36の一回目

『36』1話


ジミー・ミャウガーの家の前。
キキ・ミャウガー「お父さん。赤ちゃんが置かれていて、中に手紙があるの」
ジミー「読んでみな」
キキ「この子は、ジミー・ミャウガーの子供です。しばらく預かって下さい。ミニー・マイヤーズ」
ジミー「俺はネズミになんか、知り合いはいないぞ」
キキ「それって、ミニー・マウスのこと? さぶいわ」


ジミー「ふん。俺は、そんな女は知らない」
キキ「分からないわよ。お父さんは、潜入捜査で麻薬漬けにさせられたこともあるし。もうろう状態で、作ったのかも」
ジミー「煩いなあ。そんなわけないだろう。そいつは犬。俺は猫。犬と猫で子供ができるはずがないだろう」
キキ「そうよねえ。私もそう思うけど。じゃあ、この手紙はどういう意味? ミニー・マイヤーズって女の人がお父さんと結婚する前に産んだ子供? 子供が猫だから母親も猫だわよねえ。その後結婚。つまり、連れ子? そんで、お父さんはこっそり結婚したことも覚えていないってこと? そうだわ、きっと」
ジミー「知らん。知らん。潜入先でのことなんか、全部覚えていられるか。それより、緊急連絡が入ったから、俺はこれから仕事に行く。24時間以内に新種のウイルスを撒く、とテロリストが警告してきたらしい。お前が赤ちゃんの面倒を見ろ」
キキ「いやよ。私だって、ボストンの第ニCTUに勤めているんだもの。子供の面倒なんて見れないわ」
ジミー「一緒に連れて行けばよいじゃないか。CTUには前例があるんだから」
キキ「お父さん。それって、人間たちで構成されている第一CTUの話? 『24』の見過ぎよ。私は自分の仕事でてんてこまいよ」
ジミー。無視して「そうか。じゃあ、そういうことで、頼むぞ」
 ジミーは出て行ってしまった。
キキ「もう」


キキ・ミャウガーは仕方なく子供を連れて、ボストン郊外にある第ニCTUへゆく。仕事場に着くと、子供を台車の上に乗せ、毛布で隠して自分のブースへ。中は緊迫した雰囲気。


TVが点いている。
TVのニュース「今日、午前8時、ボストンの中心部で狂犬病の変種と思われるウイルスが散布されました。第一の被害者のチェリーさんにインタビューしてみましょう」
チェリー「キャンワン。今日、キャン、朝の6時頃、ワンキャン、ゴミを出そうとして家を出たら、キャンキャン、覆面男に、ワンワン、いきなり変なスプレーをかけられたの。キャンキャン。そしたら、ワンキャンが始まって止まらないの。ワン」
 隣の犬が口をはさんだ。
隣の犬「でも、うちの妻は昔からキャンキャン吠える性質(たち)だったんで、それほど大きな違いはないさ」


チェリー「バウーー。バウーー。ガブ」
 チェリーはいきなり夫に噛みついた。
女性アナ「どうやら、狂犬病ウイルスは凶悪化しているようです。あ、今、小型機で、第ニCTUのジミー・ミャウガーが到着しました」


 第ニCTU
 仕事を始めたキキはトニー・アンドロメイダに呼ばれた。
トニー「キキ君。裏口で弟さんが待ってるぞ。何でも家族の誰かが緊急手術で、すぐに会いたいとか」
キキ「は? 私には弟はいないですよ」
トニー「だよなあ。俺もそう聞いていたから確認したら、腹違いの兄弟だそうだ。念の為、犬だからな。だが、君とは面識があると言っている。それに、君の体重、身長、病歴、学校時代の成績などを書いたメモを持っていた」
キキ「体重まで。合ってる。失礼だわ」
トニー「とにかく裏口へ行ってみな」
キキ「もう。最初は、母親が勝手に産んだ赤ちゃんを押しつけられて、今度はその子の兄? いい加減にしてほしいわ」


 裏口。
中学生くらいの犬「キキさん?」
キキ「あんたは誰?」
中学生「君の机の下にいる赤ちゃんの兄。名前はジョン」
キキ「待って。それより、どうして中に入れたの?」
ジョン「キーでドアを開けたのさ」
キキ「もう。そうじゃなくて、ここのドアはカードキーを使って、暗証番号も入力しなきゃいけないのよ。その両方をどうやってクリアーしたかって聞いているの」
ジョン「もう。そんなことも分からないのかなあ。困ったお嬢さんだねえ。僕は、第ニCTUオタクなんだよ。第ニCTUのことなら何でも知っているのさ。君の体重だって知っていただろう? あれは、君を尾行していて、君がケータイで友達にダイエットの相談をした時に聞いたのさ」
キキ「もう。末恐ろしいわ。それより、第ニCTUオタクなんて、いるの?」


ジョン「現にここにいるさ。君らのことなら完璧に知っているのさ。それより、今朝から警察無線がうるさくって、第ニCTUに何かあったと察知したのさ。あ、警察無線の周波数も熟知しているんだけどね。で、無線を傍受したら、第ニCTUが警戒レベルを2段階上げたと知ったのさ。で、将来、ここに就職したい僕としては、予行演習する良いチャンスだから、応援にかけつけて来てやったんだぜ。それに弟も心配だし」
キキ「待ってよ。そういう問題じゃなくて、どうして、裏口のカードキーを部外者が持っていて、かつ暗礁番号を知っているかって聞いているの。それに、この裏口までどうやって来たの?ここに到達するまでにビルの入り口で検問を受けたでしょうに」


