治験

『治験』仙川環
医療ジャーナリストの書いた医学ミステリーです。いやあ、改行が多くて読みやすかったです。
内容。主人公は、ハローワークから出てきたところで、アメリカ人の男に呼び止められる。一千万(一年間)の報酬で、健康食品の日本代理店をやって欲しい。仕事は、インターネットのホームページを立ち上げ、希望者に健康食品を送るだけ。おいしい仕事だと思って始める。だが、日本向けの資料には、癌にも効くと書いてある。ちょっと胡散臭いものを感じるが、小規模でやっていれば、薬事法にひっかかって、逮捕という事態にはならないだろうと、タカをくくって始める。と、末期がんの患者からすぐに送ってくれとメールが飛び込み、50人ほどに送る。しかし、そのうち、その健康食品を食べて、肝臓に異変をきたした患者がいるから、サンプルを遅れ、とある医者から呼び出しをくらう。いやなものを感じて自分が健康食品を送っていた患者を訪ねると、二名ほどが肝硬変で死んでいた。
そんな時、自分と同じく、その薬を調べている女性が尋ねてくる。その女性は、アメリカでかなり地位の高い研究職についているが、自分の母親が、その食品を友人に紹介して、その人を死に至らせたので、この食品の販売元をつきとめようとしている。もし、この食品を販売したことが新聞沙汰になると、自分の地位が危ない。しかし、二人が調査に乗り出すと間もなく、アメリカの販売元は会社をクローズしてしまう。二人は、しょうがなくて、販売元が共同研究をしていると詠っているホー教授にメールを送る。すると、ホー教授は勝手に名前を使われたと怒って、電話をしてくる。
ホー教授は、販売元のパンフレットを読み、それは、健康食品ではないと言う。パンフレットでは、その健康食品には、遺伝子の型によって、合う人と合わない人がいると書いてある。だが、これは、健康食品なんかではなく、ある薬品が、遺伝子の型によって合うかどうかを見極める、違法な人体実験なのではないか、と言う。
二人は、ホー教授に説明するために、アメリカに行き、ホー教授の参加したパーティで、販売した男が誰かを突き止めようとする。最初に出会ったときに、販売主の写真を撮っておいたので、その写真を見せて回ると、知っている教授が現れ、その男の名刺を見せてくれる。それによると、その男の会社は、アメリカ中部の都市にあるらしい。主人公はその住所に一人で行くが、裏にマフィアまがいの組織が介在していたらしく、拉致され、縛られて、川に投げられてしまう。だが、必死で抜け出し、助かる。そして、一緒に行った女性に助けを求め、ようやく背後にあった組織を壊滅に導く。
感想。医療ジャーナリストが書いているだけあって、リアリティがあります。この人は、小学館の文庫大賞でデビューした人で、その作品、『感染』も面白かったです。こっちは、豚の臓器をこっそり、人間に移植してしまう話です。アメリカのある大学病院では、裏で臓器売買がおこなわれていて、主人公の夫の子供(現在は離婚しているので、妻が育てている)も移植を受けた。移植した子供は他にも二人いる。だが、その子供たちの二人までが殺されてしまう。(一人は誘拐されて殺され、一人は火事で)。主人公は、大学のウイルス研究所にいるので、この事件に不審なものを感じる。(移植費用が8千万と異様に高い。アメリカに行って、すぐにドナーが見つかって、移植手術が行われたなど)。
で、途中、誘拐事件とか色々あって、錯綜しているので、どーんと飛んで、最後。最後には、主人公の夫がアメリカの病院へ、移植を待つ子供を紹介した。しかし、臓器売買用の臓器が手に入らなかったとき、豚の臓器を遺伝子操作で、免疫反応が起こらないような処置をして、移植がなされた、ということが判明する。だが、移植後、有害なウイルスが混入していたことが判明。そのウイルスは、その子を殺してしまわないと、消滅できない。
それを知った病院の同僚などが、火事などを起こしていた。
こちらも、迫力のある内容でした。