時雨のあと

「時雨のあと」(藤沢周平
1・雪明り
菊四郎は、久しぶりに由乃と会った。古谷の家から芳賀家に養子に入ったのは、菊四朗が12の時だった。古谷家、お勘定預かり役で35石。芳賀家、物頭で280石。
由乃、御旗組の宮本の家に、嫁に行く。兄も、朋絵と結婚する。菊四朗は権高で好きでない。
少したって、由乃が寝ていると聞いた。流産してからずっと。宮本家では見舞いを断っている。
強引に見舞うと、死にそうに細くなっていた。菊四朗は、強引に連れ戻した。
その後、菊四朗も結婚。由乃は、茶屋の女中になているが、元気になって明るくなった。
そして、菊四朗にも、「飛んでしまえ」と進めてくる。菊四朗は、堅苦しい家を出てしまおうか、と悩んでいる。

2・闇の顔
普請奉行の志田弥右衛門と、奉行助役の大関泉乃助の二人が、血まみれで倒れていた。
普請場で。巡視の二人が発見した。火の始末を見回る。
志田はまだ息があった(かすかに→その後、すぐに死んだ)
志田は腕が立つ。大関は袈裟がけに切られていた。志田は背中から切られていた。
大関の刀には血がついていたが、志田の刀には血がついていなかった。
大関の父の助太夫が来た。息子を引き取っていった。
発見者の瀬尾の推理。
志田には酷吏の評判がある。人使いが酷薄で、吝嗇家。
大関の父の言葉。息子は6歳の時にもらった。実の父は赤松東兵衛。
赤松は、武士を捨てて、百姓をしている。息子の泉乃助も気性は激しかったに違いない。
それで、何かが原因で、上役の志田ともめて切りあった。
葬式の日。岡本村。
大目付のお調べが入った。
しかし、志田の刀に血がついていないことで、混乱している。
目撃者がいた。一杯やっていた甚蔵だった。彼は、二人が大声で喧嘩しているのを聞いていた。二人は刀を交え、一人が切られた。第三者が現れ、一人を切った。
最初は大関が志田を切った。第三の男は、大関を切ったのだから、志田に好意を持っていたに違いないのだが、城内には、志田に好意をもっているものはいない。
人足の数をごまかして、私腹をこやしている。大関はその不正に怒って、切り付けたに違いない。葬式の列の途中、赤松(父)が出てきて、棺桶から息子の死体を引っ張りだした。
ところで、御徒歩目付の妻の生江は、鱗太郎がやったと思っている。鱗太郎の上役、惣四朗は、赤松の所へきていた。
赤松は、郡代、郡奉行などが結託して、組頭と組んで、不正をしたといった。丹羽(組頭)が一番私腹をこやしている。
赤松が、惨殺された。何者かに。切り口から、大関を切った男と同じ者だ。庭に草鞋の跡。
鱗太郎は、その切り口を見たことがあった。
次は甚蔵を襲うだろう。見張る。
男がやってきた。切りあった。相手の顔を見た。父の大関太夫だった。
彼と鱗太郎は同じ道場にいた。八双からの斬撃が得意。
大関太夫は、丹羽の派閥にいた。息子が不正を認めず、志田を切った。
それは派閥内でも、有名になっていたことで、志田の大関の果し合いで済ますように、暗黙の了解があった。だから、父は、あの日、尾行していて、自分の息子を切った。
感想。侍ものは、難しくて、嫌いだ。

3・時雨の後。
安蔵は博打で負けて、妹から金を引き出してばかりいる。妹のみゆきは、兄の嘘、飾り職人で、材料を仕入れるのに金がかかる、を信じて金を貸してやる。自分は、茶屋の女中奉公。
ある日、浅草の富七親分のところに、兄はいると聞いていたが、同じ所にいるという男が来て、知らないといった。みゆきは行ってみたが、本当だった。
そばの住所のお作バーさんの所に行ったら、博打で生きていると言われた。
賭場の金五郎の所へ行った。風邪で熱があって、雨が降っていたので、そこで倒れた。
そこへ兄がきた。金五郎に意見をされて、兄は心を入れ替えるといった。
感想。これもファンタジーだね。絶対に心を入れ替えないと思うよ。

