夜駆け、冥途めぐり

「夜駆け」(鳥羽亮
筋が単純で面白かったわ。
主人公(同心、隼人)は剣の達人なの。だったら、最初に、悪人に狙われたときに、
たたっ切ってしまえばいいと思うけど、それをやってしまっては、これだけの厚さの
小説にならないから、泳がせておいて、最後にたたっきるって、形。それでも面白
かったわ。
筋。深川で、元岡っ引きの男が、その妻と一緒に切られるの。近所の証言から、情報を集めると、一人は、居合抜きの達人。浪人風。もう一人は、匕首だったから、町人、職人風。
そのうち、日本橋本町、薬種問屋、黒沢屋へ押し込みが。隼人は、直心影流の遣い手。
主人が隠れていて、目撃していた。
黒鴨一味の仕業。全部黒。
一年ほど前、三件の押し込み。大量の金が盗まれた。その後、鳥蔵の金使いが荒い。アジトを急襲。ほとんどの一味は切ったり、捕縛。二人だけ逃げた。冬蔵と猪十。
その二人が、居合抜きの達人の浪人を引き込んだ。今回奪ったのは、1200両。
その前に、殺された岡っ引きは、独自に、黒鴨一味を追っていた。
次、同じ一味を追っていた益三がやられた。
さて、一味の男が、おのぶという妾を囲っていたことがわかっていた。場所もわかっている。そこを張っていると、新しい男が通ってくる。尾行。冬蔵か猪十か。ねぐらがわかる。
猪十らしい。職人風だから。
さらに別の大店が襲われる。
一人の手代が隠れて聞いていた。新しい仲間を入れて7人。
どこかの賭場に出入りしているらしい。猪十を尾行。アジトを突きとめる。
そうこうしていると、逆に尾行されて切り付けられる。隼人は戦うが、居合抜きの浪人に
は逃げられる。岡っ引きたちは、目を付けられて殺されるので、消極的。
最後には、アジトを急襲して、一網打尽。

「冥途めぐり」(鹿島田真希
芥川賞受賞です。普段は、私は、純文学は読まないんだけど、今度読書会があるので、読んでみました。面白かったわ。純文学は、つまらないものがおおいんだけど、これは、素直に感動できたわ。こういうのを選んでくれると、ありがたいわね。
筋は、おお金持ちの家に生まれた主人公がいるの。といっても、金持ちだったのは、父が死ぬまでで、それからは落ちぶれる一方なの。でも、母と兄は、それを認められなくて、働かないで、主人公の金をむしり取っては、贅沢をしているの。主人公は、市役所で、手仕事をしているの。それを取っては、キャバクラで高いシャンパンを飲んだりしているの。母は、精神的に不安定で、自殺未遂をやらかして、そして、精神科に行ったときに、嘘泣きをしたり、暴れたりして、病気というお墨付きをもらい、生活保護をもらったり。それから、主人公がセクハラにあったときも、強引人裁判にすると相手を脅して、金を巻き上げ、それを、豪華な食事に使わせたりしているの。それでも、弟の借金が多すぎて、マンションを売ったりするんだけどね。まあ、これに甘んじて、金を巻き上げられているばかりの主人公は、ちょっと不自然だけど。
でも、あるひ、結婚した相手が、原因不明の病気になるの。それで、金を巻き上げられなくなるの。これで、主人公は、精神的に楽になるの。ちょっと、一言では説明できないんだけど。夫が歩くのにも不自由になったことで、安楽の気持ちを得るの。これは、母性本能だと思うんだけどね。
それで、ある日、保養所の宣伝をみつけるの。それは、昔、豪華なホテルで、そこへ行くのを、母が自慢していたものなの。何回もダンスをして、八ミリを取って。
今回、そこへいって、ゆったりと、いろんなことをして、静かに時間が流れるんだけど、その感想が、いちいち、うんそうだ、とうなずけるもので、よかったわ。苦労だとか、いいとか、簡単にかたずけられない気持ちね。母性、というのが一番近い気持ちだとおもうんだけど。でも、よかったわ。