緋友禅

「緋友禅」(北森鴻
1・陶鬼
主人公は旗師、宇佐美陶子。店を持たない骨董商。各地の市で仕入れて、お店に売る。
その師匠のツルさん(弦海)が自殺した。萩市まで位牌を捕りに行く。
萩焼の名品、久賀秋霜の作を壊してしまったらしい。
数年前のこと、ツルさんに秋霜作の名品を預けられた。しかしそれは非常によくできた偽物だった。ツルさんに落胆した。
ツルさんは昔は、萩焼の釜で修行していた。久賀カマといtって、後継者と目されていた。
だが秋霜が、一年間、放浪して帰ってきて、一気に、すごい「鬼萩」を焼くようになった。それで、久賀カマの娘と結婚して、後を継いだ。それで、ツルさんは、萩焼をやめた。
でも、秋霜は、決して弟子をとらなかった。
さて、久賀カマへ行った。秋霜の奥さんがいた。あの偽物は自分が焼いたのだといった。
あれは、天才だからできたのではない。鬼萩にふさわしい海中の砂を発見したからだ。私は、その残りをつかって、焼いたので、あのすばらしい偽物ができたのだ。
ところで、秋霜は、最後に自分の作品をカマ場ですべて割った。そして引退した。それはなぜか?
その土は、硫酸ソウダの多い海土だった。それは、1050度まで上昇すると、急激に膨張する。素焼きの時は、そこまでは上がらない。しかし、釉薬をかけて本焼きにすると、1200度まで上がる。だから割れる。
それで、海土を多く混ぜた焼いた。それで、失敗した。土がなくなったから引退ではみじめ。なので、そっとやった。

2・「永久笑み」の少女。
小説家の町村へ、主人公は手紙を書いている。町村が初めて発掘された古墳に入る記事がすばらしいと褒めちぎっている。
さて、一転して現実。
堀士Aから土偶を見せられる。堀士とは、未発掘、あるいは発掘途中の土偶などを盗んで売るもの。Aは「永久笑み」と呼ばれるすばらしい土偶をもってきた。それは、本物なので、売ってほしいという。さらにAの娘が、町村の所で、働いていて、急に行方不明になったと話す。
さて、又手紙。
町村の文章の中に、永久笑みの土偶の話が出てきたのに言及。。さらに、町村の所に、Aの娘が働いていたのにも言及。
又一転して、現実。
刑事に話す。Aの娘の行方不明の件。町村は、未発掘の古墳に入ったのだと思う。町村のところで働いていた娘は、父に聞いて、その辺は詳しかったから。
その後、娘は、町村に殺されて、そこに隠されているんだと思う。
あの文章は、未発掘の古墳に入った時とそっくりだから。それを読んで、堀士の父は、そこを探しあてて、あの土偶を掘り出し、主人公に見せたのだと思う。
だから、私が、それを調査しだして、発掘が始まりそうだと手紙を書く。そうすれば、必ず、町村は死体を移動する。そうなれば、殺人事件の捜査になる。よって、尾行してほしい。

3・緋友禅。
主人公は、銀座の画廊で、すばらしい緋色のタペストリーを見て、全部120万で買う約束をして、金を払った。おまけで一枚くれた。
だが、品物を送ってこない。それで、画廊の主人に住所を聞いて、行ってみた。そしたら、死んでいた。たぶん病死。でも、品物がなかった。
誰かが盗んだに違いない。
数か月すると、江崎黎子という友禅染師が、そのタペストリーを織り込んだ友禅を発表した。話題になった。
主人公は、黎子の所へ行って、そのタペストリーを返してくれるようにいう。しかし、黎子は、これは、自分で織った物という。逆に主人公の持っていたタペストリーを数百万で買うという。
主人公は、怒って、タペストリーを友禅に織り込む方法を調べる。すると、カケハギという方法で織り込むことができると判明。
再度対決。そのときの決め手。死んだ男のタペストリーには彼の血液がしみ込んでいた。
それは、蒸して色定着をするので、タンパク質が染みついて、抜けない。それで、黎子を訴える。120万は損したが。

