盗まれて

「盗まれて」今邑彩
1・「ひとひらの殺意」
香子が叔父の駒井の部屋202号室に来る。香子がつきあっていたのはタクヤ。彼は「桜の花びらが舞い散っている」と電話をかけてきて、その後、女性と心中した。このたび、最後に書いていた小説が新人賞を取って見本本が出来上がってきた。
で、香子が言う。タクヤの部屋は702号室。その部屋で女性と心中していた。でも、そこでは、桜の花びらは舞い落ちない。
叔父が言う。「幻覚を見たんじゃないの?」
でも、香子は反論する。「でも、タクヤの遺品を整理したら、辞書の間に桜の花びらが入っていた。奥付けを見ると、去年出版された辞書。それなら、今年の桜。それで、私、推理したんです。叔父さんと部屋を代わっていた。それなら桜の花びらが落ちても不思議はない。そして、叔父さんは702号室で、女性と言い争って殺してしまった。で、困った。でも、そこは本来ならタクヤの部屋。それで、タクヤを自分の部屋に戻して、殺して、心中したことにしたんです」
2・「盗まれて」
サチヨからモモコに電話がかかってくる。モモコがバリバリのエリートと婚約したのでおめでとうの電話、かと思ったら、前にモモコの部屋に住んでいた女性(A)の話。彼女も、モモコの婚約したエリート君と婚約していた。で、Aの話。
Aがいない間に、部屋の物が増えている。隣の住民が、自分とそっくりの女性を見たといった。それで、ドッペルゲンガー現象(もう一人の自分)だと思った。ドッペルゲンガーに会うと、早く死ぬと言う。それで、婚約を取りやめて、外国へ行ってしまった。
それを話すと、モモコも同じ現象に会ったという。でも、彼女は、謎をそのエリート君が解いてくれたと言う。エリート君に相談したら、彼が尾行して、ドッペルゲンガー現象を演出したのは、隣のコンノという男だったと判明した。つまり、彼が嘘を言った。それで、問い詰めたら、引っ越して行った。さらに、モモコは言う。
でも、考え直してみたら、結婚ノイローゼにかかり始めていた。つまり、自分は、バリバリのキャリアウーマンでいくつもりだったが、ちょっと会社に疲れたから、結婚を夢見た。でも、まだ早いんじゃないか。つまり、もう一人の自分は、まだ仕事をしたいと思っているんじゃないか。サチヨはその意見に賛成する。
そして、サチヨは電話を切る。実は、これは、隣の男が、盗聴していた電話。そして、サチヨはエリート君に電話をする。そして、今までの話が嘘で、自分は、モモコの本心を知りたいから電話をしたことを話す。そして、エリート君は、婚約指輪を贈ってしまったが、気が変わったことを言う。そして、ドッペルゲンガーを出して、それとなく、この結婚は難しいという方向にもっていく方針だったことも。盗聴していた男は、この話をきいて、あることを思いつく。それは、読んで。
3・「情けは人の」
タケシはバーで、知らない男に誘拐の話をもちかけられる。それは、塚原産業の御曹司の誘拐。退職金をもらえなかったから、その代わりに誘拐をするのだと。
実は、タケシは、塚原産業の社長の隠し子だった。
そして、御曹司を誘拐する。しかし御曹司は言う。自分は、本当の子供ではないらしい。DNA鑑定でそう出たと。そして、苦しみ出す。病院に連れ込むと虫垂炎だった。そして、手術。その後、タケシは知らない男から、本当に誘拐したのは、タケシだったと言われる。そして、身代金をもらった後は、殺すつもりだったと。でも、病院に行ってしまったから、その話は流れたと。つまり、御曹司にかけた情けは、自分に帰って来たのである。
4・「ゴースト・ライター」
千次はなおみのゴースト・ライターをしていた。それは、なおみが勝手に千次の小説を、自分の名前で応募してうかってしまったからだ。でも、その代わりに結婚を申しだされたので、二人はうまくいっていた。
でも、千次が死んでしまった。そして、三か月後。千次のゴーストから陽子に乗り移れたとの電話を受ける。もちろん、陽子が電話しているが、陽子はそれを知らない。
そして、陽子の家で、陽子の乗り移っている、千次に会う。彼は、今まで通りにゴースト・ライターをするから、安心してと言う。今まで半分もらっていた原稿料は陽子に渡してと言う。なおみはOKする。
電話を切って、視点が陽子に代わる。実は、千次に頼まれてゴーストしていたのは陽子だった。彼女は、千次が好きだったから、今までやっていたが、もうやめようと思った。でも、このごろ、千次の幽霊が夢に現れて、お願いされたので、今まで通り、ゴースト・ライターをする決心をする。そして、しばらくすると、電話が鳴る。自分の電話番号を知っているのは千次だけ。おそるおそる取ると、千次の声で、「ありがとう」。
