はやぶさ新八御用帖3・又衛門の女

はやぶさ新八御用帖3・又衛門の女房」平岩弓枝
1・江戸の竜巻
松八右衛門の正式な跡取りが亡くなった。しかし女中に産ませた双子がいる。そのどちらかを引き取りたいが、よい方を選んでくれとの依頼。
女中、おすがの嫁入り先は、飯田や吉右衛門。兄の徳松は、母親が育てたが、弟の三五朗はよそへ出した。
行ってみると、二人は争っていた。弟の三五朗のつきあっている女を、兄がとったとかで、刃傷沙汰になっていた。
そのうちに、兄の徳松の親が訪ねてくる。兄の方が落ち着いていてふさわしいので、兄を選んでくれと言ってきた。さらに今度は、弟の育ての親が、やってきて、弟を選んでくれと言ってきた。両方とも、早く手放したいらしい。
そうこうしているうちに、肥前の守が市中見回りに出た。その途中で、竜巻に会った。そのとき、この双子が、木の幹にしがみついていて、二人とも巻き上げられ死んだ。二人はしっかり抱き合っていた。

2・幽霊の仇討
仇討で討たれた者、ご城代、谷貝伝衛門の甥で、谷貝兵馬という。若殿の遊び相手。
若殿は妾腹。それゆえ、若殿が、仇討の御免状を出した。弟の吉の信が江戸へ向かった。
兵馬を討った者は、井上右の助。
殿様の御内室の老女、松島の孫。二人ともまだ江戸の上・中・下の屋敷には到着していない。
原因。
右の助の父は、右の助を、目を付けていた娘と結婚させて、跡を継がせるつもりでいたところ、その娘が兵馬と婚約してしまった。
新八朗は、同心の大久保に旅籠をあたらせた。出羽国、山形、6万石の、秋元様の下屋敷に入ってみる。
田舎育ちの娘がいる。身振りから侍の娘のようだ。
松島は、中屋敷に孫をかばっている可能性が高い。馬喰町の旅籠に、兄と妹が止まっている。宿帳には、米沢藩と書いてある。方言からバレることが多いから、近いところを書く。くさい。尾行する。
駕籠がくる。川を渡って、中屋敷に。そこへ入ると、医者が出てくる。医者の話。
谷貝吉之助というもの、ひどい病。薬を捕りに行くところだが、間に合うかどうか。
そこへ侍がなだれ込んでくる。新八郎は、戦って追い払う。しかし、その間に、谷貝吉之助は、病死していた。道中、切り株を踏んで、破傷風だった。それで、幽霊に切られたことにした。

3・狐切り。
長沢内記(老人、死にそう)の見舞いに鯉をもっていく。
その夜、森藤十朗(能楽師)の家から、美しい女が忍びだしてくる。
内記が死んだ。通夜の客の中に、篠崎庄之助がいる。その屋敷へ女は入って行ったように見える。その女が通夜の手伝いにきた。
9月になった。行ってみると、篠崎家の隠居所が取り壊しになっていた。
森の、年の離れた女房と、篠崎が内通していたとの噂。
それで、森は、妻を離縁した。
その夜、森の家の前で、狐が一匹、斬られていた。森は、内通した男を、狐が化けたことにした。さて、その後、森の家へ行くと、森藤十郎脇差で刺されていた。
森は、女中たちが外出する前、山崎(別れた女房の兄)が金の無心に来るかもしれないと言っていた。すると、山崎の仕業か。
だが、山崎は、その日、新宿へ行っていた。ところで、伊三郎が、森の家宝にしていた扇子をもっていた。それは、箱の中にあった物。さらに250両も消えていた。
森の家の家探しをすると、250両が隠してあった。
伊三郎はお縄になった。しかし、牢屋の中で、狐に憑かれたように、なった。島送りになった。

