ガリレオの苦悩

ガリレオの苦悩』東野圭吾
内容。ガリレオシリーズの最新作です。レーザー光線とか出てくるあのガリレオシリーズです。理系のミステリーはいいですねえ。新鮮さがあります。文系のミステリーはもういきずまってしまった感があり、面白くありません。今年も何作か出ましたが、所詮、語り部が嘘をつくとか、鍵を二つにするとか(『卒業生』の発展形です)、スケート場を回転させるとか(この変形で、雪の庭や雪の屋上を回転というのもありました)、くらいです。文系の作家で今年おもしろかったのは、五十嵐貴久と黒武洋くらいでしょうか。これからは理系の作家に期待しましょう。あとは医学部の作家も新境地を拓いてくれそうな気がします。
1、落下る。ピザの配達人がマンションの前である男にぶつかります。その直後、そのマンションから女性が落ちてきます。でもって、刑事の内海と草薙の登場です。部屋の鍵は開いていて、落ちてきた女(江島千夏)の死因は、墜落死だが、その直前に、鈍器で殴られた打撲紺があります。それらの情報から、内海は、犯人が殴って失神させておいて、何らかのトリックを使って突き落としたと推理します。
 ところで、墜落直前に、この部屋を出て行った男が名乗り出てきます(岡崎光也)。彼によると、自分は、墜落の十分前に部屋を出たが、落ちた時には、ピザの配達人と一緒だったので、自分は犯人ではない。一方、内海は、別の恋人がいるのではと思い、千夏の勤めていた銀行に行きます。すると、暗証番号の変更届けの紙が出てきます。これと、千夏の部屋に結婚情報誌があったことから、結婚しようとしていた男がいると推理。で、捜査陣は、何のトリックを使ったのかを考えます。部屋にあったのは掃除機。そこで、湯川に相談して、湯川は掃除機でタイマー殺人のトリックを検証します。(その方法は読んでください。面白く、一見、ありそうですから。それに、鍋の実験も超ありそうで面白いです)。
しかし、現実は、岡崎にふられた腹いせの飛び降りだった。
2、操縦る。どうしようもない不良息子の邦宏がいる。彼は、子供の頃離婚して、母親に引き取られたが、父親に捨てられたと思っている。最近、父親(友永)の家に乗り込んできて、住み着いている。父親は車いす。内縁の妻の連れ子の奈美恵が世話をしている。邦宏は、この奈美恵にまで手をつけ、自分の借金も父親に肩がわりさせている。(つまり殺されて当然の奴です。ガンガン殺してって言いたくなるわよね)。
で、湯川たち大学の同僚がこの元大学教授の家に招待された夜。パリンというガラスの割れるような音がして、離れが火事になり、この息子が殺されて発見される。
父親は昔、大学の教授で、メタルの魔術師と呼ばれていた。(つまり、メタルをどうにかして不詳の息子を殺したらしい)。
死体を検証した結果、長い刀のような刃物で刺されたらしい。しかし凶器は発見できない。すると、爆薬が発見される。トリメチレントニトロアミン
結果を言ってしまうと、犯人は父親です。この爆薬と金属を使って、刃物を作って殺人をした。刃物の作り方を知りたい方は読んでください。ついでながら、刃物が命中するように、電話をかけて、馬鹿息子を窓辺に立たせて命中させたらしいです。爽快です。
3、密室る。ある雪国。藤村は湯川に相談があって呼んだ。藤村の経営しているペンションで、密室殺人があったらしい。まあ、そう疑っているのは、藤村だけだが。現実だけみると、その証拠はない。
で、詳しく言うと、十日前。客(原口)が夕食に現れなかった。8時まで待ったがこないので見にゆくと、部屋は鍵が閉まっていた。窓にもクレセント錠が下りていた。その後、9時ころ、部屋には人の気配がした。それで安心していると、他の客が、原口の部屋の窓が開いているといった。見にゆくと、本当にあいていた。翌朝、原口が崖から落ちて死んでいた。
