誤飲

「誤飲」仙川環
1・藤本洋文
藤本は、子供が欲しくなくて、妻に、嘘をついてピルを飲ませていた。妻の秋枝に変な電話がかかってきた。妻は見せないようにしていたが、番号を覚えて、かけてみると、不妊治療の病院だった。ところで、秋枝は最近、親密にしている親子がいる。母親の名前は恭子。恭子はDVで悩んでいるとのこと。藤本は、子供ができるように相談しているのかと思い、二人を遠ざけようとする。近所の人を装って、『子供の声が煩い』と秋枝の家に手紙を投げ込んでみたり。恭子のマンションにも、『子供の声が煩い。他人の家に騒音を持ち込むな』と手紙を投げ込んだり。その作戦は功を奏して、恭子はこなくなる。
しかし、恭子の夫が、子供をどこに隠したと、怒鳴りこんでくる。その時、恭子が、子供を連れてくる。スーパーの裏で遊んでいたと。どうも、策略のようだ。
その後、妻の秋枝に、夫が酷い奴だから、恭子と付き合うなと言うと、逆に、薬のことで怒りを覚えていると言われてしまう。ビタミン剤だと思って恭子にあげたら、ピルだと見破られてしまったと。おまけに、それは、違法に処方箋を書いてもらったものだ。それで、気を悪くして、出て行ってしまう。

2.小野恭子
小野恭子の夫は、神経質でDVだった。新型インフルエンザに子供がかかったら困るだろうと、恭子につめよって、予防のためにキルフルという薬を調達してこい、と命令する。
恭子は困って、立川薬局という店の前で歩いている。そこは、秋枝の夫が、違法に処方箋を書いてもらって、ピルを調達していた店だ。しばらくすると、一人の男がキルフルを買って出てくる。それで、余ったら売ってくださいと申し出る。男はOKする。しばらくして、男から電話が来て、会う。そして、余りを5万円で買う。しかし、夫がインフルエンザにかかったようで、病院でキルフルをもらってくる。恭子は、自分の買った薬と比べてみる。よーく見ると、それは色が違う。それで、薬局で聞くと、それはビタミン剤だと判明する。それで、考える。娘のマナの薬と夫のキルフルを交換しようと。それで夫が死んだらメッケモノだ。

3.木島博人
恭子をだまして薬を売った男。鬱病にかかっている。恋人の亜美と暮らしている。この前の偽の薬のことを話したら、鬱病の薬で、同じことができないか、と相談を持ちかけられる。プライドとか社会的な体面があって、精神科に通えない人間に、鬱病の薬を売るのだとか。それで、千歳烏山の近くのクリニックで、薬をもらう。それを亜美の父親に売る。それで味をしめて、今度は別のクリニックに行く。そこに林崎洋子がいる。彼女があまりにも木島に同調し、ほめてくれるので、木島は、俄然働く意欲がでて、薬の転売なんか止めようと決心する。

4・林崎洋子。
彼女は、精神科のカウンセラー。でも、タバコがやめられない。そんな彼女に立川医師が話しかけてくる。新しい禁煙薬のモニターになってくれとか。長野に星を見に行こうとか。
彼女は、自分が好きなので、そうやって親切にしてくれるのかと思っていると、実は違う。彼女のカウンセリングがあまり単調に褒めるばかりで、患者に軽く思われ、人気がない、と言われる。彼女は失望し、折角禁煙に成功したのに、また戻ってしまう。

5・松原延彦。
帝都医科大学医学部代謝内科、博士課程に在籍している松原は、最近林崎と星を見に行った仲。先輩の水野はさっさと彼女を作れと言ってくる。でも、松原は薄毛が気になって、彼女ができない。父親は飯田橋界隈に住んでいて、医院を開業しろと言ってくる。
あるビルの前で、秋枝に会い、一目ぼれしてしまった。彼女の夫とは知り合いだった。その夫と会った時彼女が出てきたので、関係も知っていた。それで、彼女の会社の前で待ち伏せし、夫の事をきっかけ(処方箋を不法に書いてもらって、ピルを入手してた)に飲む。

6・沢村亜美
お弁当やでバイトを始める。恭子といっしょに働いている。恭子が、お金はだすので、こっそり、早退させてほしいと言ってくる。花粉症なので、その薬が欲しいと。その後、恋人の木島がお弁当を買いに来て、恭子は、実は前に偽キルフルを売った相手だと言う。で、尾行したら、ちゃんと耳鼻咽喉科に行っていた。でも、市販の目薬を付けている。何かを隠していると社長は言う。
それで、恭子を呼んで体を調べると、DVの跡がみつかった。それで、恭子を社長が強く意見する。そんな男とは別れろと。

7・小野厚篤之
恭子の夫。お弁当やで、腐っていたと、クレームをつける。それは、新しい会社が東南アジアの食品のセールスで、成績が上がらない腹いせだ。そのせいではないだろうが、弁当を食べた後、すごい下痢をしたので、クレームをつけたのだ。それも二日にわたって。
しかし、社長に強く、DVについて意見をされてしまったので、なおさら怒りが募った。

8・三田秋枝
秋枝の夫の藤本は、秋枝に未練があった。ケータイを置いて行った。見てみると、家を出てゆく前に新しい彼氏ができたらしい。松原と言った。松原は、昔、不法に処方箋を書いてもらった病院にいた。それで、その病院を張り、松原を尾行した。しかし、彼と接点を持てそうな場所はなかった。それで、先輩の水野を尾行し、彼の行くワインバーで接触した。
ところで、秋枝は松原が新しい薄毛治療薬を飲み始めたのを不審に思った。それで、聞くと、水野に貰ったといった。不審に思ったので、水野にケータイをかけさせた。すると、水野は、ワインバーで知り合ったコンサルタントの藤枝に貰ったと言った。それは藤本に違いないと推理し、さらに問い詰めると、精力増進剤だと判明。ただちょっと、飲みすぎると命が危ない。それを秋枝は取り上げ、恭子にあげる。

9・三田秋枝
恭子は、お弁当やで、亜美に意見をされている。そんな薬を夫にあげて、夫婦仲を修繕しようなんて、間違っていると。実は、恭子は命が危ない、に賭けているのだが、亜美の勢いに負ける。そして、亜美はそれを取り上げる。だが、亜美は、こっそりそれを恭子の夫に渡す。亜美も同じ目的を持っていた。そして、恭子の夫は大量にのんで、心臓に異変を感じる。