『ゲド戦記』『アキハバラ@DEEP』『ことの終わり』

ゲド戦記ジブリ作品
監督・宮崎吾朗
声・岡田准一、手しま(鳥の上に山のある字)葵、田中裕子、香川照之風吹ジュン内藤剛志倍賞美津子夏川結衣小林薫菅原文太
内容・内容は、もう何回も宣伝で伝えられているので、感想と一緒に。
感想・大々々ヒットだよね。これだけヒットしたのなら、少しくらいバッシングしても問題ないよね? ストーリー的には、おおむね感動して、泣いたんだけど、ほんの少し不満がね。これが、ヒットぎりぎりの状態だったら、怖くてバッシングなんかできないもんね。逆にいえば、愛情だから。(自己弁護かな?)
 まず、タイトルがゲドなのに、主人公がゲドじゃないってのが、戸惑ったかな? ゲドは、40過ぎのオジさんで、主人公の名前はアレン。そんでもって、アレンは、父親殺しの原罪を背負っているのに、顔がちょっと平凡なのが気になったかな? 平凡と言えば、幼児虐待の過去を持ち、龍の産まれかわり(?)のテルーの顔も、ちょっと綺麗すぎたかな? 醜い痣があると言っているのに、絵では、少しピンクになっているだけで、お化粧だと思えるくらい。
 例えばの話しだけど、怒った時には瞳の中に龍の形の炎が燃えたりすると、もう少しファンタジー感が出るかね? でも、主人公たちの顔が綺麗でないとヒットしないのかな? ジブリが積み上げてきた経験上そうだとかね。
 まあ、作品全体の出来が良いから許すとしようか? どこが感動した、と具体的に言えないのだけど、やはり、全体のトーンかなあ? なんか、『ナウシカ』の時の「未完成だけど意欲だけはあるさ」って意気込んでいる感じ、あれをまた見た感じ。
 宮崎駿君のDNAだと、感じたわ。
 でも、何となく残る未消化感は、何だろう? 多分、難しすぎる原作を選んだからだと思うのよね。
 ジブリでは、昔からこれをやりたかったらしいので、きっと、深ー―い思い入れがあるんだろうけど、スリルとサスペンスの連続に慣れすぎた私たちからすれば、もっと、単純なほうが、感情移入しやすいかな?
 それと、平和に種まきとかしているシーンをもっと短くするとか、魔女から普通のまじない士になった女のシーンをもっとカットするとか、まあ、小説家はより面白い方向を考えますが、初監督だもんな。上出来だよな。最初に、もっとヒットしてしまうと、上昇思考がなくなるからな。
 とか言って、自分を弁護してるし。
 個別に言うと、クモが良かったな。攻撃性がないとか、そんなことはどうでもよくて、全体の印象が、何となくね。
 あとは、主題歌が良かったかな? 主題歌と、”見えぬものこそ”のフレーズの入った予告編の勝利かな?
 もう、あの主題歌を聞いただけで、泣けてくるもんねえ。
 それから、できれば映画館でみたほうが良いと思うよ。建物が倒れてくるシーンとか、圧巻だから。
 にしても、すごーーく気合が入っているのに、どこか、肩の力が抜けている感触。宮崎吾朗君て、よく分からない人だよね。



