ラットマン、心とろかすような

『ラットマン』道尾秀介

1、僕・姫川亮にはつきあっている女の子がいる。ひかり。彼女が妊娠しと言った。自分はいつもコンドームを使うので、別の男の子だ。浮気をしている。殺意が芽生える。亮は30歳。高校の頃からジミ・ヘンドリックスコピーバンドをしている。仲間は竹内と谷尾。途中までひかりがドラムをやっていたが、今は彼女の妹の桂がやっている。
ところで、亮の過去。中学の頃、姉が窓から落ちて死んだ。そのとき、姉は、看護師を驚かせるために窓で飾り付けをしていた。僕が看護師を連れて帰ると、姉は落ちた後で、父が最初の発見者。母は買い物から帰ったばかりだったが、最初に見にゆかせた本当に事故か?父は癌の末期で、ほぼ寝たきり。

2、ここで視点が変わって。練習の後、ひかりと野際氏(スタジオの経営者)の姿が見えない。別れて探す。竹内と谷尾は倉庫へ。中で、大きな物がつかえていてドアが開かない。力を入れて動かすと、中は、ブレーカーが落ちていて、真っ暗。それから、アンプが落ちていてそれに打たれてひかりが死んでいた。そのとき後ろから、亮が帰ってきた。

3、倉庫にはシャッターがあった。それは直で外へ行ける。シャッターの鍵はひかりのポケットの中にあった。練習の後は桂が受付で見張りをしていた。

4、谷尾と竹内の推理。死亡推定時刻の四時頃、アリバイのないのは亮だけ。一分半くらい。亮はトイレに抜け出した時、殺して、扉の前に重い物を置き、倉庫だけブレーカーを落とすような電力を使って、中を暗くした。シャッターから外に出た。このときシャッターの鍵を持っている。そして練習の終わった後、野際を探すふりをして、シャッターから入って、シャッターの鍵をひかりのポケットに戻して、扉の後ろに隠れて待っていた。そして、竹内と谷尾がもたもたして扉を開けた後に、扉の後ろに隠れていて、外から戻ったふりをして後ろから声をかけた。これなら可能だ。

5、ここで又視点が変わって。亮は桂とも関係を持っていた。桂と姉のひかりとは冷戦状態になっていたらしい。桂から亮へは、「やったのはあなたね」とメールが入る。
で、ここからは亮の告白。自分はトイレに行った時、ひかりはすでに死んでいた。その前に倉庫にいったのは桂だけだから、桂がやったのだと思った。それで、事故に見えるように偽装工作をした。23年前の姉の死を思い出したからだ。あの頃、母は精神的に壊れていた。おまけに姉は、毎晩誰かに虐待されていると言った。父は姉を可愛がっていたから、虐待していたのは母か。そんな中で姉が死んだ。癌の末期の父はほぼ寝たきり。で第一発見者となったが、あれが事故でないとすると、やったのはアリバイのない母。後ろから突き落とせば簡単。で、そう判断した父は偽装工作をしたのではないか。つまり、あの時、息子を守るため(母が逮捕されたら生活できない)に偽装工作をせざるを得なかった。今回は、桂を愛していたから、偽装工作をした。
だが、警察の調べで、とんでもないドンデン返しが。
感想。すごい才能だ。康正の視点が主だが、康正だと思わせといて、その主人公が告白までしておいて、ドンデン返しにするとは。きっと基本に忠実で、ミスディレがきちんと機能しているから驚くのだと思う。

『心とろかすような』宮部みゆき(名作復活シリーズ)
第二話、「手のひらの森の下で」

1、マサ(犬)とカヨちゃんと藤実さんは、毎朝、6時10分から、手のひらの森の同じ場所をジョギングする。男の死体(?)がある。脈がないが、血の匂いはしない。血糊の匂いだ。カヨちゃんと藤実さんが警察に行っている間に、死体が逃げる。マサが追いかけるが、途中で後ろから殴られて失神。

2、藤実さん情報。密告電話があった。逃げたのは伊波洋。遺留品から血糊が発見された。あれは狂言よ。彼は暴力団の中で、独自に薬物販売をしていて、親分から追われていた。自分を死んだことにするためにやったのよ。新聞少年の話では、近くに弟の孝が住んでいる。溜っていたガス代を清算した。

3、警察に問い詰められて、弟が白状した。「あれは僕の狂言でした。兄きを海外に逃がすため。犬を後ろから殴ったのも僕」

4、マサ「嘘だ。孝が逃げているのを追いかけている途中に後ろから殴られた」。その後、孝の家に行く。藤実さんにだけは、コーヒーでなくて紅茶を出した。→前から知っている。その後、孝が務めている両国屋に行って、店長に話を聞いた。「狂言の事件のあった日、6時40分に金庫から大金が盗まれた。店の鍵を使っているので、店の関係者だ」

5、内部の人間の犯行としか思えないが、鍵を持つ人間、全員にアリバイがあった。特に孝のは強力。しかし、カヨちゃんは言った。「孝の手相を見て、なぞは解けた。孝にはマスカケ線がない」

6、「死体役の男にはマスカケ線があった。それに、孝は前から藤実さんと知り合い」「つまり、死体役は兄貴。マサを殴ったのは藤実さん。孝はその間に金を盗んでいた」

第三話「白い騎士は歌う」

1、相沢一郎が殺された。死亡推定時刻は、午後8時過ぎ。1200万が盗まれた。この日、金を下ろしたばかりなので、内部犯。その時間に相沢とおお喧嘩をしていた敏彦が指名手配された。
2、カヨちゃんとマサは調査に乗り出す。ブン屋の奥村が情報をくれる。この会社にはもう二人あやしい社員がいて、同じ頃に社長室によってかえっている。一人は、宇田川達郎(金使いが荒い)。もう一人は秋末次郎(こっちはそれほど金使いは荒くない)。二人は秋末の家に行く。すると、息子がヒロポン中毒であることが判明。息子は絵描きを目指している。父親はパリに留学させたがっている。息子の絵をくれる。


3、相沢夫人に話を聞いた。夫人の言「敏彦は、前、200万の借金を申し出した時、自分は白い騎士ですと言った。幸せそうだった」
カヨちゃんとマサは敏彦の足取りを追った。すると、友達が敏彦について話してくれた。「敏彦はある喫茶店で、白衣でサンダルばきの男に書類を渡していた。金も渡したようだった」



4、カヨちゃんが、その喫茶店から一キロ以内の病院を探して、戸山クリニックを探しあてた。そこには伊東あけみという少女が入院していた。彼女の言「敏彦は、薬物中毒を直せと、入院させてくれた。二〇〇万も払ってくれた」
これで、敏彦の金の目的が分かった。ところで、マサは絵が匂うと気がつく。そこで、もらった秋末の家に行き、においで探して、敏彦の死体を発見した。秋末は、息子のヒロポン中毒を社長に責められて、とっさに殺してしまった。その時に敏彦が帰ってきたので、敏彦も殺した。
この他にじわーんとくる話が二編。お勧め。来週の名作復活は「ひまわりの咲かない夏」次は「パーフェクト・ブルー」の予定。
映画『ワルキューレ』将校がヒットラーを暗殺しようとする話。イメージとしては下。