あなたが名探偵

「あなたが名探偵」
1、 蚊取り湖殺人事件。(泡坂妻夫
この人は、ひょうひょうとしていて、本当にいいわ。薬の名前にしても、たちまち治るから、たちまち薬だとか、みるみる治るから、みるみる薬だとか。本当に職人芸。
蚊取り湖の近くのスキー場で、主人公が怪我をする。すると、たちまち薬を塗って包帯をしてくれる。そのとき、みるみる薬もあるという。主人公の次の患者(A)にはみるみる薬を塗る。
翌日。殺人事件が起こる。Aが殺されている。現場は、蚊取り湖の西の端。そこは氷がはっていて、誰かがワカサギつりをした穴があいている。ところで、Aの死亡推定時刻は、前夜の10時。主人公たちは、昨日治療してもらった小田切病院の看護師のBと一緒に、湖の東の端にあるホテルで、民謡教室を見学していた。
さて、Aの首に巻き付いている包帯の切り口を見ると、主人公の包帯と切り口が一致することが判明。その包帯は、昨日、小田切病院の看護師(B)がポケットに入れていた。で、Bが犯人ではないかと推理。つまり、Bは自分のポケットの包帯で殺した。でも、それを残しておくと、足がつくので、Aの脚の包帯を首に巻き付けた。これは、主人公の次に切った包帯なので、主人公の包帯と切り口が一致した。
そして、アリバイに関して。昨日、フェーン現象が起きた。で、湖の氷は、岸の部分だけが解けた。そして、夜、嵐が来た。なので、東側の氷が、西側に流された。

2、 お弁当ぐるぐる(西澤保彦
これも、独特な語り口で、超面白い。
男の刑事はイケメン。音無し美紀(よしき)。捜査注、ぬいぐるみ(ブランド物で超高価)のことばかり考えている。女性刑事は、則竹サチエ。目の前のイケメンと将来結婚する妄想ばかりを抱いている。
A(夫)が殺されている。Aは二―ト。リストラされてから、ぶらぶらしている。お弁当は妻が作ってくれる。でも、まずい。近くに弟夫婦が住んでいて、その嫁は料理が上手なので、しょっちゅうそこでお昼を食べている。たまに、金をせびっている。でも、この一月はなし。ところで、死亡推定時間は、お昼。その時間、妻は、保険のセールス。弟は、ラジオのディスクジョッキーで、休憩中。弟の妻は主婦なので、全員にアリバイなし。
ところで、Aの家には倉があり、昔から受け継いできたお宝があったはずなのに、空になっている。こんな苦しい時なので、売ればいいのに、妻が頑固に反対していたから、売ってはいない。どのくらい高価かは不明だが、かなり高価らしい。犯人はこれが目当てだったか? ところで、Aは新聞を掴んで死んでいた。なので、それがダイイング・メッセージなのか、長々と論議をする。それも、超こじつけ。これも面白い。さらに、お弁当が空になっているので、犯人が食べたのではないかと推理。でも、超まずいお弁当を食べて、どうしたのだろう、途中で悶絶死しているのでは、ないか、などとも推理。この辺も面白い。
で、話はドンと飛んで、刑事のなぞ解き。
Aはお弁当がまずかったので、弟の嫁の所へいってお昼を食べていた。その間、嫁はAの家に行って、倉のお宝を自分の借りた倉庫に移していた。いつか売るつもりで。でも、ある日、それをAに見つかって、戦いになって、Aを殺してしまった。
で、刑事が読売新聞を掴んでいたことから、ダイイング・メッセージで嫁売り、ではないかと、推理。失笑を買う。

3、 大きな森の中の小さな密室(小林泰三
大きな森の中に、借金をした人達が集まる。辺鄙なところ。午前中の相談が終わって、午後になる。しかし、午後一番の相談者が部屋に入ろうとすると、扉があかない。それで全員でいく。いや、その前に、廊下の電気が消えている。見ると、ブレーカーが落ちている。そのままにして、部屋の前に行って、全員で扉を押す。すると、めりめりと音がして、扉が開く。中には、主人が殺されて倒れている。腹が引き裂かれ、内蔵が出され、包丁が喉に突き刺さって、部屋は血の海。窓は全部内側から鍵。
で、なぞ解き。探偵役が、ドアを調べると、接着剤がはがれた跡。それで、最後に部屋を訪れた人が犯人だと推理。そいつは、接着剤でドアを閉じて、全員で押して、中に倒れたすきに、服に血がついたと思わせた。でも、前に、殺した時に血がついていた。それを、コートで隠していた。で、一番先に転んで、血がべっとりついたAを調べると、コートの中も血にまみれていた。