ジョン「ふん。簡単だよ。まず、ビルの入り口付近で待機していて、食料搬入業者の車が来たから、運転手に頼んだんだよ。『母が大手術をしなきゃいけないので、大至急、第ニCTUの姉に知らせたいんだけど、ケータイ番号が変わって連絡がつかない。お願い一緒に入れて』って。相手は簡単に信じたよ。それから、食堂の脇の廊下を通り抜けてCTUの裏口に到着した。CTU裏口のカード・キーは食堂で働いているお姉さんに、同じ言葉を並べて借りたし、暗証番号はジミーが教えてくれたんだよ」
キキ「父が?」
ジョン「そう。ジミー・ミャウガーが、昔、警察無線でこの番号を聞いたことがあっただろう。ちょうど暗証番号が変わった時さ。そしたら、1111→1234へ替わったと誰かが応えたんだ。あれはもう半年も前。一月に一度くらいは変更したほうが良いよ。あ、このカードキーは僕が後で食堂のお姉さんに返しておくから心配なく」
 ジョンはそれだけ言うと、さっさと仕事場に入ってしまった。


キキが自分の机に行くと、ジョンが青い顔でパソコンを指した。
ジョン「キキ姉さん。大変だ。パパが狂犬病に感染して死にかけている」
キキ「嘘」
 二人の会話を聞き、他のメンバーも集まってきた。
 キキは、メンバーに「これは腹違いの弟で。それから赤ちゃんは弟の弟で」と、必死で弁解。



 トニー・アンドロメイダがやってくる。
トニー「ジミーが狂犬病に感染して危ないんだって? そんな情報、どこからも入っていないぞ」
ジョン「そうだと思うよ。これは、たまたま僕の友達がボストンの中心街にいて撮影したものなんだ。今送信されてきたばかりさ」
トニー「嘘だろう。俺は、たった今ジミーと話したばかりだぞ」
ジョン「え〜〜? じゃあ、この映像は、ジミーによく似た他人なのかなあ。それだったら、友達に抗議しなきゃ」
トニー「俺はジミーに確認するぞ。ちょっと前には、向こうを飛び立ってこっちに帰るといっていた。被害者は3人だけで、それも命に別状はないらしい」
 トニーはジミーにケータイを入れた。しかし、呼び出し音が鳴っているだけで出ない。


 その時、テレビでアナウンサーが大声を張り上げた。
女性アナ「最新情報が入りました。狂犬病ウイルスが変質しました。最初にウイルスに感染したチェリーさんが、口から白い泡を吹いて、倒れました。かなり危険な状態です」
キキ「やっぱり、ジョンの友達の映像は本当だったのかなあ。だとすると、お父さんは、大丈夫かなあ?」
トニー「さあなあ。街中だから、病院へ運ばれているのかも。ボストン中心部の病院へ連絡を入れてみるよ」
CTUの全員「やっぱり、今朝の脅迫電話は本当だったのかなあ」
ジョン「え〜〜??? そんなあ」
 テレビの最新情報を聞き、ジョンは今始めて驚いたようだった。
キキ「どういうことよ。あんたもさっきの友達の映像は信じていなかったの?」
ジョン「え、いや。そういう訳じゃないんだけど」と、曖昧な顔。


 それから10分後。
 ジミーが表口から第ニCTUに入ると、数人が目の色を変えてかけよってきた。
ジミ―「どうしたんだ?」
トニー「本当に、本人ですか?」
ジミー「そうに決まっているじゃないか」
トニー「死にそうだって情報があったんですよ。それに、さっき、ケータイにでなかったじゃないですか」
ジミー「ああ、乱気流にまきこまれ、飛行機の中で、ケータイを落してしまったんだ」
 声を聞きつけたキキがかけつけてきた。
キキ「お父さん。大丈夫なの? てっきり、中心部の病院へ入院しているかと思って、今あちこちへ電話をいれているところな。あ」
 キキは部屋の隅に隠れていたジョンを見つけ、強引に引っ立ててきた。
ジョン「ごめーーん」
ジミー「お前は誰だ? なぜ、中学生がCTUにいるんだ?」
キキ「これには訳があって」
少年「僕は、お父さんの結婚した相手の連れ子なんだ」



ジミー。全員に向かって「待て、待て、信じるな。俺にも信じられないことなんだから。それより、少年。俺の死にそうな映像ってのは、どれだ?」
ジョン「ごめん。実はCGなんだ。僕、CGの勉強をしていて、ちょっと、皆を脅かそうと思って」
ジミー「ごめん、で済むことか」


トニー「それより、なんで帰ってきたんですか? 今、ウイルスが変質して大変な事態になっているんですよ」
ジミー「そうなのか? 10分前に向こうを出発したときは、感染者は3人だけで、危険な状態じゃなかった。まさか、こんなことになるとは。また行くべきかなあ?」
キキ「待って。それよりも、ウイルスを撒いたテロリストを特定するほうが先よ。お父さんは半年もの間、秘密行動をとっていて、昨日帰ってきたばかりよねえ。その間、いくつかのテロ組織で潜入捜査をしていたんじゃないの?」


ジミー「そうだ。潜入先は言えないが、いくつか捜査をした。そう言えば、ある所で、何回か注射をされ、急にワンワンと吠え始めたことがあった。たしか、ブロンクス辺りのテロ組織だったと思うが」
トニー「パソコン修理業者としてもぐりこんだところですね」
キキ「きっとそうよ。そこよ。そこで人体実験されたのよ」
ジミー「じゃあ、俺も、チェリーのように危険な状態になっていたのかもしれないなあ?」
キキ「分からないわよ。まだウイルスが弱い段階での人体実験だったのかも」
 その時、ジミーのケータイが鳴った。テロリストからだった。
テロリスト「街中に強力なウイルスを撒かれたくなければ、上司のシャーぺーを殺せ」

(続く。まだ無理ができない状態なので、続きは一週間か二週間後です)