「24』『手紙』『犯行現場の作り方』『月下の恋人』

先週、私、滑ったみたいなんで、次回からは挽回しようと思って『24』2ndシーズンを見始めたら、嵌ってしまい、新作映画の紹介などができなくなってしまいました。『アンノーン』とか紹介したいのは多々あるのですが、DVDになるでしょうから、それたら紹介します。『24』が面白すぎるのがいけないのです。そっちを恨んでください。(笑うところでっせ)
 それにしても、滑ってみると、いろんなことが分かり、新鮮でした。まずは、尾行の数がガクンと減って、半年ぶりに清清しい毎日が戻ってきたこと。それから、すれ違いざまに、「もう、才能が枯れたようね。おなら臭いし」などといわれなくなったこと。
 この手の心理攻撃をするのは、どこの国のエージェンシーでしょうかねえ?
「才能が枯れた」のと「おならが臭い」の間の因果関係が掴めないのが、残念。
 反面、根強いファンがいて(自己申告ですが)、小学生に手を振ってもらったこと。
 あの時は気がつかなくて、ご免。
 最近、私の周囲を歩く方々は心理攻撃の技術が上手になって、小学生に変装した人間まで動員して親しげに手を振ってくるので(宗教の勧誘が多いかな?)、ランドセルを背負っていてもうっかり反応できなくなっているのです。
 そのうち、何か暗号を考えましょう。(でも、ファンとの暗号をブログで発表したら、エージェンシーの方々や勧誘目的の宗教団体の人々も知ってしまうので、無意味か?)
 ま、それは、それとして、次回までには立て直すつもりなので、期待してね。でも、バッシングのない状態もけっこう心が休まるので、滑りっぱなしで行くのも悪くないかも。

『24』2ndシーズン
 あまりにも有名なTVシリーズで、すでに第五シーズンまで発売されているので、簡単に。
 第1シーズンは史上初の黒人の大統領が誕生するかどうかの瀬戸際の一日を追ったもの。大統領選の話です。
 主役は、★CTU★(テロ対策本部)のボス、ジャック・バウアー
 で、第1シーズンの目玉は、ジャック・バウアーの娘がテロリストに誘拐されている点。
 ジャック・バウアーとしては、大統領をテロリストの攻撃から守るのと同時に、テロリストの要求を受け入れて、大統領暗殺まがいの行動もしなくてはならないこと。
 それに、CTUの内部にテロリストへの内通者がいるらしいので、誰が裏切り者かを探りながら行動をしなくてはならない。
 まあ、詳しくは見てもらうとして、圧巻は、やはり、裏切り者と思われる人物が、次から次へと移動することと、最後に浮上する内通者が、完全に読者の予想を裏切っている点でしょう。
 
 でもって、第ニシーズンの紹介へ移ります。
 第ニシーズンでは、大統領が黒人のデイビッドになった後の話。テロリストの持ち込んだ核爆弾がロスのどこかに隠してあって、24時間以内に爆発するとの情報がもたらされます。
 第ニシーズンからは、いわゆる★デッド・リミット★方式に方針が固まりました。これで、スリルとサスペンスが格段に上がりました。はっきり言って、途中でやめられなくなります。
 ボックス(12本セット)でも一万円程度に値段が下がりましたし、冬休みの時間を潰すにはもってこいです。
 このシーズンの後、核爆弾が細菌兵器に変わったりしますが、デッドリミットという基本方針はほとんど変わっていないようです。でも、この後のシーズンは見ていないので、はっきりとは言えませんが。
 感想ですが、各局面で完全に読者の予想を裏切る展開が珠玉です。おまけに、その珠玉の展開の連続です。
 はっきりいって、今までに爆弾予告を受けて、デッドリミット方式で進んで行く話は吐いて捨てるほどありましたが、殆どは同じような結末でした。でも、このシリーズの展開は完全に予想を裏切る結末でした。
 おまけに、その結末を導くのが、冒頭でプルトニウム被爆したジャックの上司であるのも泣かせますし、一回、終わるかとみせかけて、さらに別の緊迫局面へともってゆく展開は白眉です。もう、最後まで止められません。

 それと、第ニシーズンを格段に面白くしているのは、大統領に離婚された元妻のシェリーと、元ジャックの部下のニーナです。二人とも、いっぱしの悪人面で登場してきますが、そのうちに悪の権化になって行きます。
 特にシェリーは珠玉です。口がうまくて、どんな困った状況でも弁解してしまいますし、時に応じて自由に涙を流しますし、元夫には「あなたのために私は全てをささげているのよ」と情で押してきますし、もう、太刀打ちできません。