8時ころ、義理の弟(妻の弟)と一緒に窓の外から見た時は、密室だったが、ストーブがたかれていなかった。北国なので、ストーブをたかなくては寒くていられない。そこに藤村は疑問を感じた。
 湯川がいろいろと調べ始めると、藤村は急に態度を急変させて、もう調べるのはやめたいから帰ってくれと言う。でも、湯川は調べ、真実を突き止める。でもって、犯人から言ってしまうと、8時ころ、外から見て「密室だ」といった妻の弟と妻。妻は、昔、人に言えない仕事をしていて、それを知った原口にゆすられていた。ま、殺されて当然だけど。これも爽快。
でもって、密室にみせかけておいた方法は、読んでください。これは子どもの玩具にもあるもの。でも、その語り口は現実味があって、引きずり込まれる。
4、指標す。ダウジングの話です。
 野平加世子(金貸し)が殺された。家にはすべて鍵がかかっていた。犯人は顔見知りで、鍵を開けさせて、殺して、玄関のかぎを掛けて出て行ったようだ。通帳と宝石、貴金属が盗まれていた。金の地金十キロも。これは仏壇の隠し箱に入っていたので、それを知っている者にしか盗れない。それから、犬が行方不明。
セールスレディの真瀬貴美子が保険契約をしていた。彼女は犬が恐くてのぞいているところも目撃されている。
彼女は、隠し箱のことは知っていた。それを誰に話したかはうろ覚え。真瀬の家に金の延べ棒はなかった。娘の葉月が、「私も隠し箱のことはお母さんから聞いて知っていたので、他にも話したんじゃないの」と言う。
ところで、貴美子の上司に碓井俊和がいる。貴美子と結婚の約束をしている。刑事たちが貴美子親子を尾行していると、葉月がダウジングをしているのを目撃。そして、ゴミ捨て場で、行方不明の犬を発見する。
ダウジングの科学的信憑性を聞きに湯川のもとに内海が来るが、湯川は、否定する。湯川の推理は次。犬がいなくなったのは、犬がいて困るような事態が起こったので、犯人が犬を殺して捨てたのだろう。でもって、犬がいて困るような事態とは、犬にかまれるとかして、犬の歯に、自分の血が残ったような事態ではないか。そうであるなら、犬にかまれた跡のある人間で、かつ、隠し箱の存在を知っている人間、当然ながら、貴美子と親しい人間が犯人と絞り込める。これから犯人は判明。
ところで、ダウジングに関して。ゴミ捨て場に犬の死骸があるだろうと予想したのは葉月であり、ダウジングの結果ではない。では、なぜダウジングをしたか。そうやって、犬の死骸が見つかったら犯人は分かってしまう。それまでやっていいのかと自分に問いかけていた行為。
それにしても、科学ミステリーと銘打っている所にダウジングを持ち込むとは。東野圭吾の才気には舌を巻きます。
5、撹乱す。車を運転していて、急な耳鳴りやめまいがして、事故を起こす例が続いている。そして、湯川には挑戦状がくる。なぞ解きは、音響効果を使った科学の最先端です。説明は難しいので読んでください。それにしても、理系ミステリーは面白い。

次の写真は、私の属している一歩会の会員の佐々木さんが出版した本です。佐々木さんは元NHKのプロデューサーでもあります。一歩会は推理作家協会会員(私です。商業出版してないとなれないんだよ)や元NHKのプロデューサーや各新人賞の受賞者が属しています。一歩会に参加して作品を添削指導してもらいたい人の参加を待ってます。参加したい人は、プロフィールから公式ホームページに飛んで、メイルで。

次の写真は、最近私のこっているもの。安全ピンリフォームです。上のは、ポンチョの下から安全ピンでマフラーを留めたもの。下は、1500円のマフラーを6本、安全ピンでつないだもの。

先週の続き。SPASHよ、「長沢ちゃん」を復活しろっつうの。でなきゃ、こうじゃーー。