螺鈿迷宮

螺鈿迷宮』海堂尊
時間的に言うと、『ジェネラル・ルージュの凱旋』の後の話です。『ジェネラル・ルージュ』でとたとたと走り、覚束ない足取りであちこちにぶつかりながら、東城病院で修行していた姫宮が、桜宮病院に行って潜入捜査しています。
内容。僕(天馬大吉)が、友達の新聞記者・葉子に頼まれて、桜宮病院に潜入捜査にきます。いえ、表向きは、ボランティア募集に応じただけ。調査内容は、厚労省から、新聞社に、『介護保険関連事業において、終末期医療モデル施策を検討中で、その候補病院に指名したい』、とお願いされたのだとか。それに、この他にも、麻雀で負かされた相手(結城)の義理の息子が、桜宮病院に潜入したままゆくへ不明になっているらしい。
中に入ると、姫宮のミスで、骨折と熱傷をしてしまう。おかげで、どうどうと病院の中を歩ける身になる。
そこで、いろんな人に会って話を聞くと、この病院では老人介護は碧翆院という別の医療施設を作っていて、そこに入院している患者を、会社員として契約して、働かせている(老人介護でなくても、癌の末期とかの終末医療でも)。というのも、病院で寝たきりでいるより、調理や配膳などの仕事をしているほうが長生きできるらしい。(会社組織にして会社員契約させるのは、死亡時の集団保険をかけられるため、と後でわかる。どうせ死ぬのだから、保険金は病院に入る)。
他にもこの病院には怪しいことがいろいろある。たとえば、死亡した患者をすぐに解剖してしまうとか。あるいは、防犯カメラの録画映像を調べてみると、結城の義理の息子は、入った記録はあるのだが、出た記録はないので、殺された? らしいとか。あるいは、五階に上がった患者は、必ずその夜に死ぬとか。その際、院長夫人が真紅の薔薇を渡し、娘のすみれが同じ部屋に泊まるとか。
で、そのうち、白鳥も皮膚科の医者として乗り込んできて、いろいろと調べてみると、どうも、ネットを通じて、自殺志願者を募り、その人の自殺ほう助をしているらしい。自殺ほう助という点だけからみると、うつ病の患者も癌の末期で痛みに耐えられない患者もその対象となるらしい。
そんでもって、さらに調べてゆくと、院長夫妻には、すみれと小百合のほかにも葵という名の娘がいて、その子が、少年に顔を傷つけられ、それが原因で自殺したことが判明する。で、単純に考えると、結城の義理の息子は、ヤクザだけあって、昔(少年時代)からいろいろと悪いことをやっていて、殺されたとするなら、院長夫妻がこいつに恨みがあるんではないか、と推測される。まあ、それは、最後に、葵を傷つけておきながら、少年ということで、実名も明かされず、のうのうと生活していたのは、こいつだと判明するのだが。(院長夫妻は、警察に太いパイプを持っているので、こいつの名前を突き止めらた)。
さらに、レトリックの魔法にかかって、トロトロと読み進んでいると、主人公がいきなり、注射で殺されそうになったりする。そんでもって、最後には、アッシャー家の崩壊のような、派手な落日が待っているのだが。

感想。いいですねえ。出版社が違ったせいか、レトリックが超多いです。登場人物のキャラのが際立っているのは、いつものことですが。今回は、特に女性向きですねえ。戦争を生き抜いた、従軍外科医の銀獅子、院長。螺鈿で自分の世界を構築して、その中に閉じこもる、院長夫人。双子の美人姉妹。院長の娘なんだけど、ばりばりのキャリアウーマンのすみれと、影の存在で、つめの甘い小百合。医学部の授業をさぼり、いかさま麻雀で無為の毎日を過ごしている、主人公。剃刀のような相貌をもつ企業舎弟(ヤクザ)の結城。癌の末期にありながら、若い男に眼のない三婆。などなど。舌を巻くうまさです。
特に院長夫人がいいです。彼女は、真紅の薔薇で人間の死期を悟るんだとか。ま、それは、それ、一応ミステリーですから、裏があります。でも、文章だけ読んでゆくとまるで宝塚です。「わが名を呼ばわるは、誰ぞ? 薄暗闇に見ゆるは、金髪の麗人であろうか」「何を隠そう、わが名はアンドレイ。愛しきオスカルをここまで追ってまいったのじゃ」なんて、まさにベルバラ。宝塚大好きの私としては、うっとりでした。
安全ピンリフォーム2回目。上はファーのマフラー三本を安全ピンでつなぎ、昔はやったチェーンのベルトを組み合わせたもの。下は、飽きたカーディガンにファーのマフラーを留めたもの。


先週の続き。SPASHよ、「長沢ちゃん」を復活しろっつうの。でなきゃ、こうじゃーー。