贖罪のソナタ、Wの悲劇

「贖罪のソナタ」中山七里
この人は、「カエル男」から大ファンなのよね。中には全然面白くないものもあるけど、これは面白かったわ。それに、法律関係(裁判所とか、刑務所とか)の事を良く調べてあるわね。重くていいわ。
でも、途中は、少年の過去(少年院)のことが一章まるごと書いてあるのはどうかね。ちょっと、全体が軽い感じ。でも、最後の裁判で、ドンデン返しで攻めていて、面白いから、まあ、いいか。
筋。主人公は、誰かに依頼されて死体を捨てるの。この辺、殺したとは一つも書いてないので、犯人は別だとすぐわかる。だから、惹句――死亡推定事故に、彼は完璧なアリバイがあったーーは、まったく無意味。彼は、悪徳弁護士。金のある相手だと三億でも四億でも要求する。
しかし、今回引き受けたのは、国選。金よりも、有罪をひっくり返すことで、名誉が目的。
東條(製材所の社長)が、積載量ぎりぎりの荷が崩れて、意識不明の重体になる。妻が人工呼吸器の傍にいた。息子も(左半身付随)。
妻がうとうとしていたら、息子が、機械が故障し、赤ランプだと言って起こした。機械は停止していた。慌てて三回、ボタンを押した。青にした。しかし夫は死んだ。このところ、裁判では、ボタンに妻の指紋が残っていたので、機械を止めたのは妻という判決だけど、変。妻は、再始動させようとしてボタンを押したと言っているので、妻の指紋がついているのは当然。
それに、息子は左半身付随だからと言って、無実とはだれも思わない。夫は、毎日、個室代が3万円もかかっているので、右足でコンセントを抜くこともできるし。そうしたかも、と誰でも考える。でも、実は、パソコンで不具合を起こしたのだけど。
それはさておき、主人公は、調書を読み、電磁波で不具合のおこる呼吸器だと突き止める。さらに、裁判で妻にボタンをおさせ、止めることはできないと証明し、無罪を勝ち取る。
しかし、妻は、3月前に、夫に掛け捨ての3億もの保険を賭けたので、妻が、何らかの関係をしているのは分かっていた。賭け金だけでも、毎月20万くらいになるだから。
さて、裁判の後、主人公は、息子につめよる。
父と、ゆすりに来ていた男を殺したのは、君だね、と。父を殺したのは保険金目的。母を犯人にしたのは、母がジャンキーで自分をこんな体にしたから。
さて。ゆすり男を殺した手口は。何万ボルトもの電線を、通り道にたらしておいて、接触させた。それを事故だと言って、主人公に捨てさせた。
その後、主人公は、恨みを持っている女性に刺される。死にそうな所を、刑事に助けられる。その時、「犯人は母子だ」と言う。すると、刑事も、分かっていたという。さて、その理由は? 読んでください。とても面白いから。このあと、怒涛のドンデン返しがある。

今週面白かったドラマは、片瀬リノの。
看護師Aの家で、Aが殺されるの。密室で、事故にみせかけてあるので、最初はお風呂場で脚を滑らせて頭を打ちつけて死んだと思われたの。
でも、調べるうちに殺人の容疑が深まるの。で、密室のトリックだけど、庭の洗濯物が二列なんだけど、ハンガーの方向が違うので、物干し棒を使ったと推理。つまり、物干し棒の端の蓋を取って、エアコンの穴から入れて、中を鍵を通したの。
で、Aの息子のつきあっている口のきけない娘の指紋がでたので、彼女Bだと断定。彼女は、Aの息子の子供を妊娠していたの。でも、Aの息子は頭がよくて、京大へゆくと思われていたの。でも、彼女ができてからは、就職すると言われたので、喧嘩して殺したと思われたの。
で、話は飛ぶけど、Aの夫は12年前に病院の屋上から落ちて死んでいたの。で、Aはその死の真相を調べていたの。看護師のDに12年前の小児科の患者名簿を見せてほしいと言ってきていたの。で、Dに話を聞くと、何か隠しているの。さらに、Dの講座には年に100万づつの金が振り込まれていたの。で、12年まえ、院長とAの夫が屋上にいく姿が見られていたので、院長が突き落として、それをみたDが強請っているんじゃないかと、推理されたの。
さて、Bの母親は、結構大手の医学危機会社の社長に12年前に拾われたの。で、片瀬の推理。Bは、わざと指紋を残した。それは、もし密室のトリックが暴かれたら、自分が罪をかぶろうとして、わざと指紋を残したのではないか。Bが庇うと言えば、母親しかない。それで、母親を問い詰めるの。すると母親は吐くの。12年前、夫と娘Bは、偶然院長がAの夫を突き落とす所を見た。Bはそれを絵に描いたが、父に、母の為だからと言われて、心にしまった。それで、口もきけなくなってしまった。一方、夫は、小さな会社だったが、そのネタで院長を脅して医療機器を大量に買わせて、大きな会社に成長した。
で、それを話そうと思って、Aの家にいき、Aと喧嘩して殺してしまった。で、逃げるところを、Bに見られた。そう白状して逮捕されると、娘のBは口が聞けるようになった。

