十津川警部アキバ戦争


十津川警部アキバ戦争、西村京太郎
アキバは好きで、誘拐物も好きなので、読んでみました。
アキバの人気メイドが、衣川という画家の死んだ娘にそっくりなので、一日一緒にいたら、娘と勘違いされて誘拐されたっちゅう話です。誘拐されてから初めて、十津川警部とカメさんの登場となるのですが。
身代金は一億円。画家が有名人で、一億以上の金で絵が売れたことを知っていて、かつ画家に恨みがあるか、金に困っている人間が犯人に違いない。画家が一億を用意したので、身代金運搬になります。
運搬は、画廊の店主(女性)で、『つばさ』に乗れという指示がある。ここまでは、運搬人は、逐一警察に報告してくるのですが、途中から報告してこなくなり、身代金入りのバッグは、まんまと奪われてしまう。
まあ、これくらいはネタバレしてもかまわないと思うので、いってしまいますが、同じ柄のバッグを隣の席においておいて、交換させるっちゅう手口です。このシーンは、警察側の視点なので、運搬人が、バッグを交換したのはまったくわからずに、同じバッグを持っていると思って、別の列車に乗ったのを尾行してゆきます。
で、話は飛んで、身代金運搬が行われたのに、メイドは帰ってこない。そこで、公開犯人捜査にして、捜査をすると、メイドには、オタク三銃士と呼ばれる熱烈なファンがいたことが判明。その三人は、それぞれに、特別の技術を持っている。一人は、そっくりのフィギュアを作り、もう一人は、改造ガンのマニアで、三人目は、パソコンマニア。GPSなどに詳しく、軍事衛星などにハッキングするくらいの知識がある。
この辺から、この三人の視点も入ってくる。フィギュアマニアが、5体のフィギュアを売りに出すと、それが4体まで売れる。このフィギュアにはある仕掛けがしてあって(読んでください)犯人絞込みに役立つ。
警察は、メイドが誘拐された時、タクシーを呼び、さらに、その呼ばれたタクシー運転手が、車を出そうとしたときに殴られて、身代わりが運転したことをつきとめる。このことから、タクシー運転手の家のそばにいる人間が捜査線上に浮かぶ(タクシー運転手の妻が、大声で夫を呼ぶくせがあったので)。
さらに、身代金の運搬の途中で、『つばさ』の乗車券を渡されたのだが、その乗車券を預けておいたカフェの人間に聞き込みをして、俳優のKNに似た人間だと判明。
一方、モデルガンマニアの男が、アキバのビルの裏に呼び出されて、切りつけられる。このとき、自分が改造した弾に硫酸をつめておいたので、敵はやけどのような傷を負っているはずだと判明。この三人は、リアル・シューティングゲームのマニアでもあったので、それの製作のためといって呼び出された。
警察は、病院にも捜査の手を広げる。すると、ある病院から、やけどのような症状で入院していた男がいたと報告がある。KNに似ていた。だが、逃げられてしまう。
一方、三人は、急につくばエックスプレスの沿線に引越ししてしまう。しかし、三人は、メイドが誘拐犯に協力しているかもしれないとの可能性も否定しきれないので、警察には非協力的。独自に誘拐事件を解決しようとする。
で、警察は、この引越しを、三人が手がかりをつかんだからだと推理。たとえば、ブレスレットなどに発信機を装着したものをプレゼントしてあったとする。それが、誘拐された時に、役に立って、つくばエックスプレスの沿線までGPSを使って追跡できたのではないか。
そうこうしていると、再度一億円の要求がくる。こんどは車での運搬であるが、またまんまととられてしまう。
この辺から、三人の視点が多くなり、三人は、フィギュアを使い独自に仕入れた情報から、ある電化製品販売会社の社長が怪しいとつかむ。そこはかなりの借金があって、今までの推理に合致する。つくばエックスプレスの沿線に引っ越した。で、メイドがつけていた発信機をたよりに、監禁場所を特定して、独自に奪回しにゆく(発信機つきのアクセサリーは途中で捨てられたが、近くまでつけていた)。
警察が、パソコンマニアの部屋に踏み込んで、GPS装置を発見し、その軌跡を追い、容疑者の家に踏み込んだときは、すでに三人が救出した後だった。
感想。展開が速いです。普通、誘拐物というと、身代金運搬に凝り、あちこちぐだぐだと引きずりまわすのが多いのですが、この作品では、簡単に運搬が終わってしまいます。それから、犯人絞りこみに移り、オタク三銃士がでてきて、オタクの知識が盛り込まれ、もう一度身代金運搬があって、さらに、追いつ追われつの展開が繰り広げられます。スピーディで飽きません。
ひとつだけ、ちょっと、違和感を感じたのは、盗聴器の電波が、数十キロも離れた地点まで飛ぶところと、パソコンに関してかな。
西村はんは、パソコンを使ったことがないんとちゃうかな? たとえば、容疑者の写真を受け取るとき、メールに添付して送ってもらえば、一瞬なのに、いちいち受け取りに行ったり。それから、パソコンは大きいほうが計算が速いとかっちゅう記述。
これも、今では、メモリースティック程度のものを増設すれば、いくらでも早くなるから、大きさは関係ないと思うけど。それに、メモリーを食うのは画像処理や動画だから、普通の計算くらい、小さいのでも関係ないと思うけど。でも、まあ、このお年だから、それは、しょうがないか。
総合すると、スピード感があって、とても面白かったどすえ。