 あまりにも傑出したキャラで、ここで捨ててしまうのは勿体ないので、シェリーとニーナを中心に、私なりの外伝を考えてみました。(お色気路線なので、多分、どのシーズンの筋とも被っていないと思います)
 『外伝』
 モスクワでサミットが開かれています。あ、モスクワはまずいなあ。今色々とスパイがらみの事件が噂されているので。
 北京にしましょう。(中国がサミットに入っていたかどうかは不明ですが、どうせ、小説ですし。それに、デイビットが、この後のシーズンで大統領から退いているかもしれませんが、外伝ですから、本シリーズとは別物と思ってください)
 サミットの最中に、大統領に離婚されたシェリーがある新ウイルスをもって、サミットの会場へ潜入します。感染すると、目覚めてから最初に見た人に惚れてしまうウイルスです。(これ、昔もアップしたような気がするなあ。まあ、誰も覚えていないでしょうから、ダブっていても強引に進めます)
 シェークスピアの『真夏の夜の夢』のパクリです。
 で、シェリーは、それをこっそり、元夫のデイビットに注射します。それで、ロシアの大統領夫人を呼び出して、起こしてもらいます。当然、デイビッドは、ロシア大統領夫人に惚れてしまいます。
 しかし、冷静状態のロシア大統領夫人は、デイビットに抱きつかれても、妥協したら戦争になると考え、ぶっとばして逃げてしまいます。
 実は、これは、デイビットのスキャンダルを起して、次の大統領になろうと画策しているシェリーおよびニーナの陰謀です。
 で、新ウイルスですが、一目ボレした相手の女(男)が目の前にいなければ、冷静に戻れます。つまり、デイビット君は、ロシア大統領夫人が目の前にいなければ、極めて冷静に会議で発言ができます。
 しかし、廊下を通る夫人の横顔が見えたりしたら、即、答弁がしどろもどろになってしまいます。
 で、他の参加国の人間も、次第にそのことに気がついてきます。当然ながら、デイビッド君の政敵は、「デイビットが呆けた」とマスコミに流して、失脚を狙います。
 しかし、デイビット君もバカではないので、冷静な状態の時に考えます。自分は、変なウイルスを注射されたのではないか? たしか、廊下で掃除婦に変装していたシェリーを見たし。きっとそうだ。
 そこで、CIAやあらゆる諜報機関を動員して、真実を探り、シェリーがやったことと、新ウイルスがまだ何本かあることをつきとめます。
 ここで、またデイビット君は、考えます。自分がこれだけ苦しんでいるんだから、元妻にも同じ苦しみを味合わせてやりたい。それこそが復讐だと。
 で、ジャックやあらゆる人間を動員して、新ウイルスを手に入れ、シェリーにも注射します。(ジャックには、自分の失脚を狙うシェリーは排斥すべきだ、と説明します)
 で、シェリーはまんまと罠にはまり、惚れ薬ウイルスに感染してしまいます。しかし、最初に目にしたのがジャックだったので、今度は、ジャックが追われるはめになります。
 一方、デイビット君から新ウイルスの存在を聞かされたCIAの一部の人間が、政敵にその話をし、政権奪取を狙います。そこで、新ウイルスを各国の大統領などに注射して、サミットを混乱させ、「サミット大失敗」を狙います。
 それと、同時に、悪の親玉として復活したニーナが、本物の爆弾を持ち、サミット会場を爆破すべく潜入してきます。
 ジャックは、CTUの情報収集能力を駆使して、その情報を手に入れ、そっちも阻止しなければならなくなります。
 ジャックは悩みます。どっちの物(ブツ)を先に処理すべきか?
 爆弾は、ニーナ以下数名が隠しもっていますが、彼らの人相や指紋は、入国の時に割れているので、警察を動員すれば、発見までそれほど時間はかからないだろう。
 しかし、シェリーおよび、デイビッドの政敵および、それに雇われた人間の数は幾何級数的に増え、ウイルスも増殖させれば、無限に増えるだろう。だから、今サミット会場に隠してある新ウイルスの処分が先決だ。
 そこで、CTUの力を総動員して、なんとか、新ウイルスの入った箱を見つけ、処分しに、セスナで海上まで出て捨てます。
 しかし、サミットの会場に戻ってみると、惚れ薬ウイルスが各国の大統領などに注射され、大混乱になっています。
 そうです。ジャック・バウアーは、自分より頭の良いシェリーとニーナに騙されて、爆弾の箱のほうを持ち出したのでした。
 一方、アメリカでは、デイビット君がロシア大統領夫人に抱きついた時の写真が報道され(シェリーが隠し撮りをしてあった)、これで、デイビッドは君は失脚かと思われますが、デイビット君は、「それはCGだ」と会見し、なんとか局面を凌ぎます。
 おまけに、自分がロシア大統領夫人を見ても何も感じなくっていることに気がつきます。
 ――このウイルス薬の作用は三時間が限度ではないか?
 そう悟ったデイビッド君は、それをサミットの会場で発表し、「自分が感染していると思ったら、三時間は部屋から出るな」と忠告します。これで一時は会場は平静になったかに思われますが、この新ウイルスの素晴らしい点は、変質することです。
 デイビッド君が平静になって三時間後、今度は異常に血が欲しくて堪らなくなります。そして、たまたま現れた秘書のリンの喉に噛みついてしまいます。
 つまり、吸血鬼ウイルスに変質したのです。ですが、このウイルスの素晴らしい点は、最初に見た人間の血を吸いたくなるだけで、無制限にあちこちの人間に噛み付いたりしないことです。
 しかし、噛みつかれたほうは、ウイルスの最初の段階から一つづつのプロセスを踏みはじめます。つまり、最初の症状――血を吸われて失神し、目がさめてから最初に見た人間を好きになる――ところから開始です。
 でもって、リンが最初に見たのはジャックで、ジャックは、シェリーとリンの二人から追われるはめになります。
 そんなこんなで、デイビット君の演説――三時間はガマンせよ――で一時平静を取り戻したサミット会場はまたも大混乱になります。
 しかし、このウイルスの特徴は、変質してもまた三時間で作用が切れる点です。ですから、三時間をトマトジュースでガマンしていたデイビッド君は、今度も失脚を免れます。
 ジャックは、吸血ウイルスの発現したシェリーと一目ボレウイルス状態にあるリンの二人から逃げるのに必死ですが。
 で、この辺でサミットは大失敗して、替わりに多くの妊婦を生み出して会議は終わりになっても良いのですが、続編を作るなら、この三時間後、今度はオカマ・ウイルスに変質して、とか、オタク・ウイルスに変質して、とか、★致死性でない狂犬病ウイルス(ただ噛み付くだけ)に変質してとか、★まあ、色色考えられます。
 この話は、お笑いかお色気路線でしか使えないので、使いたい方はご自由にどうぞ。
 
