夕凪の街・桜の国、Life天国で君に逢えたら、青い鳥

マンガ、映画『夕凪の街・桜の国』
三部からなっています。
第一部『夕凪の街』は終戦後10年目。広島で被爆した女の子皆美の話。皆美は原爆の落ちた日、母と妹と多くの友達を失います。10年後、ことあるごとに、悲惨な情景――この前テレビでやっていた『はだしのゲン』のようなー―を思い出します。で、ある日突然、真っ黒い血を吐いて失明して死んでしまいます。
第二話『桜の国1』昭和30年代。やはり広島で生まれ育った東子と七波の話し。このとき二人は小学生。なにげない日常が描かれます。たとえば、喘息で入院している七波の弟を見舞いに行って、桜の花びらを撒き散らしたりとか、いろいろ。しかし、数日後、原爆症で祖母が死にます。
第三話『桜の国2』
六本木ヒルズやケータイが出てくるので現代。
成長した七波と東子の話。結婚問題が取り上げられます。暗い現実です。被爆者の子供というだけで、結婚を断られたり。

感想・何世代にも渡って続く、被爆者の苦しみとか、問題が描かれ、考えさせられます。語り口が平易なだけに、感慨深いです。


映画『Life天国で君に逢えたら』マンガタイトルは『ガンに生かされて』折原みと
プロのウインド・サーファーの飯島夏樹の話です。
夏樹と寛子はウインド・サーフィンの大会で知り合います。選手だった夏樹の世話係に寛子がなったのがきっかけでした。二人は恋に落ち、結婚します。
二人はグアムに新居を構え、マリンスポーツの会社を興して、子供も生まれます。
仕事は順調にゆき、子供も三人増え、幸せな結婚生活でしたが、夏樹に肝臓がんが発見されます。2002年6月手術をしますが、抗癌剤治療、通院、再発をくりかえします。ストレスからうつ病も発症。それでも諦めずに小説を書き、2004年には出版もされます。その後、あと3ヶ月と宣告されますが、妻は正直に言えずに、あと6ヶ月と嘘をいいます。しかし、それが功を奏したのか、夏樹は6ヶ月以上も生き、テレビ出演やドキュメンタリーも制作されます。最後はハワイに行って死にたいと言い、ハワイにゆきます。
感想・余命何ヶ月と宣告されても諦めない姿は感動です。

