夏まち舞台

「夏まち舞台」幡大介
この人のは、うんちくはまあまああるけど、分かりやすくって、いいわ。言葉も、「中世的」だとか、現代用語がバンバン出てくるし。私も、時代物の、二重人格物を書いているんだけど、先生(選者もやってる)に言わせると、「人格」って言葉すら江戸時代にはなかったとか。そんなことを言っているから、時代物はどんどん若い子から見放されてしまうのよ。時代物だって、変わらないと。どんどん新しい言葉を入れていかないと、すたれてしまうわ。
さて、まずは帯から。
本は、信濃の寒村の出である千代丸は、猛暑の江戸を同心姿で見回る激務に弱り気味。そんな折、厚さで芝居小屋に来る客も少ない「夏枯れ」のため、食い詰めた旅芸人が押し込み強盗を図った。下っぴきに化けた貫太郎一座で阻止して、小銭を稼いだのもつかの間、お千代に命じられて、黒鍬組の怨敵でもある中野播磨の守へと近づく羽目に。一方、捕縛から逃れた軽業師の娘、お滝の面倒をみるため、亀は大人気の唐人おどりの一座へ渡りをつけるのだが、芝居好きの播磨の守の観劇で、思わぬ危機が迫ることに。同心に化けた気弱な天才役者が活躍する大人気捕物帳。
もう少し詳しく言うと。軽業師たちが押し込みを働いたのは小梅村の料亭。そこへ行って、待ち伏せしていて、捕縛した。で、お礼をたんまりと料亭からもらう。さて、その軽業師の一座から14歳の小娘が逃げ出す。これを千代丸の一座の団長が保護する。惚れてしまう。それで、品川の外で演技していた唐人芝居の軽業一座に入れる。女ばかりの芝居である。さて、その唐人一座の軽業芝居が大評判をとって、芝居好きの播磨の守が屋敷へよぶ。黒鍬組は、播磨の守とは対立する一派に属している。この時代、芝居は華美なので、見つかったら罪。なので、播磨の守の屋敷へ芝居が呼ばれている最中に黒鍬組は急襲する予定。だが、播磨の守に大好きになられてしまった千代丸もその一座に潜り込んでいる。さて、どうなる。

今一生懸命見ているのが、「信長コンチェルト」
私もああいうタイムトラベル時代劇を書きたいの。でも、書けないの。なぜなら、占い師さんにダメって言われたから。私は、占い師さんは絶対に信じる方だから。その言いつけを守っているの。どういう事か、説明するわね。
一年くらい前、進路に悩んで、国分寺の丸いの8階の占い師さんの所へ行ったの。そして、言ったの。「10年間、必死でミステリーを勉強して、その後、10年間、現代ミステリーを書いて、出し続けているんだけど、一つも新人賞を突破できないの。」って。そしたら、占い師さんは言ったの。
「あなたももう50代でしょ。現代ものなら、旧人。でも、時代物なら、立派に新人で通用するわよ。だから、時代物に鞍がえしなさい。」って。
それを聞いて、こうも言ったの。
「じゃあ、時代物に鞍がえするとして、タイムトラベル捕物帳なんか、どうでしょうか。これなら、若い読者も呼び込めるし。アリバイとか遺留指紋とかいう言葉をビシバシ使ったら、若々しい作家として、出版社に向えられるんじゃないですか」って。
そしたら、即座に否定されたの。占い師はこう言ったわ。
「そんな、猫も杓子も書けるような物は止めなさい。そんなものしかかけない新人作家をどこが求めているんだ」って。
「出版社が求めているのは、あくまでも、本格時代劇を書ける作家なの。角川にF何とか時代小説大賞もできたことだし。(彼女、時代物にはやたらと詳しいの)チャンバラをビシバシ入れて、澪つくし、みたいに、料理も入れて、本格時代劇を書きなさい。出版社にはプライドがあるから、全部テレビになるなんてことは考えていない。タイムトラベルを書きたいなら、漫画の源作にしなさい。漫画はゲテモノ食いだから、可能性はあるわよ」って。(ここでちょっと注。本当を言うと、結構脚色している。本当は、サイコロで本格時代物と出たので、話が発展したのね)
そう言われればそうだわよね。占い以前に、常識だったわ。でも、その言葉で目が覚めたわ。年長者はさすがよね。
そういえば、昔、名前を変えたことがあったの。早苗って名前は強すぎて、家庭を壊すとか言われて。で、佐恵にして、一年くらいたったの。でも、全然いいことがないので、別の占い師さんに見てもらったの。かなりのおじいちゃんだったわ。そしたら、言われたの。「主婦が強くなくて、家が守れますか」って。ついでに、名前を変えさせるのは、いいお金になるので、そういう事をいう占い師が多いんだって。で、今は両方使っているの。
ああ、名前と言えば、今回、唐沢類人も少し変えて、新しい名前をつけてもらったの。努力が報われる名前なんだとか。今、その名前で、一本づつ、角川とメフィスト賞に出しているのだけど、どうか通過させてくださいませ。引用が多すぎるというのなら、きれいさっぱり削りますので。
話は変わるけど、皆さんも迷ったら、年長さんの占い師の所へいくといいわよ。私はもっぱら、国分寺の丸井の8階だけど。ここの人は、皆、四柱推命がパソコンに入っているようだから、誰でもあたるわね。私の場合も、三年前にプチブレイクしたことを当てたし。
そういえば、角川に出した奴は、花魁が主役なの。どうしても、花魁に探索をやらせたかったの。で、調べたら、新吉原では、忍び返しなんかがあって、忍びだせないとわかったの。でも、二代将軍のころまでは、日本橋あたりにあって、割と自由に出れたって話。
で、時代を二代将軍のころに移したの。ところが、この時代は、歌舞伎も文楽も成立していないの。だから、近松浄瑠璃の本を何冊も買い集めて、その中の語りを途中に入れればいくらでも長く伸ばせると思っていたのに、それがダメ。NHK教育の歌舞伎もやるときは動画で録画していたのに、それも無駄。このころにあったのは、せいぜい平家物語と能。悔やんでいるわよ。主役を芸者にしとけば、13第将軍のころでいけたのに。自分で自分の首を絞めたのを悔やんでいるわよ。
話は戻るけど、私も新人賞を取ったら、絶対、タイムトラベル捕物帳w書いてやるわよ。いいわよね。襲われそうになったら、スプレーしゅーなんて、最高よね。

あと、今週見た映画は、「柘榴坂の仇討」
本格時代劇だったわね。文芸大作と言ってもいいわ。夫婦の愛とか、主君への忠誠心とか。今の日本人が忘れてしまった人間の心をじっくり描いているわ。でも、現代人に向って発信されたのが、面白いかというと、ちょっと、しっくりこない面もあったわ。でも、出版社や直木賞が求めているのが、ああいうものなのね。勉強になったわ。ま、でも、私はまずは新人賞突破だし、ミステリーだし。あんまり関係ないか。