4・鬼縁円空
主人公は、ある家から円空の木像を買い取る。非常によくできていて、本物かどうかわからない。それで、まず銘木屋の大槻を訪ねる。銘木屋とは、木を数十年寝かせて、売るのである。偽物を作る月に、古さを出すために、薬品処理をするのだが、それだと鑑定された場合、すぐにバレてしまうので、銘木やから寝かせた材木を買うのである。彼は、円空の前で、煙草を吸った。それで、偽物と判明。しかし、レプリカでもいいものは高く売れるので」円空に50万払った。
練馬署から刑事が来る。鬼炎円空のことを調べている。
事件は、円藤茂樹が刺された件。円藤は刺された原因について、何も言わないが、彼の手帳には、鬼炎円空と主人公の店の名が書かれていた。
主人公は、鬼炎円空のことを調べるために、仕事仲間の老人を訪ねる。
彼は、30年前の、デパートの鬼炎円空の事件の新聞記事を見せる。
それによると、円空の仏像即売会と明うっていたのに、開催日前日、像に、マジックで、落書きをした人がいる。それは、隠し彫りで、炎と掘ってあったのを浮き上がらせたもの。それで偽物とわかって、即売会は中止になった。そのデパートで企画をしていたのだ、円藤。
さて、現代に戻って。今回、円空が偽物とわかったのは、水酸化ナトリウムと酢酸処理が行われていたせい。となると、30年の時を経て、北条鬼炎は、よみがえったことになる。あるいは、新しい鬼炎が誕生したのか。だとすると、それは、大槻か?円藤か?
そうこうしていると、円藤が今度は殺されてしまう。
さて、主人公は、津軽へ行って、同業の古老に話を聞く。それによると、古くから東北には、木地師と呼ばれる一団がいて、一日一体、という速度で、仏像が彫られていた。円空もその一団に属していて、円空と名乗る堀士が複数いたのではないか?
さらに、北条鬼炎と、大槻も、戦後、小さいころ、その末裔に育てられたらしい。
となると、大槻と、北条鬼炎は、義兄弟ということになる。
北条円空は、30年前、自分の堀田円空が、完成の域に達してないとわかって、わざとマジックで塗った。それで、円藤は、円空仏を売るのをやめた。しかし30年経って、又、新しい円空を発掘したので、また売ろうとした。でも、それを許さなかった大槻が殺した?
さて、主人公は、大槻の元へ行って、北条鬼炎が、まだ生きているという話を聞いて、そこへ行く。
そこにいた北条鬼炎は、ほぼ盲目になっていて、ほぼ円空になっていた。

