ロシア紅茶の謎

『ロシア紅茶の謎』(有栖川有栖
1、 動物園の暗号
暗号物で面白いのにあったことはない。大概はつまらない。
これは、動物の名前がつらねられた暗号をもっていて、それが駅名になっている。それのいくつかに○がついていて、これは中央線の梓2号を示している。だから、犯人は梓、というもの。
でも、よく考えたら、これは死ぬ前に書いた暗号で、ペンもなく、たまたま犯人が梓だから当たったようなものの。別人だったら、どうしようというんだ。あまりいただけない。

2、 屋根裏の散歩者
これも、推理ではない。つまらない。筋からいうと、女性を襲って髪を切る犯行が続いている。そして、話は飛んで、あるアパートの管理人が殺される。彼は、屋根裏からのぞいていた日記をつけている。屋根裏からのぞいていたなら、何号室と書けばいいのに、それを警察に知らせればいいのに。それもしない。そして、Iとか大とか暗号で記している。そして、最後は、主人公が屋根裏へ登って、その暗号は寝ぞうだと見抜き、犯人の上に髪を落としてエンド。推理もなにもない。

3、 赤い稲妻。
これは、だましのテクニックがとても冴えている。でも、偶然が過ぎる。
筋。ある、稲妻の夜、ある目撃者が、数十メートル離れたマンションの7階から黒人女性が落ちるのを目撃する。彼は走ってそこへかけつけると、その女性が死んでいる。しかし、警察が来て、部屋を調べると、中からチェーンがかかっている。これは自殺か?
さて、それから20分後、A氏の妻が20分ほど離れた踏切で、車ごと電車にひかれて、死ぬ。ところで、黒人女性はA氏の愛人。A氏はその時間、友人とレストランにいたと主張。でも、調べると、キャンセルになっていた。
警察の調べでは、ベランダに大きなイヤリングが落ちていて、黒人女性の耳にも片割れがついていた。しかし、黒人女性はピアスの穴を開けていた。
主人公は大きなイヤリングを不審に思う。ピアスの穴だと、大きいのは痛いからつけない。だとすると、それはA氏の妻ので、A氏がつけかえたのではないか。(この辺ちょっと説明不足。ピアスでも大きいのはつける。逆にピアスとイヤリングは構造が違うので、すぐにわかる)
で、なぞ解き。チェーンがかかっている以降、妻と黒人女性は、7階から落ちたはずだ。ベランダにも妻のイヤリングがあったのだから。その直後に、夕食をキャンセルしたA氏は、現場についた。そして、二人の女性が落ちているのを発見した。すべてを理解した。で、妻のイヤリングを黒人女性につけて、瀕死の妻は、車に乗せて、現場を去った。そして、近くの踏切で、事故に見せて、電車にひかせた。選挙前で、スキャンダルが怖かった。
そして、目撃者は、稲妻で、黒人女性しか見えなかった。
感想。あざといといえば、あざといし、偶然がすぎるような気もするが、まあ、いいか。

4、 ルーンの導き。
京都の家に4人の外人研究者と一人の日本人翻訳家が集まる。で、一人が殺され、手に4枚のルーンのカードを握っている。全員がほとんど一緒にたが、ある時間だけ、翻訳家がトイレに入っていた時間があった。その時、別人が、トイレの前に靴がぬいであるのを見る。だが、トイレのドアは外開き。で、探偵は、その時間、本当は、トイレに入っていなかった、つまり、犯人は翻訳家だと謎を解く。で、ルーンのカードの意味する文字は、4は、ISDマークで日本を意味するから。で、動機は、調べてみると、翻訳家の妹が、被害者にもてあそばれて、自殺をしていたから。

5、 ロシア紅茶の謎。
すごい斬新なトリック。紹介したくないの、読んで。
他にも、面白い謎が一つ。

今週面白かったのは、「なぞ解きはディナーの後で。スペシャル」
まず、高名な画家がアトリエで自殺したと思われるの。そのアトリエには静脈認証システムがあって、それを通って、画家が中に入って、焼死。それも、数億の絵を一緒に燃やしている。手には、大学から贈られた指輪(右手)。それから自画像が一つある。それには左手に同じ指輪。
で、話は飛んで、沖縄。一週間前。主人公が、泥酔して、ホテルの部屋に入る。そこで、ホテルのオーナーの息子(A)からケータイでお誘いがあり、Aの部屋をノックする。しかし空けてくれない。だが、しつこくノックしていると開けてくれるが、中に死体。そこで殴られて失神。次に目が覚めた時は、警部の部屋。そこでキスされそうになり、殴って、部屋を飛び出す。そして眠る。次に目が覚めた時は、自分の部屋。で、Aの部屋にいって、ケータイのことを聞くと、女性がいて、否定される。さて、食堂で昨晩のことを尋ねると、Aはまた否定。さてさて、画家がお世話になっている店の女将には、別れた夫がいて、金を盗みにくる。
で、このことを執事にはなす。と謎を解く。
まず、泥酔した夜のことから。主人公は、泥酔して、部屋を間違えた。そこで隣の部屋をノックした。隣の部屋は警部の部屋ではなく、画家の部屋だった。で、画家は殺しをしたばかりで、騒がれると困るので、開けて、主人公を殴って失神させた。そして、主人公を警部の部屋に戻す。そこで、警部が戻って、殴って、廊下へ。それを、Aが主人公の部屋まで戻して、ケータイの履歴を消した。他の女性を誘ったから、その女性が二番目だと思われると困る。さて、画家の殺したのは、誰か? 女将の元夫。それを、カジキ用の箱に入れて、日本に輸送。そして、画家が自殺したように思わせて、焼き殺した。証拠は、指輪。画家は左手にしていたが、死体は右手にしていた。それは、沖縄で、画家が元夫に渡した後、右手にして、抜けなくなったと言っていた。
感想。焼死の場合、間違いなく、入れ替わり。最初に、DNAのことを一言も言わずにする―するのが、ミソ。