 他にも、ニーナやシェリーが悪の親玉になれば、いくらでも話はできます。例えば、ウイルスではなくて、サミットでデイビット君が、フランス大統領夫人(女性大統領になっていれば、大統領本人でもOK)と駆け落ちした、でも、それは、次の大統領を狙うシェリーがニーナと組んで、大統領の息子か娘を誘拐した上で強要したものだった、とか。とに角、悪役が傑出していれば、話は面白いです。

『犯行現場の作り方』(本、安井俊夫)
 これは、ミステリー小説の中で、主に密室物として登場した建物を実際に図面に引いたものです。扱われているのは、『十角館の殺人』、『笑わない数学者』、『十字屋敷のピエロ』、『斜め屋敷の犯罪』、『三角館の恐怖』、『本陣殺人事件』などです。
 作者が適当にでっちあげた設定をまじめに図面にしているのが面白いです。
 敢えていえば、『空想科学読本』の面白さに似ています。適当に書かれた状況を、ガシガシと実際の図面に直してゆく面白さです。ぜひ、他の作品もやって欲しいです。
 建築以外でも、『時計館の殺人』などです。
「時計のギヤはXXであって、そのうちのXをZZすれば、XXはXXづつ縮まるだろう。だから時間を偽装するのは可能だ」と私が子供に説明しても、子供は理解できない。
 それから、東野圭吾の作品だったと思いますが(タイトルは忘れました)、車のどこかとどこかのストッパーを外せば、車は簡単に手で動かせる(坂道を登ることも可能)と出ていましたが、素人の私には、絵がないと、まるでチンプンカンプン。そういう理科系の作品も図で解説して欲しいです。
 
