『リトル・ミス・サンシャイン』他、映画、新刊書紹介

映画『リトル・ミス・サンシャイン
本『人は見た目が9割』『個性を捨てろ・型にはまれ』『日本はなぜここまで壊れたか』『インテリジェンス・武器なき戦争』(時間がなくなってしまったので後ろは明日)
『となり町戦争』『バスジャック』
DVD『笑う大天使(ミカエル)』『24・3rdシーズン』

映画『リトル・ミス・サンシャイン
NHK番組の『フルハウス』みたいなコメディ。『フルハウス』に出ている人も出演しているかな?
 それぞれのキャラが立っていて、とても手馴れた脚本て感じ。音楽クリップしか撮ってない夫婦の作品らしいけど、ツボを心得ていて、けっこう泣ける。
内容・アメリカの田舎(アリゾナ辺り?)でミスになった少女が、ロスでの本選に行くまでの話。
 登場するのは、はっきし言っていなかっぺ丸だしの少女と、問題児ばかりの家族。
 母親の兄は、プルーストの研究者だったけど、鬱になってリストカットの癖あり。でも、普通の精神状態の時は普通。何かが原因でプッツンする危険性あり。
 夫は、『成功術を出版してもらえる』と家族には豪語しているが、実は嘘。
 祖父はヘロイン中毒。少女の兄は、ニーチェに感動して9年間、口をきかずに引きこもり。必要な時は筆談。
 家族は、おんぼろバスで、1200キロ先のロスへ向かうが、X月X日の3時までにつかなきゃいけない。デッド・リミット路線。
 途中、バスが故障したり、祖父が急死したりして、問題続出。しかし、その度に必死に考え、なんとか窮地を切り抜ける。特に、祖父が死んだとき、埋葬許可を得るのに一日必要。でも、本選が始まるまでに2時間しかない。この時の解決法は珠玉。死体を盗むのだ。これだけは私も予想できなかった。
 で、最後の最後まではらはらドキドキ。
 で、最後は、本選でDJオズマみたいなダンスをするのだが、上着を脱ぐだけなので、DJオズマを見てしまった後では、今一かな?
 でも、ここまで来るのがこの作品の主眼なので、OKかな?
 にしても、少女のライバルが皆凄い。ジョンベネみたいな妖艶な容姿で、大人顔負けの演技を披露する。中国雑技とかダンスとか。そっちのほうが圧巻。

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本『人は見た目が9割竹内一郎新潮新書
 サブ・タイトル――理屈はルックスには勝てない――
 作者は戯作者&マンガ原作者と書いてあります。戯作というのが良く分かりません。脚本家?劇作家?それとも劇画の原作者? いずれかだと思いますが。
 売れているようですが、内容は、順当な記述がほとんどです。タイトルの勝利ですね。
 例えば、『男に好かれるなら、隙のある女になれ』とか、『マンガや映画ではドアップのほうがインパクトがある』とか。
 最初のなどは、女なら、本能で知っていることです。
 では、なぜ、この本を取り上げたか?それは、『劇でもマンガでも目力が必要』という点に共感したからです。
 先週、私が小説から、暫くリタイアしようと決心した原因は、二つあって、一つは核実験準備に抗議した点。もう一つは小説に限界を感じたからです。
 かなり前からマンガ家への転進を考えていました。でも、修行していないから下手です。
 で、修行しつつ、早い段階で読者の心をつかみたい。→そこで、過去現在のマンガを読み漁って、売れた作品の魅力を探りました。その結果、下手でも荒削りでも、目力のある作品が印象に残ると気がつきました。
 言いかえれば、キャラが立っている作品です。『愛と誠』とか『ガキでか』とか、『パタリロ』とか『ごくせん』とか、ヒットした作品は皆、当て嵌まりますが。
 ということで、突然ですが、来週から『ごくデカ』のマンガでの宣伝に入ります。本編はでじたる書房にアップしてありますが、ダウンロードの方法とか、デジブック・リーダーの使い方とか(本編ファイルの上に乗せれば解凍できるようですが)も詳しく解説します。

 それから、今後、ブログに小説をアップしたいと思っている人は、最初からイラストか写真付きでアップすれば、インパクトが高くなると思いますぜ――。

本『個性を捨てろ・型にはまれ』三田紀房
 『ドラゴン桜』の作者の作品です。はっきり言って、目から鱗でした。
 内容――ビジネス書はなぜ売れるのか?→こうすれば売れるというモデル(型)を提示してくれるから。→読んだだけで、大ヒットへのチケットを手に入れたような気になる――。
 私は今まで、新書は売れないと思って、ミステリーだけを読んでいました。でもよーく考えたら、文学は売れても1〜3万部くらいがほとんど。しかし、ビジネス書は、切り口さえ斬新なら、数万〜数十万部を売り上げる本はかなりある。おまけに、今はブログ→出版の傾向が大。ならば、ブログで小説なんか書いているより、本や映画の紹介をした方が出版される可能性は高いじゃん。まあ、そう考えたわけで。
 ええと、突き詰めて言ってしまえば、これは、一読の価値のある本でございます。

