隣の上杉家から見物していた。
討ち入りの時、上杉家から、「我が藩は吉良家に応援をしない」というメッセージが送られてきたんだけど、これは、牽制の意味もある。つまり、”自分の藩は吉良家に加担はしない、だから、我が屋敷にも襲ってこないでくれ”ってね。
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ところで、最近思う、また別の説。刃傷沙汰に関しては特にないが、大石に関して。
大石って、普通は”鉄人28号”みたいに強くて頭脳明晰みたいに言われているけど、本当にそうだったのかなあって。本当は、もっと神経の細い男で、お家断絶なんつう劇的な変化に撒きこまれて、ノイローゼになってしまったかもしれないじゃないか。
あるいは、うつ病で朝から鎮痛剤と焼酎を飲まないと偏頭痛や幻聴なんかがして生活ができなくなってしまったじゃないか。あるいは、ストレス性の膀胱炎になってしまったかもしれないし。
でも、世間の人間は刺激やドラマを求めているから、きっと討ち入りをしてくれるはずだ、と期待ばかりが膨らんで、やらなきゃひっこみが付かなくなってしまって、しょうがない、決行したんだと思うんだよね。
でもさあ、ここで大問題があるんだよね。
言うまでもなく、実際に自分の体は鬱状態であり、自分で支配することができないんだよ。歩いていて急に幻覚が現れたりしてね。
でも、妻は「あまったれた事をぬかすんじゃないわよ。あんたがやらなきゃ誰がやるの。井戸の水でもかぶって頭を冷やしな」と言って取り合ってくれなかったかも。(この時代、武士の妻は武士と同じ教育をうけただろうから)
で、しょうがなくて、遊郭へいって、金をはらって、良い子良い子してもらって、弱気を払拭したんではないか?
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現代で言えば、オーナー社長の娘と結婚して、その社長が急死してしまった。(どうも敵会社の人間の毒殺らしい)。
そこで、自分は、まずは自社の派閥争いに勝って会社の業績をあげなければならない、同時に敵会社のスパイを洗い出して証拠をあげ、敵会社に闘いをしかけなければならない。そんな状況になってしまった。
でも、現実問題として、自分は神経が細くて、幻聴や幻覚が始まり、とうてい戦いのできる身体状況ではない。
でも、妻は、「あまったれたことを抜かすんじゃないわよ。あんたがやらないなら離婚するだけよ。代わりはいくらでもいるの。水道の水でもかぶって頭を冷やしな」と取り合ってくれない。
で、しょうがなく、メイド喫茶なんかにいって、「モエの元へお帰りなさい、ご主人様」なんていう声をかけてもらって、精神の回復を待った。だから反撃まで一年九月もかかってしまった。
そんな感じじゃないかとも思うんだよね。

他にも”討ち入りは甲府宰相・綱豊の書いた筋書き”って説も有る。私の師匠の若桜木先生の『忍術忠臣蔵』がそう。
(タイトルはうろ覚えでご免なさい。版権切れで電子出版のbooklandに入っていると思うけど)。
ついでに、私の前の作品も暇になったらそこに移そうと思っているのだけど。(前は、Esbookで買い物をしたばかりだったので、間違えてそっちを出したような気がする)

歴史用語の表記は小学館版の『江戸時代新聞』を参考にしました。著者は大石学(蔵助ちゃんの子孫?)
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幸福の黄色いハンカチ
監督・山田洋次
出演・高倉健、武田鉄也、桃井かおり倍賞千恵子渥美清たこ八郎、赤塚真人

内容・出所してきた健さんが、武田鉄也と桃井かおりに出会って、夕張まで送ってもらう話。
健さんは、元妻に『今でも待っているのなら、黄色いハンカチを家の外に出しておいてくれ』と手紙を出すんだけど、素直に夕張まで行けないんだよね。
前科ものの自分を待っていてくれるはずがないっていう気持ちが強くて。でも、最後に桃井かおりに、「もし相手が待っていてくれたら、失礼じゃん」と意見をされて、勇気を出して行くんだよね。

なんでこの作品を今週出したかというと、言うまでもなく、今の私の心境だから。
つまり、憧れの人の周囲を巡って、前に進もうか、それとも、ちゃんと小説を書き上げてからお話しないと失礼になるんじゃないか、と悩んでいる状態なのです。
この前、うっかりある場所で「健さんに監督さんを頼みたいので電話したい」ともらしたら、その情報が元で、ネットの中が”電車男”状態になっているのだけど、実際問題として、私の周りでは私がブログで小説を書いていることすら知らない人の方が多いし。うちの家族すら知らない。
となると、健さんが、私を知っているかどうかも心配だし……。
それに、何より気になっているは、健さんが私より二十以上も年上だって点(もし、このブログを読んでいたら、ごめん健さん。年を出しちゃって)。
50才の私でもいきなり電話で会いたいと言われるのは戸惑う。やっぱり、最初は手紙からだと思うんだよね。
私なんか特に、電話のベルで感情の流れを中断されると先が書けなくなるほうだから、昼間は電話のベルの聞えない部屋で書いているんだよね。
健さんの『旅の途中』を読んでもそうだけど、50才以上は、なんとなく、手紙世代っちゅう気がするんだよね。

それにそれに、一番の問題は、作品が気に入られないと駄目だし。
まあ、トリックは、推理小説を二千冊くらい読んでいるので、恥かしくないとはおもうけど。
でも、もっと練り直してから贈ったほうが、とも想っているし。何しろまだ殺人事件の場面まで行っていないんだから。
おまけに、今ちょっと後悔している点があって。
それは、前回の『冬の華』の改造作品なんだけど、落ち着いて読んだから、あれを『冬の華2006』とかにして仕上げたほうが良かったんじゃないか?ってこと。
ま、色々と悩んでいるんですが、いずれにしても、住所録が届かないことには先へ進めないんだけど。
そんでもって、そんな状態でいるのが一番幸せなんだけど(ほっほっほ)。そうなんだよね。『黄色いハンカチ』の中で、健さんが夕張の周囲をぐるぐる回っている時の気持ちなんだよね。
だから、最初は手紙かな?
なんてことを書いておいていきなり電話、なんて手もあるけど、多分、それは絶対にないから。嘘じゃないから。
ああ、もう、今まで嘘をつきすぎてきたから、全然説得力のない文章になってしまった。
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次回は、『新幹線爆破』と関連作品をいくつか紹介。(スピード、暴走機関車交渉人真下正義)
『夜叉』とか『君よ憤怒の河を渉れ』もやりたいけど、次々回かな?
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新冷麺開発プロジェクト。
今回は時間がなかったので、一つだけ。
前回、アタリメの付け合わせ味(醤油マヨ)がおいしいと書いたけど、友達から「しょっぱすぎるのでは?」とコメントがあったので、再度試食してみました。確かに、その通り。前回は、舐める程度の試食だったので、ちょっといい加減だったかな?
で、反省して、改造を考えてみました。
塩味とうまみがあって、冷麺にあうとしたら……、と考えて、とりあえず試食したのが”瓶詰なめたけ”
これは、『昭和探偵伝・絆』の舞台が長野だったので想い付いた訳で。
これは、イケる。マヨと混ぜなくても、多めの”瓶詰なめたけ”を乗せただけで、充分イケる。