5・「ポチが鳴く」
私は公園で、ある女性に話しかけられる。「自分は犬が好きだけど、殺してしまうので、飼えない」と。話を聞くと、その女性の母が犬が嫌いで、殺してしまった事がある。そして、母は駆け落ちをしてしまったのだけど、今度は、自分が、夢遊病で、犬を殺してしまったらしい。父が、起きて、そう言った。確かに犬は死に、自分の手も血まみれだった。
その後、その女性が死んで、女性の夫が、自分の家に来てほしいと言う。そして、行くと、夫が話をする。それは、彼の推理。内容は次。
「義父は義母が駆け落ちをしたことを恨んでいた。そして、探して連れ戻して殺して、庭に埋めたんじゃないか。で、その後、犬を買った。それで、犬が、死体の上で吠えた。それが困るので、妻(義父からすれば娘)が殺したことにして、心に傷を負わせたんじゃないか。それと、その後、ずっと犬を飼わせないために。それで、妻は犬は好きだったけど、飼わなかった。でももう死んだ。自分が、義母の死体を探そうと思ったが、庭が広すぎて分からない。それで、犬をつれているあなたを招いた」
その時、庭から犬の鳴き声が。
6・「白いカーネーション
伸幸が母に白いカーネーションを贈っていた。妻の私は不思議に思って聞いてみた。すると、義母は、一度殺されたことになっているの、と言った。
義母の話。「私は、一度駆け落ちをする気になった。しかし、伸幸が鉄棒から落ちて骨折したので、駆け落ちできなかった。その日、駆け落ちの相手は、子供と一緒に車で電車にはねられて死亡。だから、私も本当は、その日に死んだの。それ以降、伸幸は白いカーネーションをくれるの」
で、私は推理。伸幸は、母が駆け落ちするとの電話を隠れて聞いたのではないか。そして、阻止するために鉄棒から飛び降りた。だから、自分がいなかったら、義母は死んだ。
だから、白いカーネーション
それから、義母は言う。「私が死んだから、押し入れの中の田辺克江という人の手紙を読んで」。死んだので、読む。
手紙の内容。「芳治は死んだ時、真っ赤なカーネーションを抱えていました。死んだ母にささげるために持っていた白いカーネーションが血で真っ赤でした」
他にもジワーンとくる話が二編。



「盗まれて」今邑彩
1・「ひとひらの殺意」
香子が叔父の駒井の部屋202号室に来る。香子がつきあっていたのはタクヤ。彼は「桜の花びらが舞い散っている」と電話をかけてきて、その後、女性と心中した。このたび、最後に書いていた小説が新人賞を取って見本本が出来上がってきた。
で、香子が言う。タクヤの部屋は702号室。その部屋で女性と心中していた。でも、そこでは、桜の花びらは舞い落ちない。
叔父が言う。「幻覚を見たんじゃないの?」
でも、香子は反論する。「でも、タクヤの遺品を整理したら、辞書の間に桜の花びらが入っていた。奥付けを見ると、去年出版された辞書。それなら、今年の桜。それで、私、推理したんです。叔父さんと部屋を代わっていた。それなら桜の花びらが落ちても不思議はない。そして、叔父さんは702号室で、女性と言い争って殺してしまった。で、困った。でも、そこは本来ならタクヤの部屋。それで、タクヤを自分の部屋に戻して、殺して、心中したことにしたんです」
2・「盗まれて」
サチヨからモモコに電話がかかってくる。モモコがバリバリのエリートと婚約したのでおめでとうの電話、かと思ったら、前にモモコの部屋に住んでいた女性(A)の話。彼女も、モモコの婚約したエリート君と婚約していた。で、Aの話。
Aがいない間に、部屋の物が増えている。隣の住民が、自分とそっくりの女性を見たといった。それで、ドッペルゲンガー現象(もう一人の自分)だと思った。ドッペルゲンガーに会うと、早く死ぬと言う。それで、婚約を取りやめて、外国へ行ってしまった。
それを話すと、モモコも同じ現象に会ったという。でも、彼女は、謎をそのエリート君が解いてくれたと言う。エリート君に相談したら、彼が尾行して、ドッペルゲンガー現象を演出したのは、隣のコンノという男だったと判明した。つまり、彼が嘘を言った。それで、問い詰めたら、引っ越して行った。さらに、モモコは言う。
でも、考え直してみたら、結婚ノイローゼにかかり始めていた。つまり、自分は、バリバリのキャリアウーマンでいくつもりだったが、ちょっと会社に疲れたから、結婚を夢見た。でも、まだ早いんじゃないか。つまり、もう一人の自分は、まだ仕事をしたいと思っているんじゃないか。サチヨはその意見に賛成する。
