細菌NO731、スピカ

『細菌NO731』(霧村悠康)
この人は、前に手ひどくこき下ろした人。あれで眠れるライオンを起こしちまったかな?これは良かったわ。流行作家のスタートラインについたかな。ついでに言うと、霧村君は病理の医者らしい。で、最初は自費出版から出発した人。久坂部羊もそうだけど、医者みたいに専門知識はあって、給料はよくて暇のある人(病理医とか開業医とか)は自費出版から始めるのが早道かも。ここまでくれば流行作家も夢じゃないわね。これでヘリが出てくれば、海棠尊になるし、カラシニコフなんかが出てくれば大沢在晶になるし、731部隊の細菌が復活してパンデミックになれば、仙川環になる。

1、終戦前夜、731部隊の3人が何かの地図を三分割するの。一年に一度、銀座の古いビルで会うことを約束してね。でも、いつしか合わなくなってしまう。60年後、一人のホームレスの老人が死んで、病院へ。名前は依藤らしい。リンパ球2,8%、好中球が95,6%。一方、ワシントンのさる研究所では、細菌760が誕生している。それは2年に一度遺伝子変化を起こす。神経毒がありラットは一週間で死亡。それから、菱田老人が交通事故で死に、孫のむつみに手紙を託す。

2、また別のホームレス老人が死んだ(依藤と同じ公園にいた)。病院で医者の古都波は、かれもリンパ球が異常に少ないことから、興味を抱く。血液を友人の七海に渡す。依藤老人は、七色製薬の会長だった。刑事が聞いて回ると、彼はホームレスにいろんな薬を渡していたとか。

3、むつみは、祖母の手紙に指示してあったように瀬戸内町へ行く。ワシントンでは、研究所で、細菌を無毒化する抗血清の開発を急いでいる。この細菌は終戦直後、731部隊から譲られたもの。

4、地図を分けた3人の残りの老人、黒沼老人の秘書の冴子は、銀座の古いビルで行われていた個展でQという画家を見つけ、尾行する。それは、3人の老人が分けた地図によく似ている。どうも松代の地下壕らしい。一方、医師の古都波に頼まれた病理医の七海は、古都波に渡された血液にリンパ球を壊す細菌が存在しているのを発見。免疫抑制剤になると読む。

5、古都波と七海は、依藤は自分を使ってその薬の人体実験をしていたんじゃないかと推理。さらに、ホームレスが何人も死亡。古都波は、彼らが皆、敗血症のような感染症に陥っていなかったことを発見。

6、そこで、依藤は、ホームレスを使って、薬の副作用の人体実験をしていたんじゃないかと推理。七海は、リンパ球系の腫瘍と乳がん株に、このたんぱく製剤は効くと推理。

7、一方、ワシントン。細菌731は2年に一度変異。細菌760になった。毒性は強いことを発見。ところで、地図を手にした人間Xが三人の老人の地図の場所に行く。そこにあったのは・・・。読んでください。


『スピカ』高嶋哲夫。(名作復活シリーズ。先週紹介した『小説キャラクターの創り方』の中で、蘊蓄は有利として取り上げられていたから。)私の背負っているのは出版界なので、取り上げさせてもらいまっさ。

1、12月19日、深夜。富山県沖、二キロの海岸で、ロシアの漁船が銃と火器を荷揚げする。カラシニコフ、AK74など。大量に。翌々日、富山県竜神埼、日本原発(株)、竜神埼第五原発に日野教授が到着する。これは570万キロワット、世界最大の加圧水型軽水炉である。原子炉の横には、原子炉補助建屋(6基のタービン)、変電設備(コスモス)、自動制御装置(ワイズ)などがある。日野は、T大理学部原子核物理学科の教授である。

2、中には北沢主任がいる。5日前に燃料棒運びこみ、3日後には、B3にあるプルトニウム棒を投入の予定。一方、日野の恋人の仁美は原発前の反対はの取材に来ている。彼女は世界を巡るリポーターをしている途中に日野に出会った。