今週も「モンスター」を。
大企業。企業秘密が盗まれた。明日、捜査が入る。その秘密を知っているのは、所長とAとB。Aは犯人を知っていると言って、証拠の封筒とパソコンをもって、A会議室に閉じこもった。9時45分、変な男が部屋の前にいる。10時になって連絡がなかったら、警備員へ知らせてくれと、妻にメールを送る。10時。連絡ない。警備員へ知らせる。
部屋の前で、警備員は、Bとぶつかる。合鍵で入る。後頭部を灰皿で殴られて、死んでいる。部屋の中。鍵は二つしかない。一つはAの手の中。警備員は警察へ通報。帰ってくると、書棚の裏に封筒。それには所長が横流ししたとの文書。体の下にパソコン。
Bのアリバイ。9時45分にCとBの部屋の前であった。10時まで雑談。
殺されたのが、9時45分から10時だから、アリバイあり。
Cの証言。BはBの部屋にいなかった。鍵もかかっていなかった。重要な書類があると言っていたのに。Aの部屋の椅子の下から、白紙の入った封書がでてきた。
最初の封書。(書棚の後ろにあったやつ)Aの右手の指紋しかない。中の紙も。変。右手で封書をもって、右手で紙を入れることはできない。
で、いきなりだけど、謎解き。
犯人はB.彼は9時半よりもっと前に殺していた。やり方は、分かれるときに、白紙を入れ
た封書とすり替えておいた。それに気づいたAが部屋から出たところを殴って、殺して部屋の中へ。そして、Aの部屋のカギと、Bの部屋の鍵をタグと取り換える。これで、Aとタグの付いた鍵は、Bの部屋の鍵に。で、Bがもっているのは、Aの部屋のカギになる。二つはそっくり。
Aのパソコンを見る。9時半と9じ45分のメールを入れる。これは、Bの部屋で。そして、Aの部屋の鍵を閉め、廊下でCと雑談。10時、警備員が発見。通報。一人になった後に、鍵などを元に戻す。書棚の後ろに、偽造した封書を入れる。
さらに、証拠がないと言われて、証拠Aが椅子の下に隠した紙に、Aのメモあり。この封書に指紋が付いているのが犯人だ、とのメモあり。筆跡鑑定で、Aの筆跡と鑑定された。ついていたのは、Bの指紋。それで、Bは自白。
でも、この文章は嘘。後から、平塚が、西園寺に書かせたもの。
感想。鍵は外見は同じだから、すり替えてもわからない。ここが面白かった。
私が最初に思ったのは、封書を入れ替えておいて、Aが出てきたところをBが殴る。しかし、Aはすぐには死なずに、自分で鍵をかけて中で死亡。灰皿は、殴ったすぐに、Bが仲に投げ入れた。そして、9時半と9時45分のメールは、今話題の他人のパソコンを乗っ取るプログラムで入れた、というもの。後の、発見した後は同じ。鍵をつけかえる手間はいらない。でも、これだとすぐに死ななかった場合、自分が犯人だとメールを送られてしまう危険性があるけど。あんまり美しくないかな。

もう一つ面白かったのは、「観察医、葉月」
5年前、常用銀行のAを殺した罪で、Bが刑務所へ。4年ぶりに出所。Aは5億円を横領。陰にAの上司がいるとの噂。うやむやに。BはAの上司や、そのときの監察医を訪ね歩いている。さて、Aの上司が殺された。Bが目撃された。Bが怪しいと警察は思って、捜査に入る。5年前の事件を調べる。
死亡推定時刻、12時ころ。それは、11時半に生きているのを目撃されたとの発言があるから、と警部Cの証言。それで、直腸温度は9時ころを刺していたのに、個体差として12時にした。9時ならば、Bにはアリバイあり。さらに、9時ころ、赤い外車がそばで目撃されている。さらに5年前、握りつぶされた証拠。マンションの入り口にキャスターの煙草が捨てられていた。指紋ない。犯人が捨てたに違いない。
さて、Bの思い出。BはAにDVを受けていて、殺したと自供。でも、本当は、行ったら死んでいた。キャスターが死体のそばに。それを吸っているのは父。なので、父がやったと思って、かばって自供した。しかし、刑務所の中で、父ではないと判明。それで、今回、再調査していた。
ところで、監察医が怪しいと睨んだのは、C警部。彼の嘘の証言で、Bが逮捕された。それを知っているのは、真犯人、Aの上司。それで、CはAの上司(横領した)を脅して数千万円をゆすっていたが、相手が怖くなって、白状しそうになったので、殺した。
さらに、監察医Dも殺される。彼は、Bに殺してないと聞き、C警部の嘘の証言を問い詰める。それで、C警部に刺された。さらに防御傷がないのは、飛び出しナイフを使ったから。それを生活安全課から盗んだのは、C警部。
あと、もう一つ面白かったのは、しっかり手を握っていたのに、中に何もなかった。でも本当は、相手の汗を握っていたってところ。