『佐賀のがばいばあちゃん』『インサイド・マン』

今週は、まだマンガの用意ができていないので、映画の紹介をします。
佐賀のがばいばあちゃん
監督・倉内均
出演・吉行和子浅田美代子緒形拳三宅裕司島田紳助島田洋八山本太郎工藤夕貴
内容・B&B島田洋七・原作の同名小説の映画化です。主人公は小学校の低学年なのかな? とにかく泣き虫で、夜の商売(飲み屋の女将)をやっている母親の元へ毎日現れては、商売の邪魔をしています。
なので洋七は、佐賀のおばあちゃんの家に預けられます。この辺が涙涙なんですが、子供ですから、すぐに順応して、7人の子供を女手一つで育てたばあちゃんの行き方に洗脳されて、逞しくそだってゆきます。
昭和32年の設定で、まだまだ社会全体が貧しい時代ですから、貧乏なんて当たり前で、野球もグローブやベースなしで、けっこう楽しんでやっています。
ばあちゃんの家は収入も少なく、特に貧乏で、お弁当のおかずも梅干だけ。でも、運動会の時は先生がそっと豪華なお弁当をくれたりして(この辺のさりげないやさしさは感動ですね。見て下さい)、貧しい中にも周囲の温かい情が感じられますねえ。
でもって、主人公はちょっとアホな少年なので(多分、これは、デフォルメだと思いますが)、母親が尋ねてきてくれないことをくよくよ悩んでリストカットすることもなく、おばあちゃんの屁理屈を素直に信じて、すくすくと育ってゆきます。
おばあちゃん独特の屁理屈が良いですねえ――「夕飯は?」「昨日、食べたやろ」。「線路をまっすぐ行ったら、広島に行けるのか?」「駄目じゃ。冬は汽車が走っておらん」「なるほど」。「なぜうちは貧乏なんや?」「貧乏には暗い貧乏と明るい貧乏がある。うちは明るい貧乏やさかい、お前の将来は明るい」(そうか。俺の将来は明るいんや)などなど――。
最後は母親の元へ帰るんで、また涙涙の別れなんですが、観客の泣き所を押さえた幕切れになっています。
感想・まだ物がなく、世の中全体は貧乏なんだけど、心の豊かさだけは有り余るほどあった時代。懐かしいですねえ。
あの頃は、エビフライやウインナなんか食べられなくても平気でしたね。皆そうでしたから。その辺の葉っぱを天ぷらにして食べたり、キュウリは、井戸水で冷やして味噌で食べたりしていました。でも、無農薬で、今考えると、田舎ならではの贅沢さでした。その辺の雰囲気が実に良く滲みでていますねえ。
特に感動した言葉は次――貧乏ならば、転んで服を汚す心配もない。雨の日でも安心して外出できる。金があれば、綺麗な服を汚さないかと心配したり、金を盗まれないかと心配して家中にカギをかけたりしなきゃならない。いくら金があっても、足りなくなる――。
確かにその通りですねえ。都会に出て商売なんぞを始めると、従業員と自分の家の給料を確保するために色々とせにゃなりまへん。有名店の味を盗むため、1日に数軒ものラーメン店を食べ歩いたり、仕入れ業者に1円でも安く入れるように交渉したりとか、体に良くないこともしなきゃなりまへん。
そんなストレス社会で、ふっと息抜きをしたくなったときに見ると、心がほっかりと温かくなる映画です。なんと言ったら良いのかなあ。
「疲れたら少し休めば? 貧乏時代のことを思い出し、何もかも忘れてぼーっとしてみれば、また元気がでてくるさ」と肩を叩かれたような感じです。
私も、この映画で元気をもらったので、また前のペースでアップしてゆけそうです。

インサイド・マン
監督・スパイク・リー
脚本・ラッセル・ジェウィルス
製作・ブライアン・グレイザー
出演・デンゼル・ワシントン(主役の刑事)、クライブ・オーウエン(犯人側の主役)、ジョディ・フォスター(人生の裏街道を歩いて来た弁護士にして交渉人)、クリストファー・プラマー(襲われる銀行の会長)、ウイレム・デフォー、キウエテル・イジョフォー、カルロス・アンダース・ゴメス、キム・デイレクター、ジェームス・ランソン、ピーター・ジェレディ

内容・マンハッタンの銀行に4人組の銀行強盗が押し入る。約50人を人質に取って、立てこもる。人質には自分たちと同じツナギを着せ、マスクをさせたので、包囲した警察官たちからは、誰が犯人なのかわからない。
捜査主任であるキース(デンゼル・ワシントン)は、まず犯人が誰か、どの部屋にいるかを特定するために、差し入れのピザに盗聴機をしかけて、中に運ぶ。しかし、敵のほうが頭が良く、盗聴機から聞えてきたのは、どこかの辺鄙な国の言葉。これを調べるのにも時間がかかるが、結果は、アルバニア語で、昔の大統領の演説のテープ。
さらに、敵は、人質に要求を書いたボードを持たせて送り出してくる。そこには、ジャンボジェット機を要求するなど、すぐにはかなえられない文句が書かれている。それに、普通は何時間以内に要求を飲まないと人質を一人づつ殺したりするものだが、その言葉もない。
キースは、自ら銀行に乗りこんで敵の真意を探ろうとするが、相手は、こちらの手には乗らない。
一方、銀行の会長のケイス(クリストファー・プラマー〉は、昔の悪事の証拠を自分の銀行の貸し金庫に隠してあり、それを、誰にも知られずに回収するために、マデリーン(ジョデイ・フォスター)を雇う。彼女は市長に貸しがあり、強引に人質に会う許可を取らせ、勝手に交渉する。そこで、自分が回収すべき悪事の証拠はすでに銀行強盗のボスの手の中にあることを知る。で、法外な額の金で事件を隠蔽するので、それをこっそり持ち出して欲しいと頼む。
どうやら、銀行強盗の目的はこの悪事の証拠書類だったらしい。
まあ、そこまでは分かったが、問題は脱出方法である。それは、あっと驚く方法が待ちうけているので、ここでは言えません。
それに、犯人は頭が良いので、盗聴されたら、盗聴し返したりと、次から次とドンデン返し的な作戦を打ち出してきて、観客としては驚きの連続です。
で、最後はまんまと脱出して、犯人にとってはめでたしめでたしとなるのですが。この犯人、ちょっと正義感があるので、主役のキースに色々と情報をくれます。これもドンデン返しの一つなので、見て下さい。
感想・メチャメチャ良く出来た脚本ですねえ。人質に自分たちと同じ服装をさせるのからして、今までの銀行強盗物の枠を、軽くブチ破っているのですが、ト中の盗聴の応酬とか、最後の脱出方法とか。目から鱗です。
それから、途中の盗聴の応酬も面白いですねえ。たとえば、倒れた振りをして敵の車に乗りこんで、こっそりしかけたら、どうなるかしら?そしたら、面白いですねえ。敵が盗聴機のスイッチを入れたとたんに、自分たちの会話が流れたりして。とにかく、この中でもこちらが踏みこむのが筒抜けで、爆弾をしかけられたりするんです。警察に怪我人がでないのが不思議。盗聴盗撮はやばいです。