遊離の旋風

「遊離の旋風」幡大介
大富豪同心の第五弾だそうで。まずは帯から。
遊弥朗気取りで吉原遊びを楽しんでいた内与力の沢田彦太郎が、遊女殺しに巻き込まれ、下手人扱いされる窮地を脱するために、思いついたのが、八巻卯之吉に吉原同心を命じ、身の潔白を証明すること。だが、三国屋の若旦那は同心として乗り込むことはできない。そこで卯之吉が思いついた奇想天外な作とは。
もう少し詳しく言うと。
澤田は、内湯から帰ってくると、胸に刃物を刺された遊女がいて、思わず、匕首を抜いたところを発見される。しかし、卯之吉の金の力で、うやむやにされる。所で、ここに大悪党の一団がいる。遊女のマブの男を殺して、運び出して、羅生門河岸に埋める。
そいつらの本当の目的は、浅草寺寺銭
風の強い日に、吉原に付け火をして、同心だちが全員、吉原に集まってくる。浅草寺では蔵を開いて、寺銭を移動させようとする。そこを狙って、奪う予定。
さて、卯之吉は、いつものように、ユリの丞を身代わりにして、謎解きに入る。
殺された遊女の部屋には、まだ血が残っていた。それを見ると、遊女は労咳を病んでいたはずなのに、別の血の匂いがある。その血はどす黒く、獣のにおいがした。
つまり、もう一人、殺された人間がいて、そいつは、獣を好んで食べていた。マブだろうと思われる。さらに屋根を調べると、屋根を伝わって、天水桶の影に血がべっとりとついていた。そこに一旦隠したと思われる。で、史郎べえ番所(吉原の番所)の男たちを使って、吉原中を調べると、羅生門河岸に腐りかけた死体が埋まっていた。それで、澤田の疑いが晴れる。
所で、遊女の滝川が、金も払わずに、梅川の所に長逗留している男がいるとの話を持ってくる。そいつが、たまたま火付けの話をしていたのを聞いてしまう。
さて、風の強い日。火付けをしようとしていた悪党の一党は、羅生門河岸で、油壺をもっていたところを、史郎べえ番所の男衆と同心に捕縛される。さらに、浅草寺の前にいた残党も捕縛される。
感想。ここまで読んでくると、善と悪の対決がはっきりしてきて、痛快だわね。こういう構図では、「24」のような、内部にスパイがいるっていうストーリは無理だわね。