『手紙』東野圭吾原作(本、映画)
 これは、『おしん』路線の作品です。主人公が次から次と苛められて、観客は涙涙の連続になる展開です。泣くのはストレス解消にはもってこいらしいので、カタルシスを覚えたい人は、是非。
 主人公の兄は殺人犯人で、主人公はひたすら耐えて生きようとしており、言い代えれば、『セカ中』とか『一リットルの涙』とかの路線です。
 ヒットしているようなので、少しだけバッシングです。
 東野圭吾の名前に惹かれて読んだのですが、主人公の行動がストレートすぎて、ちょっと不満が残る感じ。
 うまく言えないのですが、小ネタが足りないというか、人間って、もっと複雑な行動をするだろうと思うのです。
 例えば、前、『渡鬼』の中で、子供に海外旅行をさせてあげたいと思ってバリに連れていったのに、子供からは、逆に「狭い部屋で、お金がもったいない」と非難されるシーンがありましたが、人間の反応は予測不可能だから面白いのだと思うのですが。
でも、この作品の主人公たち(妻も子供も)は、ただ耐えているだけなのがちょっと、不満かな? 普通、苛められれば自己防衛本能が働いて、もっと弱いものを苛めたり、あるいは、爆発したりするものだと思うのです。
 でも、新聞小説として発表されたので、それは駄目かな★(逆に真似する人間が出て、社会的影響が強すぎて)★?
 それでも、例えば、次のような展開であっても悪くはないと思うのです。
別展開、その一。最後の方ですが、子供が公園に行きたいと言うのに、妻は反対し、別の公園へ連れて行く。このシーンで、読者は、即、子供が公園で苛められていると気がつくのに、主人公は、実際に現場へ行くまで気がつかない。
これは、読者に負けているので、次のようにかえられます。子供が公園へ行こうと言って妻が反対した時点で、主人公は子供が苛めにあっていると直感する。で、こっそり尾行してみる。
 案の定、妻は別の公園へ行く。やっぱり苛めか、と思っていると、子供がこっそり前にいた公園に帰り、そこで、自分を苛めた子供に復讐しているとか、あるいは、もっと弱い子を苛めている。
 それを見た主人公が、「自分が苛められたからと言って、他の子を苛めるのは人間じゃない」とか言って、子供を殴るとか。でも、これもやっぱ、★社会的影響を考えると★新聞小説としては無理かな?
別展開、その二。上と同じ展開で、尾行してみると、妻がこっそり若い男と会って話をしている。これは、浮気か?と思って妻を殴ると、妻は、泣きながら、「あなたが、殺された人間の家族に謝罪をしていないから、私が『被害者連絡会』の人間を通じて、何とか謝罪をしようと思っていたのに」というとか。
 相手の家族に謝る展開は、この作品の中でも、最後の手紙で実行されますが。
 ええと、自分も滑っているのに、バッシングをしてしまって、心苦しい限りですが、この次の作品は、医療現場を扱った社会派作品で、またまた驚くべき展開を用意してくれているようなので、そのうち紹介します。


月下の恋人』浅田次郎
 このところ『ノダメる』路線にばかり傾倒していて、任侠言葉を忘れてしまったので、感覚を取り戻そうとして買ったのですが、小市民的なにやりとする作品とか、単純には泣けないんだけど、じーんとする作品が多かったです。
 例えば、『情夜』
 この中では、無職で51才になる克平のところへ、見ず知らずの女性(えり子)宛ての手紙が舞い込みます。
 どうも、何かの悪事に加担して住所変更をしなければならなくなった女性(えり子)が、勝手に住所を克平のアパートに移したらしいのです。
 その後、悪事のお礼として、共犯者から20万円が送られてきます。そこで、克平は考えます。
 これは、自分への口止め料が含まれている。だから、使ってしまっても大丈夫。えり子は、自分の体を提供すれば、金の何割かは渡してもらえると思っているだろうが、そうは行くか。
 そこで、彼は、溜まっていた家賃とか電気やガスや水道料金を全て払い、食料も大量に買い込んで、女を迎えいれます。つまり、相手の弱みを握ったからには、お金も体もすべていただくのが当然だと。
 これが人間ですよね。でも、小市民的なのは、これだけで満足して、それ以上のこと――脅迫など――をしない点かな?だから、主人公は悪いことをしているはずなのに、読み終わった後、爽やかな読後感が残ります。
 そんなに大掛かりな陰謀が起こるわけでもなく、小さな悪事なのですが、人情を知り尽くした作家の肩の力の抜けたほんわか名作です。

来週は、大掃除など、やらなければならない事があるので、お休みです。早めですが、良いお年を。