4・意気地なし。
おてつの近所にふがいない男がいる。乳飲み子を抱えて、妻に死なれ、いつも困った顔をしている。乳飲み子は、近くのお増さんの乳をもらっているが、意気地がなくて、自分から頼みにいけない。なき声で、お増すさんがやってくるのだ。
おてつには、いいなずけがいる。作次という。いい男である。あるひ、出会い茶屋に誘われたが、伊作(意気地なしの男)が気になって、断った。何日か後、今度は、本当に、出会い茶屋に行った。そして、事の途中で、作次があまりにも、手がうまいので、逆に、伊作と子供が気になって、帰ってしまった。
そして、作次を怒らせた。でも、おてつは、伊作の女房になろうと決心した。
感想。母性本能だねえ。きっと、結婚すると、すぐに、意気地のなさがいやになって、喧嘩すると思うけど。でも、作次を振ったのは正解かも。セックスのうまい男は、すぐに、浮気をするもの。

5・秘密。
老人、由蔵の秘密。
彼は21の時、鶴見屋の手代だった。外回りだった。ある日、旗本屋敷でサイコロ賭博に誘われて、こっそりためた南鐐銀二枚を巻き上げられた。そして、5両まで借金した。返せと脅されて、主人の部屋に忍びこんだ。金は盗んだが、誰かに見られたような気がした。
博打はそれですっぱりやめた。その後、働きが認められて、娘のお若と結婚した。見られたのはお若だったような気がする。結婚して、ちょっと口にした。それで、浮気もできなかった。

6・果し合い。
美也には大叔父がいる。日陰もので、妻をめとったが、子供は始末させられ、妻も12年後に死んだ。今は離れでひっそりと暮らしている。たまに友達と飲んで、金をせびるが、そのことが父に知れて、怒られる。
美也は縁談のことを大叔父に相談した。美也には好きな男がいる。松崎信次郎という。彼を大叔父に見てもらうことにした。キスまでした。縁談が決まりそうになったら、二人げ夜逃げしようといってくれた。
その日は、見ただけで帰った。
次の日、縁談あいて、縄手の息子の達之介にからまれた。酒に酔っていた。大叔父が助けに入ってくれた。その夜、手紙をもらった。今夜、信次郎と達之介が果し合いをする、と書いてあった。
大叔父に助太刀を頼んだ。大叔父が行ってくれた。しばらくすると、傷を負った大叔父と、信次郎が帰ってきた。
果し合いについては、何も言わなかった。二人は駆け落ちをしていった。
さて、大叔父の佐之助。若いころ、牧恵との縁談があったが、びっこになる事件があり、破談になた。その後、牧恵と逃げる約束をしたが、行かなかった。

7・ 鱗雲
笠取峠で、小関新三郎は、病気の女を助けた。
女を背負って帰るところを、保坂年弥に見られた。それを利穂が聞いて、質問してきた。
保坂はドラ息子だが、老中になる家柄の息子。評判も良くない。悪い連中を集めて、卑猥な遊びをしているらしい。そこに利穂も出入りしている。利穂は新三郎のいいなずけ。
ところで、雪江(助けた娘)は野沢に仇討に行く途中だった。剣の稽古をしてて、仕込み杖を持っていた。
夜、帰る途中、保坂と友達に切りかかられた。大事にはならなかった。
保坂の父、中老は、青沼の一揆を画策し、大老を追い落とそうとしている。
そうこうしていると、利穂が喉をついて、自害した。父が言うには、身ごもったから。
新三郎は、保坂の息子と果し合いをしようと、保坂の家にいった。しかし、入り口で、後ろからきた利穂の父に連れ戻された。利穂の父はいう。利穂を保坂の家に入りびたりさせたのは、実は、自分。家老の命があったから。保坂の父、中老に、おだやかでない動きがあったので、探らせた。それで、今回の一揆の動きがつかめた。利穂のおかげだ。
で利穂は嫌がっていた。そして、酔わされて、やられた。
仇討に行った雪江が帰ってきた。
感想。なかなか、奥の深い話じゃ。