アキハバラ@DEEP』(本)
石田衣良原作
 ご免、これは、事情があって見に行けなかったので、原作本だけの感想。
 内容は、三人のオタクが、グーグルを超えるサーチエンジン――この前私が中国の時に紹介した奴ね――を開発し、それを巡ってネット界の悪の帝王と闘う話。すっごく詳しく業界用語を調べてあって、薀蓄豊富。
 感想・石田衣良といえば、超売れっ子で、有名だよね。だから、少しくらいバッシングしても大丈夫だよね。これが、ヒットぎりぎりの作家だと問題だけど(どっかで同じこと言わなかったか?)。
 この人って、文系だよねえ。文系の人が、理系のオタク小説を書くと、ちょっと、違和感が残るのよね。何だろうね?
 オタク小説=オバカ小説だよねえ。そこはかとなく”壊れている”のが良いのよね。(小説がって意味だよ)
 オバカというのは、業界では文句なしの誉め言葉だからね。念のため。
 ”壊れている”をもう少し説明すると、例えば、連ドラの『誰よりも妻(ママだったかな?)を愛す』の最初の回で、驚く度に口からご飯を吹き出すみたいな感じ。つまり、「そんなのありかよ〜」って叫びたくなる印象ね。
 で、文系の人が、文系のオタク小説を書くときは、安心してオバカになれるけど、畑違いの(理系の)オタク小説を書くときは、必死でがんばるから、オバカになれないんだろうね。だから、『アキハバラ』は、内容は優れているんだけど、壊れ方が今一って感じかな?(愛情からでた言葉だからね。本当は愛しているから)
 そこへ行くと、マンガだけど、『月館の殺人』(綾辻行人原作、佐々木倫子絵)は、立派に壊れているよね。最初はまともだけど、下巻になると、どうしようもなく壊れているよね(これは、最上級の誉め言葉だからね。あ、最大級かな? 両方とも、とってもとっても好きだから)
 二人とも、以前の作品が超ド級のヒットだったから、すんごいすんごいプレッシャーだったんだろうね。それで、必然的に壊れたんだろうね。でも、今の出版不況を乗り切るには、これくらい壊れないとダメだよね。自分を地に叩きつけるくらいでないと。
 ブログでも、切実に感じるわ。そこまで堕とさなくてもってくらい自分を堕とさないとね。
 で、『アキラバラ』に戻って。原作は漢字と文字をもう少し減らして空白を多くしてもらえると嬉しいんだけど(ゲ! 自分もそうだし)、映画になると、監督の腕だから、きっと別な味付けがしてあると思うわ。メイド服のアキラちゃんがちょっと良さげだし。漢字もないだろうし(当たり前か)。

 それから、先週の続き。グーグル並のサーチエンジンで広告料を稼ごうって話だけど、パソコン教室の先生に相談したら、「gooも他の会社も、グーグルから有料でソフトを貸与してもらって利益をあげているから、それをマネしたら?」と簡単に言われてしまったわ。
 そんでもって、私が「占でグーグルのトップに来るようにしたいから、モデルとなるサイトはないかしら?」と聞いたら、やっぱり、「gooやYahooのポータルサイトがそうだから、マネしたら」と、また簡単に言われてしまったわ。そう言えば、そうよね。リンク張りまくりだもんね。毎日何十回も見ていて気がつかないなんて、ね。
 それから、サーチエンジンで言えば、グーグルより効果的に目的の情報を手に入れるには、『いきなり情報通』(ソースネクスト)ってソフトがあるらしいわ。1980円で手に入るらしいから、現実の方がずっと先に進んでいるってことね。
 さらに、動画専門サイトも急速に増えていて、そこへ宣伝を載せるのは、普通のブログで宣伝するよりもずっと効果的なのだとか。技術の進歩は早過ぎて、ついてゆけないわ。嫌な世の中よね。

 ところで、見に行けなかったと言えば、『花田少年史』も。見た人によると、アニメの『花田』から、アニメっぽさを抜いた印象なんだとか。当たり前か? ほのぼのさは、そのままってことかな? 脱力感に浸りたい人向き。