 それから、もう一つの感想。不況に陥った時は、さっさと新世代に主導権を譲ったほうが道が開ける。日本の出版界は今どん底なんだけど、その中でも、さっさとブログの人気サイトに目を向けた所はヒットを出しているわけで。つまり、文学が駄目なら、ビジネス書に転換しろ(それも、今のビジネスの最先端にいる人間の書)、あるいは、ブログから選べ、って訳です。
 これは、国の経済でも同じだと思う。例えば、旧い世代は、不況から脱出するためには、鉄鋼だとか繊維だとか、石油だとかで外国と合弁会社を作ろうとしか考えないけど、若い世代なら、アニメで合弁会社を作ろうとか、旧世代が考えもつかないような発想をするわけで。
 そういう点から言ったら、窮地に陥ったときは、さっさと若い世代にバトンタッチをするのが良いのではないかな? それに、新しい世代に替わったことで期待感が生まれ、一時はお祭りムードで景気も上向くし。
 まあ、いろんなことを考えさせてくれる本です。
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 本『日本はなぜここまで壊れたか』マークス寿子
 1936生まれだと出ていますから、現在70才ですね。35年前に渡英し、イギリスの男爵と結婚し、9年後に離婚して日本に帰り、大学教授になった方で、今はイギリスと日本を行き来しているそうです。
 内容は、至極順当で、文句のつけようのない記述です。
 感覚としては、大臣の答弁を聞いているような感じです。
 例――中身に自身のない女がブランド品を持つ。とか。――海外旅行に行きたくなるのは宣伝に踊らされているから。つまり、まず、価格を安くして、行かなきゃ現代人じゃないみたいな宣伝をする。→そこで有名な観光地で自分を入れた写真を撮り、安心する――とか。
 建前としては反対できないのですが、何となく世代の違いを感じますねえ。
 例えば、1番大きい違和感を感じたのは次。
 イギリスでは二歳までは子供を保育園に行かせるのは、感情の発達の面で問題ありと考えて母親は反対するが、日本では平気でゼロ才から保育園に行かせる、って部分。
 私も1才くらいから保育園に行ってましたが、感覚はそうとうに鋭いですだ〜〜。
 それに、母親が子供を保育園にゆかせるのは、子供に財産を残したいからであって、自分のためではないと思うのですが。これは、母親になってみないと分からないかな。
 ええと、これだけでは分からないと思いますので、簡単に説明します。
 まず、日本とイギリスの1番大きい違いは、姑と同居しているかどうかです。イギリスでは、ほとんど同居なんてしていないでしょう。
 でも、日本ではまだまだ多くの家庭が同居なんですよね。そんでもって、1番大きい問題は、嫁姑問題なんです。
 話を最初に戻しましょう。まず、子供を産むのは本能からですが、子供が生まれてしまうと、女は、全てを子供中心に考えるようになるんですよ。
 でもって、最大の関心事は、子供に家や財産を残すには、どうしたら良いかって点なんですよ。
 この場合、1番確実なのは、親と同居して、家と土地を受け継ぐって方法ですよねえ。そうなると、当然、二世帯住宅で同居するしかなくなるわけ。でも、同居は大変です。神経戦ですからね。
 でも、同居し子供に家を、と思えば、我慢して、ニ世代住宅にでもして、やってゆくしかない。
 で、同居すると、子供はピーピー泣くし、姑には、掃除がしてないとか文句を言われるし、ノイローゼになっちゃわけ。で、嫁は考える訳。一日のうちに数時間でも自由な時間があれば、なんとか同居をしてゆけるんじゃない?
 そこで、就職口を探すわけ。平行して保育園も探すわけ。そりゃあ、ゼロ才児と離れるのは身を切られるより辛いけど、子供の将来と自分の精神状態を考えれば、ぎりぎりの選択でもあるわけ。それに、一日のうちの数時間の別れだし。
 まあ、そのうちに自分が偉くなれば、二番目の子供を産めなくなるとかの問題は発生するけど、そんなのは全体の1%くらいの女性にしか訪れないチャンスで、99%はバイト止まりで、数年もすれば2番目の子供が欲しくなるわけ。
 今、出生率が落ちているのは、女性が将来の夫の収入に不安を感じていたり、将来の子供の教育費に不安を感じているとか、二番目を生んでもすぐに保育園がみつからない、などの問題があるからで、そっちを解決すれば、出生率は徐々に上に向くと思う。例えば、二番目からは、かなり思いきった助成金を出すとかね。
 まあ、本の全体の印象としては、60才以上の人間には絶大なる共感を得られるでしょうけど、50代以下の女性には、所々違和感の残る感じでしたね。でも、喧嘩を売っているわけではないです。ただ、世代の差を感じただけです。
 それに、二世帯にして同居をするかすぐ側に住むかして子供は保育園にいれれば、主婦も労働力になる。
 そういう家庭が多いから、日本経済はなりたっているんだし、各家庭の料理や味が引き継がれているし、子供は両親よりも強いのはおばあちゃんの一言なんだ(つまり、上には上がある)と知るようになる気もするのですが。

