アミダサマ

「アミダサマ」(沼田まほかる
すごい。まほかるはすごい、の一言につきる。ホラーでもある、宗教小説でもある、芸術でもある。独特の世界。
まず、悠人が、コエを聞く。それは、埼玉の山の中の寺の近くに捨ててある冷蔵庫の中に置き去りにされた子供のコエ。でも、それは、運命のように強く、悠人の耳に届く。彼は、夢中でそこに行く。すると、近くの寺の住職もコエを聞いて、助けに来ている。住職は言う。「この子供のコエは悠人にとりついて、殺してしまう。だから、このことは忘れろ」。
悠人は、心残りながらも忘れようと努力する。
しばらくして、子供のところでは、猫が死ぬ。それは、「猫なり」が元になっているようだが、中々死なない。それで、最後にしぬ所は、向こうの世界に引きずり込んでしまうような気もする。
一方、悠人は、自分を捨てた父の隣に住む律子という女性と関係を持つ。彼女は、ちょっと頭が足りないのか、働くことはできずに、複数の男性に援助してもらって生活している。
悠人を好きになる。彼はかなりのDVじみたことをして、律子を抱いているのだが、律子は、悠人を一番好きになる。そして、他の男に、別れてくれと頼まれる。悠人は、もともとそのつもりだったので、別れると言う。だが、律子は妊娠していた。悠人は、降ろさなければ分かれるという。そう言っても、降ろすことはできないだろうから、生まれれば、他の男の物になるだろうと、予想する。だが、律子は降ろす。
しかし、悠人が、訪ねていった時、隣に住む父の体を洗ってやっていて、あそこを見せてくれと言われると、見せている。
それに怒った悠人は、父親を殺そうとするが、父親は動脈瘤が破裂して、病院に担ぎ込まれる。その時、コエが聞こえる。
その前に、子供の父親が寺に来て、無心するようになっている。住職の母が、その父に色々と与えて、子供に近ずくな、と言う。だが、あるよ、父が寺にくる。それに怒った母が、子供の父を殺す。そして、自分は死ぬと言って、山に入る。
住職はそれを追っていく。子供も追っていく。その時、この世ともあの世とも分からぬ世界に入りこむ。そして、悠人は、コエを聞いたのだ。
ここからが、秀逸。三人は、この世とあの世の世界をさまよい、ついには母と子供は姿を消す。悠人だけは、後をついてきた律子に呼びもどされて、この世に帰ってくる。