★★★連載広告★★★★★★★★★★★★★★★★
★『中伊豆・黄金崎・紅葉狩りの殺人』実業之日本社
★著者・若桜木虔

、この前の続き、トリックを聞きたいわ。どうやって、完全犯罪をものにしたか? つまり、百キロ以上の道のりをどうやって一時間で往復できたか?★
★A・ああ。それは、替え玉を使ったの。容疑者には二組の夫婦がおるんやけど、殺したい奴が細くて小さかったから、片方の夫婦が、XXにいれて運んだように装って、その間に、神林夫が運んだのや。道路以外の場所を走れる乗り物で★
★B・そこまで言ってしもうて良いのか?★
★A・さあな? ダメでももう遅いわ。それより、この偽装は参考になったわ。今度、わても尾行を捲く時には使おうと思ってるんや★
★B・どうやって?★
★A・だから、まず自分の入れるくらいのスーツケースを買って、その中に入るんや★
★B・相当に大きいのでないとあかんな。つうかネタバレしてるし★
★A・うるさい。で、電動のコロをつけて、中から無線で動かせるようにして、さらに、自分と同じサイズのロボットも買って、そいつに自分の服を着せて一緒に家を出て、途中で分かれる。すると、尾行はそっちに付いて行くだろうから、自分はスーツケースを運転して、誰もいなくなったところで外に出るんや。勿論、中から開けれるようにせにゃいかん★
★B・一体、何百万かかるんや?★
★A・さあなあ、地球一周するくらいはかかるかな?★
★B・それに、スーツケースが自動で動いていたら、そっちの方が注目されてしまうわ★
★A・そうかあ。じゃあ、また別の方法を考えんといけんなあ★
★★★広告でした★★続く★★★★★★★★★★★★★★

『ことの終わり』(映画)1999年イギリス作品だから、リバイバル
上映が終わってしまってから紹介するのも何だけど、最近、無意識に選ぶと、なぜか不倫映画を選んでいるのね。DVDが発売されるだろうから、その時の参考にしてね。
原作・グレアム・グリーンの『情事の終わり』
監督・『クライング・ゲーム』のニール・ジョーダン
出演・『イングリッシュ・ペイシェント』のレイフ・ファインズジュリアン・ムーア
内容・第二次大戦中の、ロンドンで、小説家が政府高官の妻・サラ(めちゃめちゃ美人で細身)に恋をして、振られるのね。その理由をサラは言わないんだけど、どうも、爆撃されて死亡した(とサラは思った)時に、神に「私はこの人と別れますから命を助けてください。最悪、私の命と引き換えでも良いです」って頼んだらしいの。それが聞き入れられて、彼は再生したんだけど、今度は、サラのほうが重病になって、死ぬの。
 で、死ぬまでの間、政府高官と友達である小説家は一緒に看病するの。でも、サラは死ぬの。
感想1・ 当然ざーますだわよね。美人で細いっていうだけで、二人の浮気相手と散々楽しんだんだから。
 元へ。品性を疑われるような言葉は使ってはいけないわ。美人薄命の運命だったのよ。お悔やみ申しあげるわ。
感想2・早い話が浮気性の女の話だよね。一人の浮気相手と二年とは続かないんだから。でも、美人で細いと男は本気で嫉妬して後を追いまわすのね。やっぱり、痩せないとね。 それから、目の下のたるみや目尻のしわは、成形手術で取らないとね。ついでに、お腹の脂肪も、脂肪吸引でとってもらおうかしら?
 もてるためにもお金がかかるわ。嫌な世の中ね。あ、太ってしまった私が悪いのか? 反省。
 グレアム・グリーンについて少し説明するわ。この人は、海の向こうではすごく有名な作家。『第三の男』とか色々映画化されているんだって。でも、一番高い評価を受けたのは、『権力と栄光』で、これは、カソリックの神父が美しい女のせいで、転向する話よ。遠藤周作の『沈黙』とそっくり。人間とは何か? 存在とは何か? 神とは何か?と究極まで問い詰める話。
 でもって、人間、究極まで問い詰めると、普通は”壊れる”の。遠藤周作も、『沈黙』の後は、通俗エッセイ『狐狸庵先生』に走ったの。そっちは、小説以上の話題だったわね。
 だから、グレアム・グリーンも、『情事の終わり』は、通俗浮気小説にすればもっとヒットしたと思うの。それが、彼は、いつまで経っても神から脱却できなかったのね。
『情事の終わり』の中でも、随所に神が出てくるし、浮気性の人妻が最後に浮気をした相手は神父で、これは、神の否定を意味しているんだろうけど、これじゃあ、恋愛小説はつまらないのよね。
 恋愛小説で、一番涙を誘う終わり方は、『マディソン郡の橋』の雨の中の別れだと思うわ。これも人妻とカメラマンの浮気の話なんだけど、最後に、クリント・イーストウッドが、真剣に「駆け落ちしよう」って言って、人妻を待っているのね。その前を、家族を捨てられないと決心した人妻が、泣きながら車で通りすぎるの。
 この時のクリント・イーストウッドの恨みがましい表情が最高なの。あの表情をみたら、普通の女だったら、絶対駆け落ちすると思うんだけど。いや、その場で道路上に押し倒して服を剥ぐかな? ああ、ダメだわ。最近、思考が、とっても偏ったほうに走っているわね。
 『情事の終わり』に戻すわ。
 どうも、評論家さんは、サラの「私は生涯であなたしか愛さないわ」って言葉を真実だと思っている節があるわね。皆、パンフレットでは至高の純愛とか書いているし。
 でも、女って、普通、浮気でもそう言うよね。たとえ、三股でも、その相手と会っているときは、そう思わないと、楽しめないもんね。待って。私、今、すごいまずいことを言った? 訂正するわ。私に限って言えば、純粋よ。本当に。
 で、信じてもらったところで、サラの性格分析にゆくけど、与謝野晶子に似ているんだと思うわ。彼女も僧侶とかに惚れたでしょ? 手に入らないと無性に欲しくなるの。でも、美人で細い女の場合は、簡単に欲しい相手が手に入るけど、そうでない場合はどうするか? 体でぶつかって、その体験を小説にするの。つまり、男は芸のこやしね。これもけっこう惹かれる生き方だわ。え? また失言した? 再度訂正。私に限ってそんなことはないから。