そして、サチヨは電話を切る。実は、これは、隣の男が、盗聴していた電話。そして、サチヨはエリート君に電話をする。そして、今までの話が嘘で、自分は、モモコの本心を知りたいから電話をしたことを話す。そして、エリート君は、婚約指輪を贈ってしまったが、気が変わったことを言う。そして、ドッペルゲンガーを出して、それとなく、この結婚は難しいという方向にもっていく方針だったことも。盗聴していた男は、この話をきいて、あることを思いつく。それは、読んで。
3・「情けは人の」
タケシはバーで、知らない男に誘拐の話をもちかけられる。それは、塚原産業の御曹司の誘拐。退職金をもらえなかったから、その代わりに誘拐をするのだと。
実は、タケシは、塚原産業の社長の隠し子だった。
そして、御曹司を誘拐する。しかし御曹司は言う。自分は、本当の子供ではないらしい。DNA鑑定でそう出たと。そして、苦しみ出す。病院に連れ込むと虫垂炎だった。そして、手術。その後、タケシは知らない男から、本当に誘拐したのは、タケシだったと言われる。そして、身代金をもらった後は、殺すつもりだったと。でも、病院に行ってしまったから、その話は流れたと。つまり、御曹司にかけた情けは、自分に帰って来たのである。
4・「ゴースト・ライター」
千次はなおみのゴースト・ライターをしていた。それは、なおみが勝手に千次の小説を、自分の名前で応募してうかってしまったからだ。でも、その代わりに結婚を申しだされたので、二人はうまくいっていた。
でも、千次が死んでしまった。そして、三か月後。千次のゴーストから陽子に乗り移れたとの電話を受ける。もちろん、陽子が電話しているが、陽子はそれを知らない。
そして、陽子の家で、陽子の乗り移っている、千次に会う。彼は、今まで通りにゴースト・ライターをするから、安心してと言う。今まで半分もらっていた原稿料は陽子に渡してと言う。なおみはOKする。
電話を切って、視点が陽子に代わる。実は、千次に頼まれてゴーストしていたのは陽子だった。彼女は、千次が好きだったから、今までやっていたが、もうやめようと思った。でも、このごろ、千次の幽霊が夢に現れて、お願いされたので、今まで通り、ゴースト・ライターをする決心をする。そして、しばらくすると、電話が鳴る。自分の電話番号を知っているのは千次だけ。おそるおそる取ると、千次の声で、「ありがとう」。
5・「ポチが鳴く」
私は公園で、ある女性に話しかけられる。「自分は犬が好きだけど、殺してしまうので、飼えない」と。話を聞くと、その女性の母が犬が嫌いで、殺してしまった事がある。そして、母は駆け落ちをしてしまったのだけど、今度は、自分が、夢遊病で、犬を殺してしまったらしい。父が、起きて、そう言った。確かに犬は死に、自分の手も血まみれだった。
その後、その女性が死んで、女性の夫が、自分の家に来てほしいと言う。そして、行くと、夫が話をする。それは、彼の推理。内容は次。
「義父は義母が駆け落ちをしたことを恨んでいた。そして、探して連れ戻して殺して、庭に埋めたんじゃないか。で、その後、犬を買った。それで、犬が、死体の上で吠えた。それが困るので、妻(義父からすれば娘)が殺したことにして、心に傷を負わせたんじゃないか。それと、その後、ずっと犬を飼わせないために。それで、妻は犬は好きだったけど、飼わなかった。でももう死んだ。自分が、義母の死体を探そうと思ったが、庭が広すぎて分からない。それで、犬をつれているあなたを招いた」
その時、庭から犬の鳴き声が。
6・「白いカーネーション
伸幸が母に白いカーネーションを贈っていた。妻の私は不思議に思って聞いてみた。すると、義母は、一度殺されたことになっているの、と言った。
義母の話。「私は、一度駆け落ちをする気になった。しかし、伸幸が鉄棒から落ちて骨折したので、駆け落ちできなかった。その日、駆け落ちの相手は、子供と一緒に車で電車にはねられて死亡。だから、私も本当は、その日に死んだの。それ以降、伸幸は白いカーネーションをくれるの」
で、私は推理。伸幸は、母が駆け落ちするとの電話を隠れて聞いたのではないか。そして、阻止するために鉄棒から飛び降りた。だから、自分がいなかったら、義母は死んだ。
だから、白いカーネーション
それから、義母は言う。「私が死んだから、押し入れの中の田辺克江という人の手紙を読んで」。死んだので、読む。
手紙の内容。「芳治は死んだ時、真っ赤なカーネーションを抱えていました。死んだ母にささげるために持っていた白いカーネーションが血で真っ赤でした」
他にもジワーンとくる話が二編。