本『インテリジェンス・武器なき戦争』手嶋龍一(元NKHワシントン枝局長)、佐藤優(元外務省、ロシアの日本大使館勤務)
 サブタイトルは『日本存亡の鍵はスパイが握っている』
 サブタイトルにもあるように、インテリジェンスとは諜報機関、つまり007などの中でエージェンシーと呼ばれる機関。MI6やCIAやKGB(最近名前が変わったようですが、忘れました)。日本では公安とか外務省とかが独自にやっているようです。
 ちなみに、実際のエージェントの仕事は、007などとはかなり違います。
 ある国に潜入して、その国の大統領や側近に接近して、大統領が男が好きか、女が好きかなどを探り出して(偽装結婚している場合が多い)、男が好きだったら美形の男を近づけて、大統領の考えを探りださせるとか。
 あるいは、自国に第三国の大物テロリストが潜入したとの情報を得たら、そのテロリストと同じ言葉を習得してそいつに近づいて、いつどこでテロの予定があるかを聞き出すとか。そうとうに知能の高い人間でないとできない仕事です。
 でもって、こういう地道な努力をしたので、イギリスは06年夏の旅客機テロ事件を未然に防ぐことができたのだとか。
 私は、霧島那智の下で三年、軍事小説を書く修行をしていて、そっち関係の本はどっさり読んだので、ある程度は知っている内容でしたが、ほとんどの日本人は、知らないと思うので紹介します。
 この手の本を紹介すると、好戦的と思われがちですが、本当は逆です。ミサイルと大砲の違いすら知らないでいると、ミサイルと聞いただけでパニックになってしまうので、初歩の知識くらいは持つ必要があると思った訳です。これだけ世界中でミサイルや戦闘機が大量配備されている現在、無知でいることは罪です。
 まず、ミサイルと大砲(ロケット砲)の違い。
 ミサイルは誘導装置(かなり高度なコンピューターソフトです)が入っている奴で、大砲(ロケット砲)はそれのついていない奴です。
 大砲は高く打ち上げたら落ちてくるだけですが、ミサイルはレーダーをかいくぐって進むので、地上(海上)数メートルのところを飛行し、標的のそばで、ホップステップジャンプ(ステップとジャンプは余計だったかな?)して目的地に突っ込む奴です。
 でもって、数十キロ程度なら、レーザー光線で誘導してやるのですが、長距離(地球を半周するような)になると、それは駄目なので、画像解析ソフトを入力して出発します。標的の画像です。
 ですから、国会議事堂を狙う場合は、あの独特の写真を入力してあるわけで、もし、ミサイルが発射されたとの情報があっても、標的の形を変形してやれば、標的を認識できないで、飛び越して、太平洋か東京湾まで飛んでいって、海に落ちる結果になります。つまり、国会議事堂に大砲をぶちこんで、先に破壊しておけば良いわけです。
 ですから、ミサイル自体を防御するのはそれほど難しくありません。イージス艦やレーダー網(パック3と呼ばれるパトリオットミサイルまでを網羅したシステムです)やアメリカの衛星まで連結した情報交換システムをしっかりと組みたてておけばよい訳です。
 でも、核は駄目ですよーー。核を持つのは私は反対です。自国が持つのも他国が持つのも反対です。自国がもてば、他国に対して『持つな』とは言えないし、他国が核で武装して石油などを奪いあうようになれば、必ず使う結果になるからです。
 それと、スパイに話を戻しますが、スパイは、歴史小説でいえば、『草』とか『ラッパ』とか呼ばれる存在でして、ピストルをビシバシ撃ったり、ロケット砲を撃ったり、軍用へりを操縦して橋の破壊をしたり、なんてことはしません。そういう肉体労働をするのはアメリカで言えばグリーンベレーとかSWATで、スパイがするのはテロリストのアジトを探りだすまでです。
 でもって、スパイの仕事は、歴史小説を書いている人は詳しいと思いますが、『草』の仕事と同じです。
 例えば、武田が信濃に攻め込みたいと思ったら、まずラッパを放ち、『武田は数十万の大軍を送ってくるそうだ』と言って、信濃の武将を懐柔したり、味方に引き込んだりします。同時に『草』が大金をもって協力者の所に行き、武器弾薬とか食料を大量に買い込ませます。そして、最後に先鋒の突入部隊が突入してきます。
 この事前工作をする時、スパイにとって1番大切なことは、敵地で怪しまれないことです。そのためには、ジゴロとか水商売とか三味線弾きとか、特技のある人間が重宝がられます。
 現代であれば、腰の曲がったよぼよぼの爺さんとか、子供を抱いたみすぼらしい主婦とか肉体派の女優とか、ストリッパーなんかも溶け込め安いです。この辺は、次回、北芝謙の『警察裏事情』で詳しく紹介します。

 それから、この本には、外交上の秘密もいくつか暴露されているようなので、一読をお勧めします。
 
時間がなくなってしまったので、残り半分は明日です。