鬼の足音、パーフェクト・ブルー

『鬼の足音』道尾秀介
「鈴虫」

1、11年前。私はSの頭を石でぶって、土の中に埋めた。Sは瀕死だった。鈴虫がうるさいほど鳴いていた。そのころ、Sは杏子(今の私の妻)とつきあっていた。だが、浮気もしていた。

2、今、子供が学校から鈴虫をもらってきた。それがうるさくて、私は殺虫剤をかけた。ところで大雨でがけが崩れて、Sの死体とジャケットが現れた。それには、私の学生証などが入っていた。わざと入れたのだ。

3、実は、Sを殺したのは妻だから。私は、今でも、鈴虫の声を聞くと、堪えられない。

この他に、5篇、背筋のさむくなるような話が入っています。どれも怖くて面白いのですが、特におもしろかったのは、「よいぎつね」。これは、学生の時に、不良仲間に強要されて、少女を襲う話。そのときは、誰にもみつからなかったので少女を穴に埋めるの。襲った途中で死んでしまったから。でも、十数年経った今、同じ祭りの夜に同じ場所に行ってみると、少女が現れるの。もちろん幻覚なんだけど、その少女が、私を殺して土に埋めるの。ということは、私は、死んでいるの?
これは、この前、伊藤四郎の主演した推理ドラマ「王子の狐」(?うろ覚え)に似ていたわね。それも面白かったわ。「王子の狐」っていう落語をやっていて、B師匠が殺されるの。で、調べると、A師匠がB師匠にはとても厳しかったと判明するの。二人は同じ大学の落研の出身なんだけどね。で、その二人の故郷にいってみると、王子とそっくりの狐の祭りがあるの。それで、二人の大学の頃の同級生に話を聞くと、ある女友達が、誰かに襲われて死んだことが判明するの。それは、二人の友達で、今は警視正になっているCの彼女だったの。で、伊藤四郎ともう一人の刑事は謎を解くの。女友達を襲ったのは、B師匠で、A師匠はそれを知っていたから、冷たくしたのではないか。で、B師匠に恨みがあるのは、警視正Cだから、B師匠を殺した犯人は警視正ではないか? でも、本当の犯人は、着物問屋の男で、実はそいつが女友達の兄だったから、という謎解きだったんだけどね。
ちょっと意外(普通は主役の次に有名な俳優が犯人という暗黙の了解があるから)で面白かったわ。ほとんど出てこないほぼ無名の人間が犯人というのは、麻耶雄嵩の「名探偵木更津悠也」の中によく出てくるんだけど、ドラマで言ったら、有名人が犯人という設定にあまりにもならされているから、意外と新鮮で驚くわね。これは来週やりましょうかねえ。

パーフェクト・ブルー宮部みゆき

1、深夜、バッター人形が燃えるの。それは、諸岡克彦の使っていたもの。で、弟の進也が捜査に乗り出すの。主役のマサ(犬)と探偵事務所のカヨちゃんもいっしょね。ところが、すぐに兄の克彦が殺されて燃やされるの。マサとカヨちゃんと進也が発見するんだけど、そのときシルバーの車が逃げるのね。

2、克也は高校野球界では将来を嘱望されていた逸材なの。プロでも通用するくらいのピッチャーなのね。なので、母親は、それを知ったときに、なんで燃やされたのが弟ではないの、となじるの。進也は不良少年とつきあいがあるんだけど、熱血漢で、犯人探しを始めるの。独自に不良仲間を当たって、三階から飛び降りたりするのね。

3、ところで、兄は、前に、いやがらせの手紙をもらっていて、それを弟に見せていたの。差出人は、同級生の山瀬で、彼は、自分が野球から脱落したのを逆恨みして、脅迫状めいた手紙を送っていたの。でも、彼の住所に行ってみると、自殺していたの。どうやらタイマに走っていたらしいの。

4、打者人形のいやがらせは山瀬だったらしい。ここでインタルード。場所はかわって木原という男が、ある薬品会社の専務の秘書に、5千万を宗田という男に渡すように頼まれるの。それは、宗田という男が強請りをしてきたから。宗田は、「No,8の副作用で死んだ少年の遺髪あり」と手紙に記しているの。その薬が、どうやら、克彦たちに飲ませられ、そのおかげで、甚大な副作用が起こったらしいのね。

5、ところで、話はまた戻って、カヨちゃんの事務所が荒らされるの。調べると、上野という男が浮かぶの。彼は証言するの。「東邦明星高校を勝たせるために、松田学園を辞退させるように、嫌がらせを山瀬に頼んだ」と。つまり、打者人形の焼き打ちは、克彦の殺人は無関係だったの。で、カヨちゃんとマサは、宗田淳一の弟に会うの。淳一は克彦の同級生で、肝臓炎で死んだのね。

6、弟が言うには、結城という名の男(眉の下に傷)が、ブルーの液体をくれて、それを飲んでから肝臓炎になった。ところで、場面はまた飛んで、木原は、宗田=結城に5千万を渡すの。

7、ここで話はどんと飛ぶわね。いろいろあって、結城が白状するの。「この薬は、筋肉増強剤だけど、甚大な副作用がある。野球はドーピング検査がないの、彼らでテストしていたのだ。遺髪にはその証拠がある」と。
カヨちゃんとマサが結城という男からその話を聞くと、やばいと思った製薬会社の専務の差し金で、拉致されるの。

8、で、倉庫で、製薬会社の女秘書が、カヨちゃん一家に、死んでもらうわ、と銃をつきつけるの。

9、でも、実際には自分は手を下さないで、木原にやらせるの。木原は、娘が誘拐されているので、逆らえないの。でも、ここでマサが飛びかかるの。

10、すると木原は専務の秘書を撃つの。他にも専務の手下がいるんだけど、同じに撃つのね。で、専務には、全員を始末したと電話するの。ここで話は解決なんだけど、この後、克彦の死について、とんでもないことが判明するのね。犯人についてなんだけど。それは読んでね。