『アイランド』DVD
監督・マイケル・ベイ
出演・ユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンセン
内容・宣伝されていたから喋ってしまっても良いと思うけど、クローンの話。自分たちが、臓器移植用のクローンだと知って、巨大工場から逃げ出し、地上で戦う話。
 トム・リンカーンは、地上が汚染されていると信じて地下都市で暮らしているんだけど、ある日、どこかから舞いこんできた昆虫を見て、不審を抱いて、上の階に行って、自分がクローンであることを知るの。そこで、サラと一緒に地下都市を逃げ出して、地上に行くの。そこで、地下にいたときにもらったマッチを手がかりに”人間”の友達を探し、さらに、自分と同じDNAを持つ人間=発注者を探して行くの。
 でも、発注者はクローンを人間だとは認めないから、工場に返却しようとし、トムとサラは殺されそうになるの。で、中学生くらいの知能しか与えられていないはずなのに、DNAの設計ミスで、いつの間にか天才的な知能を獲得していて、初見でハイテク・バイクを操縦したり、警察を騙して、「自分が人間だ」と思わせて、発注者を殺させたりするの。
 で、最後は工場を破壊するために乗り込むの。
感想・最初の地下都市のシーンが長くて、最初はちょっと……だったけど、地上に出た所から面白くなったわ。爆破も大掛かりだし、ビルのガラスを割って飛び出すシーンも、『マトリックス』並だし、けっこうカタルシスね。
 ちょっと思ったんだけど、もし続編をつくるんなら、こんな感じはどうかしら?
 ――サラの発注者は重病で心臓移植を望んでいて、脳もかなりダメージを受けているの。続編では、その両方を移植し終わったところから始まるのね。
 で、発注者の方は元気になり、クローンのほうは、普通は死ぬんだけど、今回は、サラの夫が、「サラとの記憶がなくなってしまうのは耐えがたいので、病気の脳と心臓を保存して欲しい」と要望して、クローンの体の中に移植されるの。
 すると、どういう訳か、クローンのほうも元気になってしまうのね。それは、発注者が、大金持ちで、麻薬やタバコを大量摂取していて、血液がどろどろだったから、重病になっていたのね。でもって、クローンはどっちもやらないし、細胞も若いからなのね。
 で、クローンには、人間・サラの記憶があるので、夫は、クローンのほうを好きになってしまうの。それを、発注者が巨大悪の組織を雇って殺そうとするの。
 そんでもって、発注者の脳みそも(設計ミスで)天才的な発達をとげるクローンの物だから、ビデオの32倍速くらいのスピードで、クローンの脳から自分の記憶を学んでゆくの。
 でもって、トムの方も、第1話で発注者は撃たれて死ぬんだけど、また別のクローン工場があって、そこのクローンから心臓を移植してもらって(何しろ発注者は大金持ちだから、あちこちにクローンを発注してあるのね)、クローンのトムを追撃して殺そうとするの。
 すると、どうなるか?
 人間のサラ&トム対クローンのサラ&トムの戦いになるのね。いや、脳みそが入れ替わっているから、単純にそうとはならないわね。途中で替わっても気がつかないで抱き合ったり、あるいは、殺そうとしたりするかも。
 でも、クローンのほうは、三年間で大人に成長するように設計されたので、衰えるのも早いの。特に脳がね。だから、ものすごい複雑なトリックを考えたのに、いざ実行する時は、子供みたいなミスを犯して……。待って、これって、どこかで見た話よねえ。
 あ、『ブレード・ランナー』だ。やっぱ、ああいう終わり方になるしかないわよね。特に『続アイランド』の場合は、発注者サラの体の中で脳みそと心臓だけが、クローンで老化が早いから、余計にしつこく追われるわよね。でもって、クローン・サラは、外見は衰えても、脳みそと心臓だけが元気だから、その軋轢で、ストレスが生じ、耐えられなくなって麻薬に走るわけよ。何しろ、昔、美しかった時の記憶があるから。ああ、惨め。年は取りたくはないわね。

