救命センター部長ファイル

『救命センター部長ファイル』浜辺祐一
下町の救命センターの部長が、体験した症例を解説した作品。最初は、交通事故。単独で車でガードレールに衝突。脚を切除するかどうか、ぎりぎりの状態。詳しく説明すると、患者は、肋骨が折れ、肺に穴が開き、皮下気腫があり、血圧も下がり、生死に関わる状態。おまけに膝の大動脈も破裂していて大出血。こんなときは、生かすために、足を切断するらしい。
で、何とか切断はまぬがれるが、長期入院してリハビリし、その後、退院して、数日後、今度は歩道橋から飛び降りてまた運びこまれた。このときは心配停止状態で、自殺と思われた。
後に分かるのだが、この人は、多額の借金をかかえ、自分に多額の保険をかけていたのだった。だから、最初のも自殺未遂だったのだ。
第二話は、子供が突然死した話。こんなときは、行政解剖にまわして、死因をはっきりさせないとだめなのだとか。この場合、夫は、妻がうっかり目を離して過失で死なせたのではと疑い、妻は、実際は姑に面倒をみてもらっていたので、姑が何かしたのでは、と疑うのだとか。
第三話。階段から落ちて脳挫傷でかつぎこまれたケース。死ぬか、あるいは、脳の手術をしても、生きるかどうかのぎりぎりの状態。ところで、脳は、酸素がいかなくて、数分すると、死亡するのだとか(心臓は、一時間後でも蘇生できるのに)。で、この場合は、とうにその数分をすぎていたので、脳の手術をしても、植物人間になるのはわかっていた。そこで、若い医者は、それを患者の家族に話して、手術するかどうかを決めてもらった。結果、家族は手術をしないことを選択。患者は死んだ。ここで、部長は、それでも手術をすべきだったと言い、若い医者と対立する。
第四話は、ホームレスの話。身寄りがないと、全額、国からの税金での支払いになるのだとか。それが分かっているから、若い医者はできるだけ、無駄な手術などは避けて、税金の節約をすべきだと主張。しかし、部長は、ホームレスだとは言え、最善の処置をすべきだと主張。ここでも対立。このケースの場合、最善の処置をしたのだが、結局植物状態になっただけだった。
感想。なんか、重い話ばかりで、考えさせられます。
ところで、私がなんで、この本を取り上げたかというと、基本を丁寧に解説してくれているから。私たち素人が医学小説(ミステリーに関わらず)に手を出す場合、まねをして(最悪、コピー&ペーストして)、書くしかないんだよね。でも、そのままだと、パクリになってしまうから、少々変えるんだよね。で、意識レベルが100、200、300とあるらしいので、それを借りる場合、150とか少し変えればいいかと思っていたんだよ。だが、この本を読んで、そんなことをしたら、度素人だとばればれになっちまうと知って、ドギャーっつう気分だったんだよ。
というのは、意識レベルには、100、200、300しかないんだって。でも、それって頭くるよね。1、2、3、なら変えようがないけど、100、200、300だったら、250くらいあるかもしれないと思うじゃん。こんな数字を考えた奴は、どこのどいつだろうね。
でもまあ、この本を読んでよかったわ。一発アウトを免れたもの。
この本は、そういう基本をじっくりと解説してくれているので、ありがたい。