白萩屋敷の月、御宿かわせみ8

「白萩屋敷の月、御宿かわせみ8」(平岩弓枝
1・美男の医者
増上寺の片門前に住む、藍染め職人の兄妹、佐太郎、おもんが相談にくる。
尾張町の四条屋の染物を大量に引き受けていたが、2年前から支払いが滞っている。
そうこうするうちに、四条屋(大店)が店をたたんでしまった。役人が調べたが、
品も金もない。仕立て屋にも洗い張り屋にも払ってない。佐太郎の家のは10両の
未払い。
四条屋の言い分。2年前に旦那が死。その後、お上さん(おもん)と娘(お春)と番頭
の吉兵衛でやっていたが、売掛金が入ってこない。
「かわせみ」へ医者がやってくる。おもんがやってくる。風邪で苦しがる。
医者は、日本橋の天聖堂という生薬屋から薬を買ってこさせ、治療。おもんの風邪治る。
さて、四条屋、番頭は数か月前に辞めて、新しい店をだした。そこには商品がごっそり。
そっちへ流した?吉兵衛と娘はできているらしい。医者の名、寒井千草。
西光寺、娘と女房がおまいりに出かけた。団子やで団子を食べた後、お春が青い顔をして
トイレにかけこんだ。出てきても青い顔。医者がいう。
「家で食べた団子の中に、天狗草が入っていたんですな」。解毒剤を与える。
実は、かわせみのお吉が団小屋の店員に化け、下剤を入れておいた。
翌日、二人の家へ行く。母親は草団子を食べたが何ともない。黒子がある。
「これは悪性の腫瘍じゃ。そいつが毒を食べてしまった。方っておいたら、大変な
ことになるぞ」
「よい薬があるが、10両じゃ」親子は、買うという。
親子はその日、上野の広小路のはずれにある商人宿へいった。そこで3人になる。
それから、谷中の寺、本堂のしたから10両だした。
翌日。役人が同じ所を探索した。1500両とたくさんの反物が出た。
東吾の兄が言った。将軍家御典医の天野宗伯には道楽息子がいる。いい男だ。

2・恋娘。
思案橋から、山口や(塗り物問屋)の主人が大川へ落ちた。突き落とされた。泳ぎが
できたので助かった。一人娘のお鹿が突き落とした。
つきあっている男とけんかになって、怒った娘が。
お鹿は遅くにできた娘。奉公人が気に食わないと煮え湯をかけた。それでも金で解決。
柳橋の料亭の「魚松」の息子、京太郎(ろくでなし)をお鹿が好きになった。
京太郎は深川芸者の馴染み。芸者、染め吉にはやくざの紐がついている。
お鹿が、染め吉の家へ、京太郎を返せ、と怒鳴り込んだ。しかし京太郎は冷たい。
ご主人が迎えにきて、帰った。(小網町)
16の時、粋ななった定次郎を無理にあきらめさせてから、反抗的。
中番頭の世の助と一緒にさせたい。
世の助を池之端の京本屋に出した。
お鹿の死体が、牛の御前に近い大川に浮かんだ。京太郎にひどいことをされて、客を
捕らされていた。父の富三郎が店をたたんで、四国巡礼に出た。

3・絵馬の文字。
日本橋北、小伝馬上町にある諏訪神社の絵馬堂、立て替え。絵馬の中に気になるもの。
「お父っつあんを助けてください。清之助」
父親は半年前に病死。女房のお志乃と清之助が残された。
弟のやっている、日本橋の通旅籠町の煙草問屋、伊吹屋へ奉公に出ている。寺子屋も。
伊吹屋のご主人が襲われて、大けがをした。
伊吹屋源七、妾がいて、神田同朋町に、煙草やの小店を持たせている。
源七の女房は口うるさくて、決して泊まらない。源七は清之助を養子にした。奉公人
と同じ扱い。
清之助は、昨晩は、お志乃の所へ行った。翌日、伊吹屋で、源七夫婦と、誠之助が
殺された。
丑松の話。「手水におきて、お内儀と主人が裏口から出た。それを清之助に知らせたら、
彼も追った。それっきり、帰ってこなかった」
お志乃は自分がやったといったが、養っている子供三人は、違うといった。夕べは出てな
い。源七夫婦は妾のことで喧嘩。それを止めに入った清之助が巻き添えになった。
で、絵馬を再度見た。
「お父っつあん、お助けください」と読めた。
さらに、最初の事件、提灯の火を消させた丑松もグル。ところで、お内儀を呼び出したの
は清之助だった。

