ふたたび赤い悪夢。殺人者は夜明けに笑う

「ふたたび赤い悪夢」(法月倫太郎)
アイドルのゆりりんがラジオ局の倉庫で、ストーカーみたいな男に刺される。しかし冷たい血だった。彼女は失神。
数十分後、ゆりりんから法月に助けての電話が入る。男に刺されたのに死ななかった。ラジオ局の外では、誰かが刺されたらしく、騒ぎになっている。私がもみ合って刺したのかも。ゆりりんは法月に保護される。
数時間後。ケーサツからの情報。ラジオ局の外で刺されて死んだのは、ラジオ局のバイト(A)。彼はデルタ・レコードの早さかルミのストーカーで、マーキュリー・レコードのゆりりんを刺そうとしたのは、ゆりりんを蹴落とすため。二人はライバル。
さらに守衛の話。バイトのAが腹にナイフを突きさして、外へ出た姿は見ていない。タートルネックのセーターで、前に血は付いていなかった。
法月の推理。そのラジオ局は元教会だ。秘密の通路があり、そこを使って犯人は運びだしたに違いない。だが、調べても、秘密の通路はなかった。さらにゆりりんの服には、バイトAの血が付いていた。
そこで考えられるのは、ゆりりんと二人は、倉庫で争ったが、二人とも致命傷ではなかった。だから、バイトはタートルネックのセーターを前後ろにして外にでた。そこで犯人に刺された。さて、ゆりりんの服についていた血を詳しく調べると、クエン酸ナトリウムが濃かった。これは、血を凝固させないための薬。つまり、バイトAは刃のひっこむナイフの柄の中に自分の血を抜いて入れて、ゆりりんを刺した。当然、刺さらないで、血だけがゆりりんの服につく。
では、これは誰の差し金か? 当然、ゆりりん殺害事件としてスキャンダルになるので、デルタ・レコードの誰かに違いない。
同じ頃、ゆりりん主演の決まっていた映画が、デルタのBによって、主役を、デルタの早坂ルミに交代するよう、森山監督に相談がなされていた。Bは翌日発売の週刊誌の記事を見せた。それには、ゆりりんの母親が、子供と夫を殺して自殺したとの記事が出ていた。ゆりりんは、自分に、人殺しの血が流れていると、深く思い悩んでいた。
さて、法月は、その記事を出版社に送りつけた謎の男を探る。出版社に行って、封筒などを調べると、ゆりりんの兄だった。彼が言うには、ゆりりんを貶めるように脅されていた。
そうこうしていると、デルタの葛西が心臓発作で死ぬ。葛西は早坂ルミのプロデゥーサー。彼は死ぬ間際に、森山監督の妻は、死んだと思われていたゆりりんの母、通代だと言う。
通代が死んだと思われたトリックは、夫によって仕組まれたもので、色々とあるのだが、長くなるのでカット。
さて、バイトのAを操っていたのは、デルタの葛西。彼は、森山監督の妻の通代とも親しくて、今回の計画をうっかり漏らしていた。なので、Aがゆりりんを殺したと間違って思いこんだ母、通代が、Aが公園で葛西とあっていた時に、思いあまって刺した。
でも、これも、トリックがあって、本当に刺したのは母ではないのでが、それは面白いので読んで。

私が前に師事していた若桜木先生のところで、新人賞の一次とか二次を通過した実力者の作品をネット販売し始めたの。それを紹介するわね。どのくらいのレベルなら一次を通過するか、とか、参考になるから。ぜひダウンロードして読んでほしいわね。
購入は、http://www.e-bookland.net/square/catalog.asp

「殺人者は夜明けに笑う」香川由美
アガサクリスティ賞の一次通過の作品。
面白かったわね。『そして誰もいなくなった』を映画製作することになって、その最中に、次々に人が殺されていくの。時代は、戦時中。場所はロス。その当時のロスのこととか、映画業界のこととかがよーく調べてあるわね。リトル東京と名前が変わったばかりとか。このくらいよく調べてあれば、一次は通過するのね。
筋。映画の顔見せの場面。エルはアリソンの首にスカーフを巻きつけて、締め上げて殺す。誰も見ていないスタジオの隅で。ジェイソン・リーが、看板に吊り下げられた死体を発見する。それは、アリソンの死体。
さて、映画の関係者のサマンサはアリソン殺害の犯人は、「そして誰もいなくなった」の関係者の中にいると推理。
ミアとエルは協力し、オルガの顔を洗面器の水に沈めて殺した。日暮れまで用具入れに隠した。そして、市庁舎の突端に人間がぶら下げられた。死体はオルガだった。海藻のかけらがあった。海で殺された?
タラとオルガが役を争っていた。警察はタラを疑う。
サマンサがブロックで殴って、タラを殺した。死体を箱に入れて、台車に乗せ、エレベーターで運びだし車に乗せた。
リトル東京で焼死体が発見された。死体はタラだった。紫の古裂で分かった。
エルはダドリーのゴーストライター。独り立ちしたがっている。
警察の考え。
ハリウッドに恐れを抱くローランドではなく、妻のアリソンが殺された。主演女優のタラではなく、オルガが殺された。次には疑っていたタラが殺された。訳が分からん。
エルも疑われたが、最初のときに、ルネクレール監督と一緒にいた。二人は相互のアリバイの証人。
エルはロッカーでローリーの死体を発見。ミアがやってくれたのだと思う。灯台の突端に死体が。ローリーだった。
サマンサはバリーを殺そうと思っていた(バリーはサマンサの祖母を崖から突き落として殺したから)。撮影用のグラスにジンとセコナル(劇薬)を入れて渡すが、目を離したすきにアンソニーが飲んでしまう。彼はトイレに行って吐いていたが、間に合わず死亡。
飛び降り自殺にみせかけたが、運悪く、上の階の窓は全部しまっていた。
エルとミアはケインにキスをしているところを見られてしまう。この当時はレズはご法度だったので、殺す。
外の大きな壁時計に死体が。ケインだった。
サマンサはエルにバリーの殺害を頼んだ。拒否された。逆に殴られて殺された。その死体は自然発火。
そしてミアが殺されて、プールの中から発見される。
エルは歌う(そして誰もいなくなった風に)。アリソン、オルガは私の前に姿を現したから殺した。タラは大根役者だったから。ローリーとアンソニーはルイスの不興を買ったから。ロイとケインは医師役として失格だったから。サマンサには見られたから。ミアは愛していたから。
この後、ルイスが謎を解く(灯台の突端の死体は、水上飛行機で、とか)。さて、エルの完全犯罪を暴くことはできるか?