神渡し

「神渡し」犬飼六岐
時代物の勉強のために買ったんだけど、つまらなかった。ミステリーって書いてあるけど、どこがミステリーなのって感じ。ミステリーっていうからには、誰が何のために、どうやって殺したのかは、細かく書かなきゃいけないのに、そこがすっぽり抜けおちてしまっている。つめがあまいんだよね。
狐憑きの話ばっかりで、現代人に向けて書いたって感じがしないんだよね。
では筋。キャラはまあいいかな。口の軽いよみうりの才助。元鉄砲組同心の孫四朗。むずかしことばっかり言っていて、現代人にはさっぱりなんだけど、まあいいでしょう。
それから、怖い挿絵ばっかり書く市麻呂(美人の女)。
まず、才助の友達の瓦版売りの利吉が根岸の村で、狐憑きのお祓いを見た後、死ぬ。これの死因は、化け物に襲われたみたいにしか書いてなくて、絞殺なのか、何なのかはっきり書いてない。
そして、友達の才助が、不審を感じて、調べ始める。すると、自分の売っている瓦版の隅にマークが描かれ、丸がついている。このマークは、版元に言われて、市麻呂が描いたもの。
どうも、作者の言いたいのは、このマークのついた日に、浄せん尼率いる悪の一党が、府中のどこかで、何かの悪さをすると言いたいらしい。でも、それが何なのか、書いてない。ここが重要なのに。
で、一方、利吉は、版元がそのマークをお市に頼んで入れさせたのをつかんだので、殺されたらしい。あくまでも、書いてないので、らしい、としか言えない。
そして、ある日、才助が読売を自分で買い取って、売ったことにしたので、悪の一味に襲われる。これも、最後まで、一党が、誰なのかが書かれていない。
さて、才助は、利吉の死について調べる。なんで、根岸の村まで行ったのか、調べる。
すると、同じことを調べていた岡っぴきが殺される。これも、最後まで、下手人は描かれない。
で、延々と描かれるのが、村の男女の狐憑きを除霊した浄せん尼の話。これがまた現代人には超つまらない。
まあ、実際には、除霊と称して、夫に、ヒ素らしきものを渡したことが描かれるのだが。
で、最後、浄せん尼が、版元とつるんで、大奥にまで太い綱をもっていて、悪さをしていると言わせる。でも、実際に、悪さをした人の名はでてこない。何の悪さをしたのかも描かれていない。それなのに、この不確かな情報を間部詮房(まなべあきふさ)に伝えて、大奥の粛清を断行させる。それが江島生島事件。
感想。な、何がなんなのか、さっぱりわからないだろ。不確かな情報で、粛清をする間部詮房も、詮房だし。これをミステリーと呼んでいいんだろうか。