転生

「転生」貫井徳郎
重かったわね。ルポルタージュみたいなかんじ。ドキュメンタリーと言ってもいいくらい。
筋。まず、僕は、心臓移植手術を受ける。そして、エリコという女性の夢をみる。この女性はよく夢に出てくる。それから、今まで好きでなかった肉が好きになる。コーヒーもブラックだったのが超甘党になる。それと、絵が超うまくなる。それで、移植された心臓に記憶があり、それが転生したのかと考える。友達に相談すると、アメリカで同じような事例があったと教えてくれる。
それで、自分が心臓をもらった人が、どういう人だったかを知りたくなる。心臓移植は、4時間以内でないとダメ。となると、心臓移植をしたのと同じ日に、事故で死んだ人がドナーだと考えると、スムーズにいく。それで、新聞で同じ日に事故で死亡した人を探す。
すると、松井ナオコという女性が浮かぶ。その人の家族を探す。だが、事故のあった近辺で聞き込みをしても、該当する家がない。だが、数日後、噂を聞いたという該当家族から連絡がある。そして、会いたいという。で、会う。
だが、三日後、また会いたくて行くと、もう引っ越している。さらに、大家が言うには、三日前に引っ越してきたばかりだと言う。
何か変。その後、エリコの夢に出てきた、美術館を探す。そこの近くのケーキ屋で、エリコの似顔絵を見せると、その人は、良く買いに来ると言う。エリコは実在しているらしい。
で、美術館で、夢に見た画家の個展があって、そこへ行くと、エリコが来ていて、住所を書いている。それで、エリコに会う。そこでエリコに夢の話をする。二人で、砧公園でデートをして、変なストーカーに殴られそうになったこと、また、ある日、家の傍で自分が殴られて、死んだことなど。
すると、エリコは、それは、かつて付き合っていた一哉と一致すると言う。確かに、一哉はストーカーに殴られて、殺された。そして、その死んだ日は、僕が手術をする二日前だった。僕は、一哉の心臓が、自分に移植されたのではないかと考える。
そして、ネットで心臓移植を左右する団体――ゴッド・ハンド――の存在を知る。この団体は、ドナーから心臓が提供された場合、どのレシピエントに移植したらいいかを、決める団体である。そして、一哉の父(警視であるが)は、その団体の一員だった。だから、嘘を言っているのではないか。つまり、脳死状態になったのは、殺された翌々日だったのではないか。
だが、父は否定する。さて、いきづまっていると、ある教授から朗報がはいる。それは、アメリカの研究者が、超冷凍保存させた心臓を、何日後からに生き返らせて、別の肉体に移植して成功したというニュースである。これは、動物実験だが、人間での実験を申請しているということである。
それで、ピンときた。実は、一哉の心臓は、そうやって、超冷凍保存され、それが、二日後にぼくに移植されたのだ。それは実験であるから、一哉の父は、それを隠すために、松井ナオコの両親をねつ造し、僕にそのナオコの心臓が移植されたように思わせたのではないか。
それで、僕は一哉の心臓が移植されたのを確信する。さらに、別の友達が、ネット検索で、細胞には脳の記憶とは別の細胞記憶というものがあり、それが、そのまま移植されたのだと教えてくれる。それで、一哉の記憶が転生したのも納得する。