「Wの悲劇」(夏樹静子)
テレビで放送されていて、面白そうなので、読んでみました。そっくりさんのすり替わりなどはなかったけど、面白かったわ。法律を深く読んでいて、興味深かったわね。それを、そっくりさんのすり替わりを入れて、どういう風にふくらますのは、興味津々ね。
筋。和辻家の別荘。親戚などが集まっている。和辻会長の姪の子供、摩子が、夜の9時。会長を殺したと言って、会長室から出てくる。手には帰り血とナイフ。
彼女の言い分。「会長に犯されそうになったので、争っているうちに刺してしまった」。
それで、その場にいる全員が、外部犯に見せかけるように、偽装工作をする。
まず、死亡推定時刻を後ろにずらす。11時30分にグラタンの出前をとって、それを医者の胃ゾンデで、スープとまぜて、胃に送りこむ。9時半には、ナイフと会長の現金などを持って、摩子をハイヤーで送り出す。それらは、盗まれた物として摩子が処分する。
それから、会長の遺体を雪の降るベランダに出す。腐敗が遅れて死亡推定時刻が後ろへずれる。
それから、はきふるした靴で、外へ出て、戻る。これで、外部犯が侵入したように思われる。靴跡は重ならないように注意した。会長室の鍵を外す。外の電話線を切る。靴は見つからないように、メリケン粉の缶の下の方へ隠した。
しかし、刑事が見た所、外へ出た足跡を入る足跡が踏んでいる一か所あった。ベランダのすぐ脇。
それから足跡の脇にほこりが落ちていた。それが物置まで続いていた。さらにメリケン粉の入っている缶の脇に粉がこぼれていた。中を調べると、外の足跡とそっくりの靴が入っていた。これで、外部犯に偽装した内部犯と断定。
しかし、ベランダに胃ゾンデの切れ端が落ちていた。それは、医者が長すぎるので切った物。そして、医者の胃ゾンデを調べると、グラタンのかけらがついていた。これで、刑事は、11時半のグラタンも偽装工作だと断定。つまり、犯行は、11時半前で、死体を冷やして11時半以降の死亡推定時刻にずらしたと。
これによって、摩子も犯人に含められる。刑事は、摩子をハイヤーで返していることから、摩子が犯人だと推理。全員につめよる。すると、摩子が「私がやった」と白状する。摩子は拘置所へ。
これにより、犯人を隠匿した罪により、親族全員に相続権がなくなる。しかし、直径のものは除く(直径なら心情的に隠匿するから)という条項により、摩子の母の淑枝だけは除かれる。
ここまで考えた時、実は、犯人は淑枝で、摩子に罪をかぶせたんじゃないかと、家庭教師の春生は考える。
実は、春生は、夜中にベランダの窓が開く音を聞いたのだ。
つまりこうだ。摩子に罪を白状させるために、あるいは、警察に追い込ませるために、淑枝はわざと逆に踏んだ足跡をつけた。それから、埃を物置までまいて、誘導して、メリケン粉をまいた。それから、夜中に、胃ゾンデの切れ端をベランダに置いた。
これによって、摩子が自白したら、偽装を行った親族は、相続権を失う。しかし、自分だけは免れる。
しかし、黙っていても、会長に可愛がられていた淑枝には99%の遺産は入ってくるはず。誰かに頼まれたんじゃないか、と春生は考える。
つまり、会長を殺したい男がいる。そいつが会長を殺しておいて、淑枝に身代わりを頼む。さらに、「摩子なら、過剰防衛で罪が軽くなる」と教え、摩子に身代わりになってもらう。
そうだ。それに違いないと、春生は考え、淑枝に言う。
すると、淑枝は、否定したが、その後、鐘平に「あなたのためにやったのよ」と言いよっていた。
犯人は鐘平か? 鐘平は女のことで、クビにされかけていた。
でも、遺伝子研究の研究所を作ってほしいが、大反対されていた道彦にも動機はある。
その事を刑事に話す(淑江に話したことも)。すると、刑事は、「そこまでやったのなら、敵は尻尾を出すでしょう」と言う。
その夜、春生は、淑江の机に呼び出しの手紙をおく。しかし、淑江は事情聴取で警察へ。来たのは、XX.
そして、春生の推理が正しいので、殺そうとする。しかし、そこへ、鐘平と刑事がかけつける。