誰か

「誰か」(宮部みゆき
最初は退屈。自分は社長の入り婿なので、頭が上がらないとか、聞き込みに行っても、まるっきりカスリもしないとか。途中までは退屈。でも、最後にはドンデン返しがあるから、まあ、いいか。
筋。私は、社長の入り婿。その社長のお抱え運転手の梶野が死んだ。梶野には、二人の娘がある。さと美(32歳)とリコ(22歳)。父は、あるマンションの前で、自転車にはねられて死んだ。犯人は不明。赤いシャツを着ていた男の子(中学生くらいだった)との目撃証言あり。
二人の娘は、その事と父の半生を本にしたいと社長に相談をもちかけてくる。社長は、可愛がっていた運転手だったので、面倒をみると約束する。そして、私が、原稿をまとめる役にされた。
私は、姉妹に会う。姉は結婚が決まっていて、本の話にはのり気ではない。妹は、積極的で、本をマスコミなどに取り上げてもらって、是非犯人を割り出したいと言う。
さて、私は、事故のあったマンションの前で、ビラを撒くことにする。実際に撒く。すると、電話をかけてきてくれた女性がいる。息子の中学で、その事が話題になっていると。
犯人は中一で、事故以来自転車に乗っていないので、ほぼ判明していると。
で、警察にその事を言うと、スクール・カウンセラーが相談を受けた。まもなく自首してくるので、待ってくれと。
さて、私は、本を書くにあたって、姉に、もう一つ相談を受けていた。それは、20数年前、自分は誘拐された。金の要求はなかったが、その後、父と母の人生はガラリと変わった。その事が尾を引いていて、今回の自転車事故も、その関係者が、中学生をそそのかして、させたのではないか、というものだった。
私は、梶野が20数年前に勤めていたトモノ玩具に行く。そして、数回空振りして、ある老人にたどり着く。その老人は、当時の事をよく覚えていて、野中という女性が、梶野と一緒に辞めたと言う。そして、野中に連絡が取れるかも、と言う。私は、自分の電話番号を残して、連絡をくれるように言う。すると、野中から電話があって、20数年前のことを話してくれる。
それは、誘拐などではなく、野中が、DVマニアの自分の父を殺してしまったので、死体を埋めるのを、梶野に頼んで、その間、娘を預かっていただけだった。
さて、二つの事件は解決した。だが、私は、妹のことが気になって、尾行する。すると、姉の婚約者と腕を組んで歩いていた。
姉にその事を言う。すると、姉は薄々感ずいていたと言う。昔からそうだった。父の事を本にしようと言うアイデアも、結婚式を遅らせるためだったと言う。
それにしても、一日、他人に預かってもらっただけだったのに、「誘拐だ、誘拐だ」と騒ぐ姉と、すべからく姉の男はいただかないと気が済まない妹。面倒クセー姉妹だ。