3、12月22日午前〇時。テロリストが襲撃。守衛三人は刺殺。警察官は銃殺。その後、トラックで銃火器搬入。

4、機動隊に爆弾を投げる。偽警察官の服で、テロリストは銃書きなどをさらに奥の建物まで搬入。(機関銃、ロケットランチャー、地対空ミサイルなどがある)

5、原子炉はまだ稼働していない。「原子炉稼働を阻止せよ」との命令で、ロシアの物理学者サリウス、日本赤軍派の宇津木、松尾は中央制御室を占拠する。午前二時。変電設備(コスモス)は7階建の大きさ。20トントラックを横ずけにして、パイプ100本(1、2トン)を一次冷却水パイプにつなぎ始める。

6、ユーリのコメント「パイプ取り付けに2日、燃料棒の投入に三日はかかる」。作業の途中、パイプ落下、ユーリとラフマニノフとガーリンが下敷きになる。北沢の指揮で、クレーンでパイプを移動。

7、セルゲイの指揮で、第一建屋の屋上に、クレーンで銃の箱などを運び上げる。他にもロケットランチャー、重機関銃など。テロリストの中にニーシャがいる。彼女の父はソ連解放戦線の闘士で、クーデターの日、逮捕された。

8、一方、カメラマンの鳴海は、偶然近くで事件に遭遇。爆発を撮影する。午前5時には、ロケット弾が放水車に命中し、SATは全滅する。

9、戦いの途中で、早川が輸送車で門に突っ込む。テロリストのロケット弾がそれに命中する。一方、サリウスは心臓発作を起こす。県警の石井警部は、負傷者300名くらいだとの連絡を受ける。

10、午前6時。近くの道を走っていた仁美はすごい渋滞に巻き込まれる。友達からの情報では竜神崎が変。パトカーと機動隊が終結している。午前8時。テレビのニュース。原発が占拠されたようですと流れる。

11、日野は首相官邸へ呼ばれる。国家安全保障会議がもたれる。総理他の大臣がいる。自衛隊の出動を要請。午前10時には、鳴海は新聞社に写真を持ち込む。

12、陸自の情報管理室。市ヶ谷の建物のB3にある。そこで森田は分析している。リーダーはポロスキー(元KGB、アフガンの参戦経験あり)。日本赤軍のリーダーは宇津木。公安第一課の野間警部補は、分析している。松尾の後見人は、右翼の大道寺。

13、正午。仁美は情報を得る。新潟や近県から、22000人の機動隊が動員されている。周辺3キロの住民が避難している。12月23日午前〇時。日本原発本社のコンピューターは現地とつながっている。それを通じて内情を調べられると日野が言う。

14、日野が調べた結果、原子炉は稼働している。一次冷却水が200度を超えている。彼らがワイズのプログラムを変えたと推理。これでは、攻撃はできない。原子炉が破壊されればチェルノブイリの数万倍の放射能が漏れが起きる。

15、犯人からの要求が届く。内容は次。「囚われているロシア要人の解放。1000億円を72時間以内によこせ。船でイスラエルに行く。そうでなければ、25日6時に汚染ガスを撒く」日野の見解。「バルブを調節すれば、一次冷却水の蒸気を排出口から放出できる」

16、午前2時。陸自東部方面隊、12師団5000名が集結。でも攻撃はできない。午前3時。首相官邸。「ロシアからはOKの返事。イスラエルは拒否。裏に何かある」

17、午前5時、日野は原発の一般コンピュータを呼び出す。そして発見。「変電設備(コスモス)は動いていない。これはフェイクだ。つまり合成映像だ。炉心は水槽に沈められていない。攻撃は可能だ」

