ルパンの消息、再発

『ルパンの消息』(横山秀夫
これは、『臨場』の隣に置いてあったので、つい買ってしまったの。まあ、横山だから、失敗はないと思って。いわゆるスリーピングマーダーだったわ。まあまあ面白かったわね。
帯から。女性教師の墜落死。テスト奪取事件。三億円事件。時効まで24時間。いったい、幾つの秘密が隠されているのか。

1、巣鴨署に、15年前の舞子の飛び降りは殺しだ、とのタレコミが入る。その夜、ルパン作戦といって、三人の生徒がテストを盗みだすために、校長室に忍びこんでいた。ネタ元は堅い。そこで、キタとジョージと橘の三人が浮かびあがる。キタトジョージが警察に呼び出される。橘なホームレスになっていて行方知れず。
15年前。舞子は屋上から墜落死。屋上にハイヒールと遺書めいた物があったので、自殺と思われた。

2,3。キタの供述。ハイド茂吉と呼ばれる男がいて、毎晩巡回をしていたので、まず4階の地理準備室に潜入し、深夜、仲間の二人を入れ、校長室へ行った。三日目までは順調だった。
4日目。午後8時。西棟、2階で、舞子の赤いハイヒールと白いハイヒールを見た。その後、深夜1時。校長室の金庫(古い)に舞子の死体があった。慌てて戻した。

4,5.後日。舞子の部屋に侵入して調べた。レズの写真があった。舞子の隣の部屋の女に聞いた。舞子の相手は鮎美だった。同じ学校の音楽の教師だ。そのあと、ハイドの部屋に忍び込んだ。盗聴テープがあった。聞いたら、鮎美と橘の会話だった。内容「殺してしまった。何とかして」。
橘に聞いた。すると白状した。「鮎美が好きだった。つきあっていた。4日目、隣の部屋に隠れている鮎美に、逃げろと合図を送った」

6,7.現在。刑事喫茶店ルパンで鮎美を発見した。鮎美の証言「私が殺した。校長室で喧嘩して突き飛ばしたら、金庫にぶち当たって死んだ。橘に応援を求めた」
橘は証言「金庫に入れて隠したが、屋上へは移動していない。ましてつきおとしてなんかいない」
ところで、喫茶店ルパンのマスターが警察へやってきた。彼は、15年前、三億円事件の容疑者として調べられた。だが、犯人とは断定されず、時効の7年後、警察署で再度調べられていたが、大笑いをして出て行った。
今回も、同じく怪しいと思われたが、また証拠がなくて、笑って出て行く快感を味わいたくてきたのではないか、と刑事は推理。そして、金庫の内張りを再度調べる。すると、盗まれた三億円(番号が控えてあった)と同じ番号が、張り付いて残っていた。それから、死亡推定時間を再度調べると、舞子は一度覚醒し、翌日の朝に、屋上から突き落とされた時に死んだことが判明。すると、時効はまだ数時間先。内海が金庫を調べに来て、舞子を発見して、覚醒したのを殺したのでは?と推理。



名作復活シリーズ。「再発」(仙川環)

1、医師の真澄の元に明日香が駆け込んでくる。「どんぐり丘でホームレスが倒れている」。かけつけると、そばにはあおい、みかとアライグマがいた。ホームレスは県立医大に搬送。

2、しかし、ホームレスは死亡。ホームレスの名前は、犬養教授。県立医大狂犬病の研究をしていた。近くで五十嵐正治がアライグマ、コウモリ、トカゲなどを飼っていたから、アライグマはそこから逃げたか?