『わたしは甘えているのでしょうか?』(本、村上龍著、青春出版社
内容・『SAY』って雑誌で連載していた相談の総集編です。女性向の雑誌かな? 女性の相談だけです。
感想・村上龍も超売れっ子の作家だから、多少バッシングしても良いよね?(怒らないでね。愛しているから)
 ここからは、対話形式で。
A・わては、『トパーズ』とか『イビサ』とかの村上龍が好きなんだけど、この中の村上龍、猫を被ってないか?
B・当たり前や。あっちは小説。こっちは人生相談や。R指定になるような際どいことは言えないわ。
A・にしても、優等生的な答えや。例えば、”顔も頭も大してよくない私ですが、玉のコシに乗れるでしょうか?”って質問に対しては、こうや。”教養や語学習得への動機が玉のコシでも、それはそれでいい”。
B・まっとうやないか。それのどこがいけないんや?
A・阿呆か。”玉のコシ”の意味の把握が違うんや。玉のコシとは、努力をしないで金持ちになることや。
B・それは、ちょっと違うと思うけど。
A・そうや。普通に外国語をマスターして会社で昇進するのは、玉のコシとは言わないのや。それは、当然の結果じゃ。B・そう言われればそうだが。
A・な。だから、玉のコシに乗る、つまり、あまり努力しないで金持ちになるにはどうしたら良いかって質問や。でもって、そんなの簡単じゃ。金持ちの爺さんと結婚すれば良いんじゃ。まあ爺さんでなくても、30才くらい年上なら、夫がまず先に死ぬわ。90%の女がそう考えるわ。キスのうまい男よりは金持ちの男って。
B・まあ、それはそうだが。
A・でも、これには大きい落とし穴があるんや。
B・何や?
A・好きな男ができた時に泥沼になるってこっちゃ。
B・生々しい話やな。
A・おまけに、子供があると、簡単に解決できない。中くらいの玉のコシでも係争期間が数年に及ぶかもしれない。
B・それに土地もだろう。
A・そんな時、賢い女はどうするか?
B・失踪するか、諦めるのが良いと思うで。
A・つうことで、好きな人が現れた時に結婚するためには、玉のコシに乗らないほうが良い。やっぱ女は仕事に生きるのが一番楽じゃと思う。
B・それに、お金のある家が幸せとは限らないしな。例えば、フェラーリのある家のご主人が、土地転がしで儲けたかもしれないし。
A・そや。土地転しなんかしとると、怖いお兄さんが関係してくるから、安心して生活できないし。
B・それに、金は稼ぐけど、愛人に貢いでしまって、妻には自由に旅行もさせてくれない夫かも知れないし。
A・そや。それに、お姑さんと一緒でないと寝られない男かもしれないし。だから、自由が一番や。
B・何か、負け惜しみみたいだが。
A。わてもそう思う。で、まとめると、フェラーリのある家を見たら、土地転しで儲けたと思え。ランボルギーニやったら、愛人がいるかも。ロールスロイスだったら、マザコンやな、多分。
B・極端やな。他にもBMWムスタング、フォード、ポルシェ、アウディボルボ、ベンツなんかもあるで。
A・そんなのは、自分で考えーや。誰もいない時に窓から中を覗けば、その家の職業は想像できるじゃろう。
B・逆に怖いわ。

