魔物

『魔物』大沢在昌
内容。バイカル湖のほとり小さい町の教会の司祭が聖者カシアンの描かれたイコンをリハチョフに預ける。リハチョフは麻薬(メタンフェタン)を日本に運ぶ運び屋なので、移動の途中に船からイコンを海に沈めてほしいということだった。しかし、リハチョフはロックマンに殺される。で、ロックマンが麻薬を北海道の北領組に運びこんでくる。一緒にカシアンの描かれたイコンも持っている。
 一方、麻薬取締り官の大塚は、メタンフェタンやMDMA(別名エクスタシー、バツ)の密輸の内定をしている。
ある日、協力者(国井)から、メタンフェタン2キロが小樽港に陸揚げされるという情報を得る。運び屋はロックマン。ロシアからの定期船が到着し、港で麻薬の受け渡しが行われる日、小樽港には、北海道警も張りこんでいる。
北海道警には、陽亜連合が深く食い込んでいるので、北領をつぶして陽亜に便宜を量るつもりなのではないかと、大塚は睨み、北海道警が場所を移動しろと恫喝してきたのを一蹴する。
 双方は、独自に張り込みをすることになり、ロックマンは、麻薬の入ったボストンを持ったまま、検査のために、北領のクルーザーで沖へでる。だが、あまりにも長い間かえってこないので、大塚は、別の場所に荷揚げされるのではと訝り、部下に調べさせる。と、近くにクルーザーを停泊させられる漁港があるのが判明する。そっちに移動し、なんとか、ブツは押収する。
 しかし、小樽港に戻ったロックマンが超人並の力で5人以上の刑事を投げ飛ばして、銃で撃たれたにもかかわらず、逃げたと聞く。彼は、その後、行方不明。
 大塚は国井から、ロックマンの情報を得た男(シャリーフ、パキスタン人)が北海道警にも情報を流したんじゃないかと聞き出し、シャリーフの元へ向かう。
 シャリーフのマンションから外へ出ようとすると、強風がふきつけ、いきなりオートロックでしまっていたガラス扉の中へロックマンが現れ、シャリーフを天井に放り投げて首の骨を折って殺し、部下の村岡をガラス戸に投げつけて殺す。どちらも超人級の馬鹿力だった。そして、風のように消える。何発か銃で撃って命中したが、血は出なかった。
 この点について、ロシアの司祭に聞くと、次のような返事が返ってきた。カシアンは悪霊となって、恨みなどを持つ人間に取り付く。すると、怪力が出て、銃で撃たれても死なない。目は真っ赤で邪眼になるので、まつげが異様に長くなり、それを隠す。ロックマンはその後、クラブにも現れて、同じ惨劇を繰り返すが、ここで、高森の目をかなり長い間見ていてから、突然血を吹いて死ぬ。
 今度は高森にカシアンは取り付いたようだ。高森はイコンを盗んで東京へ逃げる。
 そして、高森が同じことを繰り返す。

感想。この本は、麻取物だと思って読んだのですが、魔界物でした。魔界物は初めてだったようで、手探りで書いているような感じ。どんなベテランでも最初は難しいものですねえ。やっぱり、魔物と戦うには、『魔界都市新宿』(菊池秀行)の主人公みたいに、超人でないと難しいかな?相手は超人なのに、それと戦うのが、麻薬取締官という普通の人間なので、ちょっとちぐはぐかな?
でも、その点を無視すれば、けっこう役に立つ。特に、この人はハードボイルドを何十年も書いていて、文章は滅茶苦茶迫力があるので、ハードボイルドや警察物を書く人にとってはとても役に立つと思う。麻取物を書こうと思っている私にとっても、とても役に立った。

 来週はマンガが二本の予定。しばらくは長い小説は読めないかも。
 今まで、週に二日仕事に入って、昔の作品を手直しして、新しい作品の構想を練って資料を読んで、などでけっこう急がしかったのですが、それに加えて余計な仕事が増えてしまったため。
 個人的な事情なのですが、夫の乾癬が悪化して、週一度の掃除が毎日になったこと。後は、子供の就職試験に向けて、論文を書く挑戦を受けてしまったこと。前者については、夫が乾癬で、ラテリアを飲んでから良くなっていたのですが、喘息の薬を飲み始めてから、ラテリアと相性が悪かったようで、乾癬がまた悪化したのです。
 私は喘息の薬を変えてみればよいのでは、と提言したのですが、相手は、ストレスだと主張してゆずらず、今は、歩く後からふけのような皮膚が筋を描いて落ちる始末。まあ、簡単には直らない病気なので、諦めるしかありません。
 それと後者について。子供が、就職試験の勉強をしていないようなので、少しでも論文を書いてみたら、と進言したら、「そんなに言うなら自分でも書いてみろよ。大変なんだから」といわれ、「そうかい。そんなら、挑戦を受けたるわい」と言ってしまったのです。例えば、こんな感じーー今週のお題は、「ブット元首相暗殺と私」「格差社会と私」「薬害肝炎歩みよりと私」「原油高と私」「『公務員(主に教師)の心の病気が10年で3倍に』とわたし」で、それぞれ、400字〜800字で、毎日一つづつ。仕事のある日はパス。誰か模範回答くださーい、と叫びたい気分。