18、午前7時。自衛隊、ロケット砲などで、事務棟を攻撃。サリウス「原子炉稼働までには7時間は必要だ。強引に稼働すると危ない」

19.日野の結論。「制御棒が引き抜かれた。稼働するつもりだ。暴走だ。攻撃でワイズを破壊すると暴走するぞ。撤退しろ」。その後、午後3時。日野の意見「海の二次冷却水の取水口のタンクから入りこめる。そこから補助建屋に入れ。それしかない」
さてどうなるか。続きは本で。



来週の名作復活シリーズは、「再発」(仙川環)の予定。なんか、霧村君のために紹介するような感じだな。彼のは視点が変わりすぎるから読みにくいんだよね。そこへ行くと、仙川君のは視点は一人に定まっているし、蘊蓄はあるし、パンデミックになるかもというスリルとサスペンスはあるし、主人公はいかにもそこらへんにいそうで、リアリティがあるし。ヒット路線ド真ん中だね。

追伸。先週のテレビで面白かったのは、『臨場』かな。見ていなかった人のために。
まず、ホテルで死体が発見されるんだよ。圧迫痕がうっすらとある。首を絞めた痕ではなくて、体重100キロ以上に人間が長い時間のしかかってゆっくり死に至らせたみたい。女はこん睡強盗で逮捕歴あり。今回もそれをやろうとして、相手が気がついて逆にやられたに違いない。一方、検視官の部下の知り合いが心臓発作で死亡。その奥さんは口紅をつけ、服から水が滴っていた。検視官は、その死んだ人間が犯人だと結びつける。強引なんだけど、そこはドラマ。100キロ以上の人間に睡眠薬を飲ませると心臓発作を起こすんだとか。で、その犯人(Aとする)は、睡眠薬が切れ、一回起き、女の上に倒れ、また眠り、また気がつき、女が死んでいたので驚いて奥さんを呼び、自分のコップなどの証拠を片付けさせた。そして家に帰って心臓発作で死んだ。でも、検視官は、間がよすぎると推理。妻にとってはさあ、商売女を殺してしまった男だから、一層のこと始末してしまおうと思ったんじゃないかってね。
そこで、家宅捜索して、ポッチの取れた100円ライターを発見するんだよ。検視官の推理。心臓を濡らして、ライターのポッチの部分は5000ボルトもあるから、それを心臓に押し付けて殺した。ここで奥さんの証言の矛盾は、「人工呼吸をしたというのに、口紅が落ちていなかった」。
感想。面白かったけど、ちょっと強引。原作者もネタ切れだったのかしら。だって、電流ショックなら、電流痕ができるから、運ばれた先で医者は分かるはず。そして変だと騒ぐはず。そこを伏せて、一時間ものにした技術はさすが。

追伸1、『真秀の医療』吉澤久雄。
友達のよしみでとりあげました。うたい文句は、”後期高齢者医療は、人にやさしくないばかりでなく国を滅ぼす”。後期高齢者の問題が詳しくとりあげられています。ネットで買えます。画像は、私のパソコンでは処理できなかったのでなしです。

追伸2.この一週間手紙が一通も届かなかった。目に見えぬ力の暗躍があるのかなあ。非常にきつくて、精神的にきびしい。キム君、一刻も早く拉致被害者の解放をおねがーーい。

追伸3、ミスター・ブレインは、ブレインの部分を削除してキイナ路線に徹すればもっと面白くなるのにね。

さらに
追伸。昨日、”目に見えない力”と言ったけど、あれは、Kから始まる機関の意味で、意図が通じたみたい。ブログにアップするとすぐにどっさり郵便物が入っていたから。
来週、「再発」を取り上げると言ったけど、読んでみたら、またロシアが悪者だったの(ロシアの犬が狂犬病の元)。まあ、発想が貧困でいやになってしまうわね。でも、挑発してると思われても困るから、来週は変更するわ。
 
通信2、キム君がノドンの発射を計画しているようだけど、やめたほうがいいと思うな。オバマ君はああみえて、やるときはやるから。この前も、政府の援助の入っている金融機関の役員が法外なボーナスをもらっているのを、取り返したから。アメリカにある北の高官の講座を凍結するくらいはやると思うの。