A・次の質問は、「女友達が、私の着ている安い服をバカにしてくるんです」じゃ、これに対する龍君の答えは、「男は女性の服の値段なんか気にしません。質素な服だっていいじゃないですか」じゃ。
B・あ、それは、ミスプリだと思う。
A・そうじゃ。正しくは、こうじゃ。「男は女性の服の値段なんか気にしません。気にするのは、服の中身です。中身しか見ません」
B・そや。具体的に言うと、顔とおっぱいと足首しか見まへん。
A・それは、あんさんの昔の男。足フェチだったもんな。

B・次。
A・次はこれや。”男にコビを売る女が職場にいて見ててイラつくのですが……”。これに対する答えはこうや。”男が欲しくてベタベタしているわけではなくて、案外かわいそうな人なのかもしれない”
B・あ、それも、コビを売ったことのない人間の言葉や。もっとも男が男にコビを売ったらオカマやが。
A・そうや。ここでわては言いたい。「騙されたと思って、一度コビを売ってみい」と。
B・そやな。信じられんくらい仕事がはかどることもあるしな。
A・そや。例えば、契約を取りに行った先で、目を潤ませて、「社長さんもお疲れなんですねえ。わたくしが肩を揉んでさしあげましょうか?」と言ってみい。数百万の契約が取れるわ。
B・そや。社内でも同じや。上司に言ってみい。三段抜かしで昇進できるわ。
A・でも、これにも大きい落とし穴があるよな。
B・そや。一度コビを売った男が転職なんぞをした場合やな。
A・そや。別の派閥の男にコビを売ったりしたら、大切な職を失うわ。確実に。
B・それやったら、最初から誰にもコビを売らんと、チマチマ昇進するのが一番安全や。
A・賛成や。でも、コビは売るためにあるんや。涙は男を騙すためにあるんや。出し惜しみせずに出すのがコツや。

B・次。いや、今の質問にもう一つ答えがあった。コビを売らなくても昇進できる方法。
A・あ、そう。コビでなくて、愛想笑いや。自然と愛想笑いになるように整形手術をしてもらうことやな。
B・そや。愛想笑いは、二重瞼だと自然に出るんや。仕事や職場での人間関係をうまくこなしたかったら、君もすぐに整形外科で二重瞼にするとか、エラの張っている顎やったら、削ってもらえ。それから太っていたら脂肪吸引や。
A・厳しいなあ。最後にもう一度、龍ちゃんご免。取り上げたのは好きだからやし。

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