物語の終わり

「物語の終わり」湊かなえ
短編集です。それも第一話が未完になっていて、代二話以降は、それを読んだ人が、自分の境遇などから、主人公の行く末に境遇を重ね合わせて、結末を考えるって設定。まあ、新しいことは新しいんですがねえ。
私は、今まで、この人のはもれなく買っていたのですが、今後は買わないと思う。なぜか? それは、癌物だから。
癌物は泣けるんですがねえ。一生に一回しか扱えないんですよ。よほどネタがないときにすがる物。癌を扱ったら、その先はないと同じ。又癌を扱わなきゃ売り上げを取れなくなってしまうから。
きっと、この人は売れるから、テレビの視聴率を上げるように、局からものすごいプレッシャーがかかっているんでしょうねえ。それで、また、マジメだから、そのプレッシャーを全部、引き受けてしまっているんでしょうねえ。このまま行ったら、うつ病ですねえ。睡眠時間を削って、お涙ちょうだい物を書きまくって、うつ病ですねえ。
テレビの視聴率なんか、石ちゃん坂上忍にまかせればいいんですよ。それに、中山七里という新しいジャンルを切り開いた人もいますし。私は、直木賞の方向へ走ったほうがいいと思うんですよ。日本人は権威が好きだから、クソつまらない物でも、直木賞を取っていれば、売れるし。さもなければ、がちがちのミステリーに戻るとか。直木賞(純文学)は、神様とのゲームかセックス、ミステリーは読者との謎解きゲーム。どっちも売れるのは二の次。これは荷が軽いです。
昔、道尾秀介という天才ミステリー作家がいて、(ひまわりの咲かない夏は傑作)直木賞を目指したころから、つまらなくなって、直木賞を取ったら、クソつまらない物になってしまいましたが、賞を取ったというだけで、今でも売れています。そっちをめざしたら、どうでしょう。
どうやら、湊さんは、三浦綾子の「氷点」に感動して、そこを目指しているらしいですが、私がテレビで見た氷点は、母がとことん娘に意地悪をする「おしん小説」でした。あれは、テレビ局からはありがたがられるかもしれませんが、文学界では、お涙ちょうだいもので、一ランク下にみられますよねえ。やっぱ直木賞にひよらないと。
さて、筋ですが。
第一話は、空想の得意な女の子(A)がいて、Aは物語を友達のBに読ませて、面白いという評価をもらっているんです。そんで、Bは東京に出て、有名作家の書生さんになって、(ここですでに百年古いと思うのですが)、Aの作品を有名作家さんに見せるの。すると、面白いと言われるの。でも、Bは才能がないと言われて、首になるの(どうも、有名作家はミステリー畑で、Bは純文学らしいのだから、当たり前なんだけど。というか、純分なのに、ミステリー作家の書生になるのがそもそも間違っていると思うのだけど)。で、Bは言うの。私の代わりに、あなたには才能があるのだから、有名作家の書生にならないって。で、Aは迷った末に、家出をして、有名作家の所に行こうとするの。しかし、婚約者が駅で待っているの。
第一話はここで終わり。第二話からは、これを読んで、先を考えよって設定。
言い忘れたけど、有名作家はものすごい女たらしって設定。
私なら行かないわよ。相手が女たらしかどうかなんて、どうでもいいの。それより、有名作家はみなとてもネタに飢えているってのは、有名な話。ちょっと面白い話だったら、間違いなく盗まれて、こっちはゴーストにされてしまう。つまり、Aがゴーストにされるのは、目に見えている。だから、いつの間にか、書生がすたれて、皆、新人賞でデビューするようになったのよ。
ま、それはともかく、代二話以降は、この話を読んだ人が、この先を考えるのだけど、自分の境遇によって、結末が違うって所が面白いわ。
代二話。妊娠中の女性(C)が、船の中で、知り合った人に、この小説を渡されるの。Cは癌。子供を中絶して、化学療法をするか、子供を産んでから、治療をするか迷っているの。でも、それまで待ったら、遅いかも。それで、Cはこの小説のAは癌ではないか、と自分と境遇をすり合わせるの。だから、自分の夢を果たそうと、婚約者を振り払って、列車に飛び乗る、と先を考えるの。それで、その結果に勇気づけられて、自分を子供を産む決心をするの。
よくできているわよね。感動物よね。でも問題は、癌よ。どうも、この点が引っ掛かるの。癌を出したら、どうしたって、「お涙ちょうだい物」を免れないじゃない。そこが問題よね。
第三話。北海道でプロカメラマンを目指している男の子がいるの。(D)。Dはプロのカメラマンのアシスタントをしているの。で、よいところあるけど、悪い所もあると言われているの。そんな時、実家の蒲鉾屋の父が癌で死んで、後継ぎにされたの。兄がいるんだけど、超一流商社に勤めていて、父の最先端治療に数百万を出してくれて、そのとき、後継ぎはDと決めたので、逃れられないの。それで、実家をついで、感動できる写真を撮れるように、頑張ろうと決心するの。まあ、当然よね。プロのカメラマンで食べていけるのなんて、ほんの一人か二人だから。それはそんな難しい選択ではないと思うのだけど。でも、Dはすごい決断をしたと思っているの。そんな時、この小説を渡されるの。それで、じぶんと境遇をすり合わせて、Aは故郷に戻って、故郷で小説家を目指すという結末にするの。まあ、当たり前すぎて、面白味はないわね。
それから、何話かあるけど、最初の癌のがインパクトが強すぎて、全然印象に残らなかったわ。癌はダメよね。癌は、最終兵器よね。

今週みて面白かったのは、「Nのために」
ちょっと見た所が、永倉奈々が土下座をしているところ。それも、家を乗っ取った女に。やっぱおしん小説じゃん、と思ったけど、面白そうだったから、本を買ったの。そしたら、前に読んだことがあった。なぜ、覚えてないか。それは、あまりにも飛んでいて、難しくて、途中で投げ出したから。このころは完全に直木賞を狙っていたのね。でも。一度でダメだったから、止めたのね。でも、何度でもしつこく狙わないと。
ドラマは、「氷点」と「流星の絆」を合わせたような感じで、面白そうね。

そういえば、道尾秀介がミステリーの世界に戻ってきてくれたの。涙出るほどうれしかったわ。直木賞からもう8年も経つのね。よほど売れなかったのね。そのうち紹介するわ。