3・河童と夕顔。
松平周防の守の江戸用人、田中半右衛門の相談。大友式部の妻が水死した。それについて、調べて欲しい。妻は、水泳は不得意。なので、今まで一度も夫の船には乗らなかった。夫は投網が趣味。何度も、夜出かけていた。
その船が転覆した。船頭(辰之助)と式部は、海へ投げ出されたが、水練が得意なので、助かった。大川河口は、水嵩が多い。なれた船頭でも避ける。
殺されたのでは、という噂。
新八郎は、辰之助の船に乗ってみる。大川河口で、辰之助は、海へ、わざと落ちる。白い河童らしきものが、網にかかったので。
新八郎は、殺された妻の恨みが乗った躯(むくろ)だと思った。何度もまつわりついて、離れない。
そうこうしていると、もっと大きな船が来て、助けられた。
辰之助は、幽霊だとぶるって、わざと船を転覆させたと吐いた。
ところで、おすみという女中が、式部の家にはいた。それは、辰之助の娘。妊娠していた。
奥方が邪魔になったので、殺してくれるように、父に頼んだ。
その後、式部と達之介が乗った船が転覆して、二人とも死んだ。

4・狸の心中。
藤井文五郎は、美人の妹を、うぶな男にわざと預け、大金を貢がせている。
女の名は、お栄。お栄は、西国の大名のお手付きになって、流産して、体を壊して、宿下がりするときに、大金をせしめて、根岸に豪勢な寮を建てた。
目下の餌食は、豪商の鹿島屋清之助。さて、新八郎は狸を買った。
新八郎は、お栄の寮へ忍びこんだ。清之助と密会していた。
お栄が言う。「一緒に死んでくれますね」。清之助「冗談じゃない」。女を捨てる。
新八郎は復讐を考える。清之助の気を失わせ、死んだ狸を片方の松の木に綱を渡して、吊るして、放置した。
翌日の瓦版。女が狸に化けたのと、心中したと大騒ぎ。

5・又右衛門の女房。
お千加、前から夫が気に入らなかった。前、盗みが入った日、夫が先に逃げた。今回、地震。また夫が先に逃げた。別れたい。
又右衛門の所へ行く。
刀剣を預かる仕事。利息は取らないで、金を貸す。その日、直参の松谷清十郎が脇差を預ける。さて、年の暮れ。
又右衛門の女房が手籠めにされそうになっていると、聞きつけて、新八郎はかけつける。
松谷清十郎が、刀剣を受けだしに来ていた。20両で入れたのに、10両しかもってこなかった。それで、争いになった。
そのとき、夫が、おとこにぶつかって、女房を助けた。それで、夫婦はまたもとに戻った。

5・江戸の水仙
6年前、市五郎(中間)が人足の捨て松を殺した。市五郎は十なしい。島送りになった。
捨て松は酒癖が悪かった。
市五郎が帰ってきて、子供を引き取りたいといった。妻は大反対。
市五郎のところへ行く。子供が来ている。妻がぼてふりをやらせている。妻も居酒屋でバイト。でも、全部、新しい男に貢いでしまう。それで、市五郎は、自分で、ぼてふりをしてうっている。
妻の証言。あんな夫に渡したら、吉原に売られてしまう。
さて、鬼勘の聞いてきた噂。妻は、捨て松と浮気をしていた。それで、殺した?
その噂を告げてきたのが辰之助
ところで、今回、妻と付き合っているのが、辰之助
さて、新八郎は、6年前の事件のあった場所へ行った。すると、そこは、口入屋の弥助の寮だった。6年前に市五郎と捨て松の口入をした男だった。妻が出ていく。
さらに、そこの大工に話を聞く。妻は今も、昔も、弥助の女だという。すると、妻、お貞は、弥助とも浮気をしていたことになる。
市五郎の所へいく。弥助と市五郎がお貞を争って、殺しあっている。
弥助の手下が娘のおきくを追い回している。新八郎が、三人を峰うちにする。すると、弥助が、おきくを吉原へ売ろうとしていたと判明。
それで捕縛。お貞、弥助と手下は、島送り。子供たちは、市五郎の元へ引き取られた。