からすの親指、ひまわりの咲かない夏

カラスの親指道尾秀介

1、武沢、テツと知り合う。3月前、鍵穴にボンドが詰め込まれ、鍵の修理のちらしが張られていた。テツの過去。妻が借金して死亡。それがきっかけで詐欺師に。武沢の過去。12年前、友達の借金の保証人になって、借金を背負いこむ。

2、借金を返せなくなった武沢は、闇金業者のヒグチを紹介される。で、取り立てやを始める。母子家庭で「わたぬき」をする。一緒に銀行まで行って、電気とかガス代にと取っておいた金を無理やり下ろさせて、借金返済をさせる。それがきっかけで、その母親はリストカットして死亡。

3、ショックを感じた武沢は、警察に自首。組は解散し、ヒグチは逮捕される。しかし、武沢の家は燃やされ、娘の沙代が死亡。

4、現在に話は戻って。二人は骨董屋で詐欺をする。まず武沢が「今話題になりつつある無斉の物です。10万くらいで買って下さい」と言って壺を持ち込む。そのすぐあとに、テツが店に行き、「これは話題になりかけの無斉のものだ。20万で買うぞ。今、銀行で金を下ろしてくる」と言ってさる。そのあと、また武沢が店に行く。店主は20万で売れると確信があるから、10万程度で買う。

5、一方、すりをする少女がいる。まひろ。この少女がすりをして逃げているのを二人は目撃する。で、同業者とみなして、助ける。方法は、武沢が逃げるまひろと被害者の間に入る。まひろはすった財布を投げ返す。で、まひろを助け、友達になる。まひろは、7年前、母が借金返済を迫られ、リストカットして死亡したと言う。

6、一緒に住む。まひろは、武沢が7年前に母親を死亡させた娘に似ている。おまけに、それを心苦しく思って、毎月お金を送っていたのだが、その合計が200万になる。まひろは、鞄に200万を隠している。いよいよ、あの少女だと確信する。一方、また、家に火をつけられ、飼い猫を殺される。

7、テツが、ヒグチに復讐しようと言いだす。まず、尾行して部屋を突き止め、盗聴器を仕込んだケータイを送りつける。

8、銀行からのお知らせを偽造して、「違法取引口座と疑わしき口座を抹消します」と手紙を送る。ヒグチたちは、金を下ろして、組事務所に保管する。で、盗聴していて、部下のノガミしかいない日をみはからって(ヒグチには顔がばれているから)、盗聴バスターズですと言って中に入る。

9、探して、金庫の中に盗聴器があると告げる。ノガミはケータイでヒグチに聞き、中の金を出すことをOKする。だが、その直後、一緒に行った貫太郎が、「金はもらう」と銃を突き付ける。そして、まひろがその金を奪って逃げる。

10、だが、逃げる途中で、まひろは隣の屋上に落ちて、大出血。瀕死の重傷を負う。それを見たノガミは、自分の組がからんで死人がでることを恐れ、「死体を始末しろ、金はいらない。今日のことは忘れろ」という。実はこれはお芝居で、まひろは怪我などしていない。

11.が、後日、ヒグチから呼び出される。このお芝居がばれていたのだ。だが、呼び出したのは、ヒグチの弟。銃で脅されるが、兄貴は海外へ高飛びしてしまったから、放火することもない、と告げられる。武沢は一安心するが、どうも話がうまくゆきすぎるきがする。それで、ひょんなことから、こころ温まるジワーンなどんでん返しとなる謎を解く。

感想。こういう心温まる話はいいですねえ。



『ひまわりの咲かない夏』道尾秀介

1、妹が3歳で死んだ。これは死ぬ前の話。友達のS君が首つりをした。僕は確かに見た。
だが、岩村先生に話して、見に行ってもらった時は、死体は消えていた。排泄物を拭いた形跡はあった。タンスの上に紐をこすった跡もあった。僕の前に、蜘蛛になったS君が登場。

2、S君は言う。「岩村先生に殺されたんだよ。確かに、殺された後に、首吊りに見せかけるようなことをしていたと思う。死体は車で移動したに違いない。僕の死体を探して」。その後、犬のダイキチがS君の家の近くで、泰造爺さんに吠えた。死体の匂いがしたから吠えたに違いない。

3、僕は岩村先生を尾行。少年エロビデオを見ているのを確認。僕は、ダイキチが吠えたことから、死体を移動したのは、泰造爺さんだと推理。泰造は、これは自殺にみせかけた殺人で、犯人は岩村だと推理。

4、S君は言う。「僕は岩村に裸の写真を撮られた。縛られた。殺したのもあいつだ」。一方、犬や猫が殺されて足が折られる事件が9件発生。泰造は、昔、母が死んだあと、足を折られたのを見てから犬や猫の死体でも、足を折らないと生き返るような気がして、足を折っている。

5、僕(ミチオ)はS君の作文にX印が10ヶあるのを発見。町の地図と合わせると、犬猫が捨てられた場所と一致。その後、S君の死体発見される。物置の扉が壊れていて、ダイキチが運んだもの。さらにトコおばあさんも殺される。これは、ミチオが大好きだったおばあさん。

6、ところで、泰造は、前、交通事故で死んだスミダさんを目撃している。同じく、生き返りそうで、死体の手足を折った。一方、S君の死体は、岩村の家になんかなかった。S君の家の近くの物置にあった。つまり、S君は嘘を言っていた。それに気がついた僕(ミチオ)は怒って、女郎蜘蛛にS君を食わせて殺そうとする。S君言う。「もう嘘は言わないよ」

7、僕「犬猫を殺したのはS君だね。それを泰造爺さんにプレゼントしていた。足を折るためにさ。ダイキチが死体を移動してしまわないように、口に石鹸をいれてさ」「それから、S君の作文にあった印。10番目はS君の家だった。だとすると、あれは、犬や猫ではないよね。あれは、自分の死体だよね。とすると、自殺?」

8、泰造爺さんが言う。「S君を自殺に追い込んだのはミチオ君だね。S君はいじめられていたと聞いたよ」。家に帰ったミチオは、蜘蛛をつぶす。「S君はうそつきだから、もう一度死んでくれる?」

9、泰造爺さんは言う。「ミカちゃんは幻覚だよね」。その言葉に怒ったミチオ。「ミカは幻覚じゃない。それよりも、幻覚やすべてを終わらすために、死んでくれる?」

10、ミチオはさらに言う。「遺体を隠したり、岩村先生が書いた本を持ってきて、岩村先生が犯人だなんて言って、捜査をかく乱した罪もある。大好きだったトコ婆さんを殺したのも泰造爺さん。その罪もある。死んでくれる?」
その後、死んだ泰造は、カマドウマになって甦る。

11、泰造は反論する。「トコ婆さんは猫じゃないか?」僕。「猫でも、大切な相手だったんだ」。その後、ミチオはすべてを終わらせるために、家に火をつける。

感想。どこまでが現実でどこまでが幻覚かわからない。そこがすごい。蜘蛛になったS君が幻覚だろうなとは想像がついたが、妹のミカが非常に細かく、人間的に描かれていて、だまされた。すごい才能だ。

追伸。4月から始まった推理ドラマの中で面白いのは、「名探偵の掟」かな? 33分探偵とはちょっと違うけど、コミカルで面白かった。ほかに面白くなりそうなのは、「boss」かしら。主役が宝塚の男役みたいな声で、よかったわね。でも、内容で面白いのは、やはり、「臨場」かしらね。ダイイングメッセージの話をするときに、季語だろうか、なんて会話が出て、ちょっとコミカルで面白かった。