4、 ヘリオスの神像(麻耶雄嵩
Aの部屋でAが殺されていた。ヘリオスの神像が三つあったが、二つがこわされていた。発見者は友人の三人。約束をしていて現れなかったので、部屋に入った。一人が恋人で鍵を持っていたので。発見時、エアコンが強でついていた。ドアに内側から目張り。窓は内側から鍵。目張りはかなり強力に張り付いていて、三人、全員がかなりの抵抗感を感じた。一人の狂言はない。マイコンガスメーターが止まっていた。ガスコンロが解放になっていた。
発見したのは、夕方5時。死亡推定時刻は、夜7時から11時。
前日のアリバイ。千絵子。午後8時から9時、ゼミの先生や先輩と一緒。
春野。前日は5時半に下宿に帰って、それから風邪気味で寝ていた。
夏川。6時に帰宅。8時から9時半は飲食店でバイト。
春野の証言。部屋に入った時、水道が流しっぱなしになっていたので、止めた。部屋にガスの匂いはしなかった。
前日に電話をした友達がいた。その人の証言。夜9時と10時に電話をした。二度とも、20回くらいコールしたんだけど、出なかった。さらに、被害者は几帳面だから、留守にするときは必ず留守電にする。それをしてないということは、傍にだれかいたけど、出られなかった、となる。本人はもう死んでいた?
これで、死亡推定時刻は、7時から9時に狭められる。
留守電に関しては、翌日朝、また同じ人が電話をしたら、留守電になっていた。このことから、10時の時、犯人が、被害者が生きていたと偽装するために、留守電にしたと考えられる。
別の友人の証言。被害者はゆすりをしていた。となると、犯人は、ゆすりのネタを探して、神の像をこわしたことになる。そして二つ目で発見。
その後、千絵子の友人の秋山の証言で、千絵子は電子機器全般について、カラッキシ、扱いがダメ、とのこと。
探偵の推理。犯人は、エアコンの風圧で目張りをした。しかし、部屋から出て一分後に起動させるボタンがあるのに、それは使わなかったようだ。ということは、部屋の外からリモコンで起動したと考えられる。新聞受けの蓋が外されていたから。となると、機械に弱い奴、となる。犯人は千絵子か? 他の二人が弱いかどうか分からない。犯人は、三人で、発見した後にリモコンを部屋に置いた、となる。
さらに詳しいなぞ解き。まず、電話の件。9時の時には、犯人は、殺して部屋の外に出た後だった。そして、10時の時。電話がうるさくて、隣近所に聞こえると困ると思った。同時に、まだ生きていると偽装するために、留守電にした。つまり、10時には部屋にいた。この時点で、夏川は、30分以上離れた場所でバイトだったから、のぞかれる。
それから、ガスコンロの口が開いていたのに、ガスの匂いがしなかった点。それは、マイコンメーターがダウンしていたから、ガスが出なかった。マイコンメーターがダウンした原因は? 犯人は、浴槽で体か何かを洗うために浴槽に湯をためたのではないか? だが、何か外出する必要にせまられ、一旦外に出た。でも、湯がたまりすぎて、暑くなりすぎて、マイコンメーターがダウンした。
そして、エアコンが強になっていた原因は? 一旦外から帰ってきたら、部屋が蒸気で濡れていた。それを乾かすため。つまり、部屋中を探すひつようがあった。
所で、千絵子は、神の像の中が空洞であることを知っていた。だから、部屋を探す必要はない。一番に神の像を壊せばいいのだから。それを知らなかったということと、9時、10時のアリバイがない点から、犯人は春野。

5、 ゼウスの息子たち(法月倫太郎)
これも、発想の転換というか、隙間をつかれて、絶句だったわ。彼は天才ね。
でもって、これは面白すぎて、秘密にしたいから、自分で、読んで。

戸津川警部も面白かったわ。
Aの死体をBと誤認させる方法。Bを焼く。近くに、Aの免許証を置く。で、Aの部屋に、Bの髪の毛の入ったゴミパック、歯ブラシ、カミソリなどを置く。これでDNA鑑定でAと思われる。このドラマは、さらに、これを鎌倉電鉄のマニアが鉄道を馬鹿にした人間に向けて行った行為と思わせるために、ジオラマを置く、という構成になっていて、なかなか、面白かったわ。