盗人

「盗人」(田牧大和)
これも、時代小説の勉強のために買ってみたの。で、感想。文章はご立派。修飾語がたんまりついて、むずかしい言葉もたっぷり入って、実にご立派。でも、内容はよくわからない。どうも、盗人の甲斐が主役らしい。短編集なので、それぞれの章で、主役をはっている。でも、よくわからない。悪役を描くのが主のようなので、捕物帳ではない。これが、現代人にはつまらない。それから、吉原の花魁の話もある。これなぞは、完全に人情もの。足抜けをする花魁と止める花魁。甲斐は出てこない。面白いものではない。泣けるような、泣けないような。微妙な読後感。総合すると、泣いていいんだから、感心していいんだか、よくわからない。これに比べたら、この前のドラマ、鬼平のほうがずっとわかりやすくて面白かった。盗人に徹する男と、その上前を撥ねようと画策する浪人群団と、火付け盗賊方の鬼平。はっきり分かれていて、ときどき目を離してもよくわかるし、言葉は現代語だし、やっぱり、時代劇といえども、言葉がわからなきゃだめよ。この人のは自己満足小説だわね。時代劇書きには多いけど。