3、明日香が熱を出す。病院へ搬送。食欲ない。だるい、発作、目を尖らせて意味不明の言葉を吐く。突然喚きだす。こん睡状態。三日後死亡。

4、今度はみかが倒れて、病院へ。真澄の祖父の富一が言う。「昔、同じ症状を見たことがある。狂犬病じゃ」

5、友達の亮子に明日香の血液検査を依頼。エライザ法で検査の結果。狂犬病の可能性はある。狂犬病は、アライグマ、コウモリからも感染する。しかし、正治の飼っていたペットを調べてもらったが、ウイルスは検出されなかった。その後、ニュースで言う。「山賀町を中心に狂犬病が発生。県立医大では、コウモリからウイルス検出したと発表」


6、ワクチンを注射してくださいと、村人たちがおしよせる。しかし、ワクチンは10人分しかない。町はパニックになり、犬が何匹か殺される。正治の家にも村人が押し寄せ、正治の母は、正治を道ずれに無理心中を。犬養教授のいたどんぐり丘に行くと、アライグマが殺されて、埋められている。

7、ふらふらの犬が発見される。獣医の渡良瀬は言う。「問題の犬は捕獲された。正治のペットのコウモリもアライグマも白だった。ウイルスはどこから流出したか?」。犬養教授の接触していたアライグマの死体からはウイルスが発見される。真澄は亮子に詰め寄る。「コウモリは白だった。ウイルスは犬養教授の飼っていたアライグマから流失したの。何を隠しているの?」
亮子は白状する。「犬養教授は日本で狂犬病ウイルスの研究にお金が出ないのを不満に思っていた。事件を起こせばお金が出ると言っていた。ある日、教授に研究室のキーを貸した。その時にウイルスをアライグマに感染させたに違いない。でも、研究室が発生源だと思われると困るから、コウモリだと嘘の発表をした」
この後、真澄がビラをまいて、感染源のアライグマはすべて捕獲されたと訴える。パニックは終息へ。

追伸。今、友達が貸してくれた「1Q84」を読んでいるんだけど、よくも悪くも純分学だわね。私は壁の向こうはほとんど読まないので、批評はさけるけど、実に純文学好きの人の心理を研究して作ってあるって感じ。純文学の人はよく、エッセイみたいに日常を普通に描くのが最高っていうけど、最初の部分の青豆の描写はまさにそうだし、ディテールが実に細かく描かれていて、満点だし。
それから、平板に描かれていて突然、そいつが殺人者で、人殺しに飛ぶシーンはメリハリがあるし。
それから、純文の人は、永遠とも思われるくらい長く過去を描くけど、それも、そのまんまそうだし。
あと、とってつけたような月が二つあるって描写。これも、純文学の人は、幻想と現実の境がなく描くのがすぐれているっていうけど、そのままだし。
オール5のよくできたトレンディドラマって感じ。舌触りも滑らかだし。
でも、なんか、足りないのよね。まあ、私だけの感想だから、ここから後は無視してもらっていいけど。心臓をわし掴みにされる何かが足りないのよね。(エヴァンゲリオンみたいにね)
セックスシーンをごはんを食べるみたいに普通に描くの純文学の人が理想とすることで、そのとおりなんだけど、セックスシーンに関しては、村上龍にかなわないし。哲学的な禅問答みたいな部分は、西尾維新にかなわないし。キャラ立ちって点に関しては、荻原浩にかなわないし。(あ、でも、小説を応募してきた女の子のキャラは立っていたわね。あれはとてもいいわ)
途中から、計算したみたいに、宗教法人との戦いにはいるんだけど、ここからは、エンタメ路線に足を踏み入れているんだけど、エンタメの修業はしてないから、延々と概略とか書いていて、エンタメで鍛えられた人にはかなわないし。何か、特化している点がないのよね。
でも、全体としては、ヒットするように計算されて作られていて、一気に読まされてしまったわ。まだ上巻だけだけど。
でもね、なんか、お上手すぎて、攻撃する点がないのも、不満かな。例えば、私はエヴァンゲリオンガンダムが好きだから、エヴァガンダムの戦いなんか書きたいんだけど。そんなことをすれば、両方のファンから攻撃されるのは目に見えているんだけど、逆に攻撃されすぎて、炎上して話題になることもあるかも。
でも、これはお上品にまとまっているから、攻撃の隙もないのね。それも不満。でも、ぐいぐい引き込む腕力はすごい。まあ、私は、門外漢だから、避難はしないわね。ついでながら、友達も、うちの息子も「ねじ巻き鳥クロニクル」はこの人の中では最高と言っていたから、そっちを読んでみたいわね。


来週は『誘拐ラプソディ』と『翼ある闇』の予定