悪意、6時間後に君は死ぬ

「悪意」東野圭吾
野々口修による手記と刑事加賀の記録が交互に語られるの。章がかわるたびに新しい転換があって、超面白かったわね。これに比べると、「手紙」と「片想い」はゴーストライターが書いたとしか思えないわ。
「手紙」は兄が殺人をおかして、会社が決まってうまく行きかける度に兄の過去が明らかになって、ダメになる話。「片想い」は性同一障害者が次々と出てくるの。展開的には、殺人の犯人は分かっていて、その動機を調べると、出てくる人が皆性同一障害なの。ふたつとも、それだけの話。ミステリーとも言えないわね。




では、その理由は、というと、野々口が、いじめ側にいた証拠を日高が持っていたというもの。でも、これじゃあ、弱いわね。私は、野々口が、刑務所を出た後、童話作家なんてマイナーじゃなくて、流行作家になるため、(なんといっても日高のゴーストだとふれまわって)、とした方がいいと思うんだけど。

「6時間後に君は死ぬ」(高野和明
「13階段」で江戸川乱歩賞を取った人。その後は、今一だわね。あの賞で、才能を使い果たしてしまったのかしらね。これも、今一だったわ。短編集で、ミステリーでもないし。



今週面白かったのは、片平なぎさの「署轄の女」かしら。まず、彼女の母と娘が誘拐されるの。そして、人が殺されて、片平がその犯人にされるの。まず、ケータイでスパナと粘着テープと赤い紐を買わせて、それを死体の傍に置かせるの。死体の傍には9と7の血文字。
で、近くの金物店の監視カメラの映像から、片平が買ったことが判明。で、この後、私がお風呂に入ったので、ちょっと飛んで、ある女性を7年前にいたずらして、それをネットに乗せたことが判明。その女性は自殺。彼女は、施設で育って、中のいい男女が一人づついたことも判明。で、その犯人だけど、カナ入力にしといて、ローマ字でQUEと打つと名前がわかるの。
で、片平が逮捕されて、監理官に直で言うの。残りの一人は、あなたって。で、その男を殺せって誘拐犯から言われているの。で、撃つの。でも、重症で死なないの。で、夜、刑事が殺しに来るの。で、撃とうとすると、それは、片平の相棒の南原で、犯人は捕まるの。
7年前のいたずらをネットに顔を見せて乗せていたってのは、ちょっとあり得ないけど、スピード感があって、面白かったわ。
それから、片瀬りのの病気腎移植を取り上げたのも、結構主張があって、面白かったわ。もう、ネタは出尽くしているので、今後は、こういう主張のあるミステリーは生き残れるかもね。
もうひとつ面白いのもあったわ。「ホンボシ」。これは、今までにない展開で面白かったわ。まず、あるルポライターが殺されかけるの。でも、助かるの。で、ある女性が誘拐されて、数時間後に、そのルポライターを殺さないと、その女性を殺すと、父親が脅されるの。で、父親は失敗。その女性は死体で発見。その後、また違う女の子が誘拐されて、父親に同じような脅迫がなされるのだけど、その女の子は、自力で脱出。で、死体を調べると、ある特徴のある土と肥料が付いているの。で、そこを特定。すると、そこは、温室なの。で、刑事は推理。実は、自分を殺せと電話をしたのは、実は、ルポライターで、その時には女性は殺されていた。温室で死体を温めたので、死亡推定時間が遅くなった。つまり、自作自演。で、殺しの動機はというと、ルポを他人のものから盗んで、それを、その女性が知って、脅したから、というもの。面白かったわ。
それと、直木賞が発表されましたですねえ。私の押していた道尾秀介が取れて、一安心。今は、西尾維新を押しているんだけど、彼にもぜひとってほしいわね。なにしろ大ファンで、彼に直木賞を取らせる会の会長なんだもの。自称だけど。