5・水戸の梅
水戸の庄兵衛、大百姓、お内儀がきつい。家を出て、妾と住む。この妾もきつい。妾
の名はおまき。洗濯物を干せ、とか細かい。
水戸から庄太郎とお三重が会いに来ている。庄兵衛、説得されて、水戸へ帰ることに。
その夜、岡っ引きが行ってみると、おまきと庄兵衛が、苦しがっていた。医者を呼んで
助けた。やはり、分かれられなくて、心中を企てたらしかった。兄と妹は水戸へ帰った。

5・持参嫁。
狸穴の東吾の元へ近くの彦四郎が相談にきた。娘の伸江を嫁にやったが、3ケ月で川へ
身を投げた。いった先は、四谷の坂上同庵という医者。二番目の嫁。その前の嫁、一年
程前、病死。寮で静養していたが、身を投げた。
その後、三か月になる。新しい嫁を貰うとの話。三人とも持参金つき。100両。
三番目。材木問屋、中津やの娘。ひどい疱瘡。300両の持参金。
伸江の妹が来る。内情を聞く。妹、「殺されるかも」という手紙をもらった。
岡っ引きの話。同庵は二代目。悩む方。蘭学の本を買いあさっている。金に糸目はつけな
い。代脈が診療している。
妹、加絵がおはん(材木商の娘)の代わりに見合い。
向島の寮。川が縁側の下を流れている。夜、るいと加絵の二人。
るい、川へ突き落とされそうになる。叫ぶ。東吾がとびこんでくる。向こうで川で暴れる
声。行ってみると、代脈が、加絵を川へ鎮めようとしていた。
代脈が今までの二人を殺した。代脈の話。「姉は同庵が、女に興味がないので、代脈と
関係を持った。そして、同庵にそれを話すというので殺した。」

4・幽霊亭の女。
逍遥亭に幽霊が出る。清吉の昔の女ではないかと、噂。
その、逍遥亭のおかみ(おきた)が殺された。
庭、沓脱石、八つでの茂み、井戸の脇で殺された。刺された。
井戸のそばには女の幽霊が出る。ほかにも、丸窓に髪をふり乱した女の影。
清吉の昔の女(おせい)は、木更津で別れたとのこと。清吉の話。
100両渡して、女とは別れた。お文に60両借りた。
手代の辰三郎は、一時、養子の話もあった。が、清吉が帰ったので、立ち消えに
なった。辰三郎が殺された。
清吉と辰三郎が大げんか。その後のことだった。
辰三郎はお文が好き。で、60両も、清吉に貸したと聞いて、いい仲と勘違い。
5日後、番頭の吉兵衛とおせいがお縄。清吉に女遊びを教えて、家出をさせたのは、
吉兵衛。逍遥亭を乗っ取るつもりだった。
清吉が帰ってから、おせいに幽霊の真似をさせた。それをははのおたきに見抜かれて、
殺した。辰三郎を殺したのは、おせい。見抜かれたから。

6・藤屋の火事。
旅籠、藤屋で火事があった。焼け出された客のお幸がかわせみに来た。妹のお六が死んだ。
近江やの当主が、京で手を付けてできた子。母はお里。
近江やは、当主が死んで、入り婿が跡を取った。女房のおりきは、お幸にやさしくする婿
に嫉妬し、お幸を井戸に落とそうとした。おりきの妹、おようは麻の葉の着物をくれたが、
取り返した。
橋場に寮がある。おようが出かけた。その後を、おりきが出かけた。おりきだけが帰って
きた。
翌日、おようが川につき落とされて、死んでいた。
おりきの言。「あれは確かにお幸だった。おようがお幸にくれた麻の葉の着物だった」
しかし、それはおようが取り返していた。
東吾の推理。
麻の葉の女は、おりきに話かけられても、振り向かなかった。それに、おようが着物を取
り返したのは、同じ日だったから、わざわざ着替えなければならない。
つまり、麻の葉の着物を着ていたのは別人。それは、お幸だ。おようを失神させておいて、
麻の葉の着物を着て、つきおとされたふりをする。自分は川岸でとどまる。その後、失神
しているおように麻の葉の着物を着せて、川へ。
番頭の喜平次があることを思い出した。当主の娘、お幸は、父親に出色黒でブス、だと
当主が言った。しかし、妹のお六は色白で美人。今回、お幸を名乗っているのも色白
で美人。本当の火事で死んだのはお幸? お六白状。
婿が進めてくれた、お公家さんへの養女の話も立ち消えに。それで、おりきとおようを
殺そうと思った。

7・白萩屋敷の月。
東吾、根岸の白萩屋敷に行く。中尾三左衛門の里。青江様の後室。お香。顔に火傷がある。
火傷の訳。火事の中、通の信からもらった短冊を取りにいったから。病気で死。