その男、保釈金三億円也。

『その男、保釈金三億円也。』宮崎学(著)田中森一(監修)
『突破者』でヒットを飛ばした作者の初の本格警察小説だそうです。というより、きつね目の男としてのほうが有名かな。
私も『突破者』は好きなので、読んでみました。
感想は、文章が堅い、ですなあ。まあ、初の小説なので、しょうがないでしょうが。
たとえば、こんな感じ。
「寒い」と原田が言った。
これを、黒川博行だったら、どうなるか。
ーーさぶいのう。おぬし、何とかせーや。
ーー何とかって、いわれてもなあ。いくら極道でもでけることとでけんことがおます。
ーーでけんことをするのが極道なんじゃろうが。そこらの板塀でもはがして燃せーや。
ーーおおこわ。これだから、4課のおやっさんは怖いですわ。極道顔負けでんなあ。
てな、感じになります。
まあ、純文学みたいに、『寒風が背筋に粟粒を生じさせる』みたいな堅さとは違いますが、堅いでんなあ。
で、思うのですが、『突破者』は『不肖宮島、死んでもカメラを放しません』みたいで、体験談風で、面白くてヒットしたのですから、今後もその路線でゆけばいいと思うのですよ。今から小説に変更するのは、結構大変で、ある程度のヒットまでには平均でも10年はかかりますなあ。
普通に文章をかければいいってもんではないです。登場人物(特に主人公)のキャラが際立っていなければおもしろくありません。
たとえば、黒川博行は、主人公は、やくざの親分の息子なんですが、気弱な人間で、相手役が、極道顔負けの悪の4課のデカさんで、ちょっと頭の足りなくて、短気だけど気のいい極道なんかも多数出てきて面白いです。
それから、『古畑任三郎』では、主人公は、時に部下には非常識に厳しいです。
それから、梓林太郎などは、普段、部下の盗聴なんかをしていて、部下のちょろまかしなどを把握していて、いやな仕事をさせるときだけ、その情報をちらつかせて、無理にさせたりします。この辺の小市民的なキャラは思わず共感してしまいます。
こういうキャラの立った人物を考えなくちゃいけないし、それから、ネタも、もっと大きいものを扱わなくちゃなりません。この本のネタは、リフォーム詐欺ですが、漫画『クロサギ』でも、もっと大きな詐欺のネタを扱っていて、一般読者は、それに慣れているし。
思うに、この本が地味なのは、一部で有名な人間を監修につけたから、だと思われるのですが。きつね目の男として十分に有名なのですから、一人だけで、体験談風にリポートなり、裏社会の事情なりを書いたほうが、ずっと面白くなると思いますが。
でも、警察小説を書く人は、専門用語がでてくるので、参考にはなりますえ。

追伸。先週、ヤフーにアップした、トイレの水タンクにペットボトルを入れる方法は、水があふれてしまうので、今、小さいボトルにしたりして、研究中です。どこかで節水道具を発売してくれないかしら。