本『青い鳥』重松清
 吃音の臨時教師があちこちの学校へ行って、いじめ、自殺、学級崩壊、児童虐待などの問題に向かい合い、そっと生徒によりそって解決法を見出す物語です。ずしーんと重いです。
内容・第一話『ハンカチ』
 ある事件があって、緊張すると喋れなくなった女生徒の話。主人公は、ちょっとした緊張でも喋れなくなる状態で、いつもポケットの中のハンカチに心で語りかけている状態です。ところで主人公の通っている学校では、卒業式で、全員で一行づつの挨拶文を発表するしきたりがあります。覚えれば簡単な文章なのですが、主人公にはそれが至難の業です。でも、自分よりもっと酷い吃音という障害をもっている先生・村内に勇気付けられて、卒業式で声を発するのです。 
第二話『ひむりーる独唱』
 主人公(義男)は自分でも理由が分からないのだが、担任の先生をナイフで刺してしまった過去があります。(先生の命は助かった)。主人公は三ヶ月学校を休んでいましたが、久しぶりに学校へ戻ってきます。しかし、疎外感を覚えます。三ヶ月、休んでいた間は、田舎に預けられていましが、蛙ばかりを殺していました。で、祖母に気味悪がられ、返されました。
そして、村内先生と出会います。村内は草野心平の詩集を読むように勧めます。そこには殺される蛙の詩ばかりが出ています。それを読んだ後、孤独な心に沁みるように語りかけてくれます。それで主人公も心を開きかけます。(作者注、この辺は難しくて一言では説明できません。でも、心には沁みます)
第三話『おまもり』
 主人公は父親が、交通事故を起こし、十数年も被害者宅に謝りに行っているのに許してもらえないという事情を抱えています。そんな時、友達が自転車とぶつかり骨折します。(相手は逃げてしまった)。友人は相手を犯人と呼びますが、主人公は、その人の気持ちも分かるので、素直に頷けません。そんなとき、村内先生が来て、いろいろあって、電柱に張り紙をします――事故を起こした人は名乗り出てください――と。で、最後はめでたしめでたしなのですが、心に負い目をかかえた少女の勇気には感涙。細かい心の動きは一言では言えないので、読んでください。
第四話『青い鳥』
 いじめをするつもりはなかったんだけど、「○○を盗んでこいよ」と言ったら持ってきた子がいます。それも、自分の家がコンビニなので、比較的楽にできたらしいです。その上、その子は、それ以上の要求をされても、泣き笑い顔で、「それってきついすよ」などといっているので、要求するほうは苛めているという意識はありません。
しかし、ある日、その子が自殺未遂を起こします。学校では、いじめとして大問題になって、反省文を書かせ、青い鳥ボックスを設置することになります。
反省文に関しては、いじめたという意識がないので、一枚くらいしか書けません。
その後、村内先生がきて、いろいろとあって(これも一言では説明できません)、主人公は、次のことを悟ります――万引きを強要されたとき、ああいう形でしか反応できない弱い子もいるんだ。
第5話『静かな楽隊』
 あやちゃんという性格のきつい女の子がいます。その子に気に入られないと先生でも、徹底的に無視され、休暇に追い込まれてしまいます。
今も、塩屋先生が犠牲になっています。主人公はいやだと思いながらも、あやちゃんには逆らえません。そこへ村内先生がきます。ところで、主人公は、自分も動きがのろいほうで、小学校の頃、カスタネットにフエルトをはられ(先生から)、ショックを受けた経験があります。
あやちゃんは村内先生をもいじめますが、先生は全然メゲないで、ひょうひょうと交わしています。主人公は、その姿をみて、あやちゃんに対抗できるような気になります。
第六話『拝啓ねずみ大王さま』
 主人公は、一年前、ストレスで父親が自殺した過去をもっています。その前に父親がハムスターを買ってくれたのでした。主人公はいつもハムスターに話しかけています。父の後任の佐藤さんが、父がマイナス思考だから壊れたといった、とか。
ところで、学校ではむかで競争の時期がやってきます。主人公は、「自殺します」と電話して駅伝大会を中止にした過去ももっています。
 今年のむかで競争でも、積極的に練習をせずに、失敗したりすると、すぐに離脱したりしています。
 そんなとき村内先生がやってきます。先生は、一年前の駅伝中止の件は知っているんだ、とそれとなく伝えます。そして、「つらかったんだなあ、富田君」と声をかけてくれます。その後、いろいろ話しあって(ここも読んでください。短文での説明はむずかしくてできません)、主人公の考え方が少し変わります。
第七話『進路は北へ』
 主人公は、エスカレーター式の私立の中で、一人だけ公立へ行くと宣言しています。それは、私立の中では例外中の例外。担任は、皆と一緒に上に行くのを勧めます。そんなとき主人公(涼子)に村内先生がFTとしてつきます。個人相談係みたいなものです。
 村内先生は、全国の学校の黒板は西側にあるといいます。99%が右利きだから、右利きが書きやすいようにできているのだと。これは左利きを例外視していると同じです。
 ところで、少し前、外部から入ってきて、いじめを受けて、大暴れし、「ひろごろし」と叫んで学校を辞めていった子(古川)がいます。主人公はその子を思うと、修学旅行で見たアナゴをおもいだします。アナゴは狭い管の中にぎっしり詰まっていないと死んでしまうのです。そんな中に虫が混じったりすると、圧殺されてしまうのです。
 主人公は、今でも古川がどこに行ったか探しています。探すことが大切なことに思えるからです。そこへ村内先生がきて、これも、いろいろと話し合った末に、大切なことと正しいことは違うと悟ります。
第八話『カッコウの卵』
 主人公は、昔荒れてて、村内先生に救われた少年です。彼は今は妻をもっています。妻は、小さいときに両親に虐待されて、今でも、熊のぬいぐるみを手放せないです。
 ある日、村内先生をみかけ、その学校まで会いにゆきます。しかし、不審者と思われ、在校生には横柄な態度をとられ、思わず殴りそうになります。
 後日、再度、会いに行ったとき、殴りそうになった子(玉井)が、「殴られ、恐喝された」と嘘をつきます。大問題になります。
 しかしそこへ村内先生が現れ、内部調査が行われます。主人公は不良だった過去があるので、不利な情勢でしたが、じっくり調査した結果、嘘だと判明します。主人公は、村内先生と話し合った結果、人間は寂しいから嘘をつくんだと知ります。
感想・心の微妙な動きが丹念に描かれていて、短い文章では説明できないのがほとんどです。でも、じわーんときます。学校だけの問題じゃないです。伝えられなかった分は、実際に手にとってもらえばわかります。

 来週はお休みです。