臨床心理、時計館の殺人

『臨床真理」柚月裕子

1、救急車の中で、リストカットした水野彩が死ぬ。このとき、一緒に乗り込んできた司が、施設長の安藤に、「お前が殺した」という。

2、カウンセラーの美帆は、司のカウンセリングを始める。司は、自分は、色で人の心がわかると言う。真実を言っているときは白。嘘の時は赤。

3、美帆は、彩のいた施設(至誠学園)の物置から、彩の遺品を盗む。一方、独自の調べで、東郷製作所が、至誠学園の生徒を非常に多く雇っていること、障害者就労支援センターの至誠学園へのランク付けが異常に高いことを発見。この二つを疑い始める。障害者就労支援センター長の西澤の言葉を司は嘘だという。

4同級生の栗木(刑事)に頼んで調べてもらう。至誠学園から東郷製作所に雇用が増えたのは、三年前、彩が入所した頃から。その時見せた集合写真にいた女の子、可奈。ネットのわいせつ写真に写っていた。

5、美帆が見張っていると、安藤が可奈を車でホテルへ連れてゆく。そのあと、障害者就労支援センター長の西澤が入った。

6、一方、自分の勤めている病院に帰った美帆に上司の高城が言う。「君を信用しているので、今までの経緯を話してくれ」。美帆は信用しているので話す。そのあと、西澤の家に家宅捜索が入る。大量のエロDVDが出てきた。可奈の写真も。

7、一方、美帆は、彩のDVDの内容を読もうとしている。自分だけにわかる暗号が入っていて、なかなか分からない。それを病院の共有ホルダーでやっていたので、高城に見られたらしい。高城に尾行され、後ろから殴られる。そして、どこかの地下に連れ込まれ、殺されそうになる。さて、栗木と司は美帆の連れ去られたことを察知するが、助けられるか?場所の特定はできるか?
感想。レスキューの場面が出てきますねえ。私が去年、医療ミステリーのかなり多く取り上げたので、医療ミステリーがブームになって、この人にも影響を与えた?としたら、嬉しい限りですが。
内容はけっこう地味ですねえ。それに、途中で犯人も動機もほぼわかってしまいますねえ。どんでん返しもないし。江戸川乱歩賞もすっげえ地味なのが選ばれていたし。本格推理が一時ブームでネタが行き着くところまで行ってしまったので、こういうオーソドックスで地味なミステリーに還っているのでしょうか。
それにしても、人の声が色つきで見えて、嘘かどうかが分かるというのは、SF的で面白かったです。そういえば、第一回の受賞作、「四日間の秘蹟」も魂が入れ替わる話でした。ガチガチのミステリーではなくて、こういうSFチックなのは、これからも可能性があるかも。

時計館の殺人綾辻行人(名作復活シリーズ)

1、「幽霊で有名な時計館で交霊会をするんですよ。きませんか?」
参加するのは、CHAOSの副編集長の江南と、カメラマンの内海。他は、W大のミステリー研の6人。この6人は、小学校の時からの持ち上がり。

2、交霊会には霊能力者の光明寺美琴が来る。午後六時に、福西以外の6人は館へ。食料は持ち込む。水も。美琴が来て、霊が嫌うというので、時計などを外し、服も脱いで、霊衣になる。これは、旧館(時計館)。一方、新館の方では、遅れてきた、鹿谷と福西が伊波紗世子の話を聞いている。「10年前に永遠(とわ)という名の娘が死んだ。その弟の由季弥はそれから少し変」。会うと、華奢で色の白い子。(17歳)

3、7月30日の午後9時。交霊会がある。翌日の午前3時半、江南は美琴の話声を聞く。同時刻、新館では、紗世子から、鹿谷に電話。(一度帰った後、食事への誘いの電話)。同日、午後三時。旧館では、江南と小早川が、壊れた時計と、大量の血痕を発見。美琴は行方不明になっている。

4、8月1日の午前〇時。旧館では、早紀子と渡辺が殺される。こずえ、仮面の人物を目撃。美琴の香水と同じ香水をつけていた。(本人か、それとも、別人の偽装か?)。同時に、大量にある時計のいくつかが壊されていた。

5、8月1日、午前8時。江南たちが告発文を発見した頃。新館では、紗世子が鹿谷と福西に昔話をしていた。「10年前、永遠は、車いすで落とし穴に落ち、大怪我。それが原因で自殺」福西は、10年前にここで合宿をしていて、おとし穴を掘ったことを思い出す。

6、同日。12時(旧館)江南、瓜生の死体を発見。犯人の影を見る。同じ頃、新館では、紗世子と鹿谷と福西が話中。

7、同日。13時。(旧館)河原崎が殺される。同じ頃、新館では、紗世子と鹿谷と福西は書斎にいた。

8、8月2日。1時(旧館)江南が襲われて失神。同じ頃。新館では、紗世子が鹿谷と福西と一緒にいた。永遠(とわ)の父の日記を発見。「10年前落とし穴を掘った人間は次だ。瓜生、河原崎、渡辺涼太、樫早紀子」

9、同日。14時30分。(旧館)。福西が「昔は渡辺だった」と告白した後、姿が消える。そして、18時。福西が塔から突き落とされているのが発見される。→重体だったので病院へ。鹿谷と紗世子は旧館へ。そこで、からくり時計が動いて、地下の階段が見えているのを発見。

10、鹿谷は失神していた江南を発見。彼のメモを見ながら、アリバイのない人間を探し始める。
まず、同機であるが、永遠の父の日記より、おとし穴を掘った4人への復讐が目的だったのではないか。瓜生、河原崎、樫早紀子はそれに該当する。渡辺涼介は、涼太と間違われて殺されたのではないか?
では、犯人は誰か? 殺人が起こったとき、いつもアリバイのないのは、由季弥と美琴(死んでいないと仮定した場合)。美琴は、永遠の怪我の責任を取らされて自殺した女(看護婦)の妹。

11、その後。地下室から、こずえの死体と美琴の死体発見。由季弥も飛び降り自殺。
となると、犯人は、美琴でも由季弥でもない?→犯人が別にいると仮定してみよう。
まず、内海が殺されたのはなぜ?→フィルムが抜かれカメラが壊されてことから、写真にまずい事実が写っていたのではないか?→写真には、時刻が写りこむ。→時間が重要な要素を占める。
その後、福西が覚醒する。→紗世子につきおとされたと証言。→紗世子犯人説浮上。
それに、大量の時計が壊されたのはなぜ?→犯行時刻を江南に覚えさせるため?
それと、福西は、紗世子に「自分は渡辺だった」と告白した後につきおとされている。→紗世子犯人説、確定。
動機について。永遠(とわ)の話は、すべて、紗世子が話したこと。実は紗世子にも娘がいて、10年前に死んだのではないか。→しかし、紗世子は隠し通路を使って旧館に出入りしたとしても、すべての犯行時にアリバイがある。
しかし、旧館の中の時間の長さと、外の時間の長さが違ったら、江南の記憶していた時間、壊された時計の時間は、すべて間違いということになる。そして、紗世子のアリバイも崩れる。
それでは、時計の偽装はどうやったか?→超有名なトリックは、本の552ページ以降に書かれています。すっごい単純なんだけど、仰天同地のトリックです。時計の部品のXXを10ヶXXするだけ。
来週は、「心とろかすような」(宮部みゆき)の予定。動物ものが多いのは、動物ものに凝っているから。